ペルシカ人の試み
地球からおよそ1200万光年離れた場所にアミグダルス銀河があり、そこのRH331惑星の通称ペルシカと呼ばれる星があった。このペルシカ星は地球よりもずっと高度な科学技術力を持ち、自然界とも調和のとれた平和な世界を築いていた。
また、宇宙航空技術にも優れ、ワープ航法によって何万光年も離れた場所へも一瞬のうちに移動することが出来た。
そしてその高度な技術を利用して宇宙を探索し、自分たちが住めそうな星があると、そこへ開拓民を移住させ故郷の星と同じような平和な文明を築いていった。またそこに知的生命体がいる場合は、彼らを極端に刺激しないように心掛け、友好的に接するように努力した。また決して武力をもって脅したり、支配するような事は行わなかった。
そして彼らの科学技術力が劣っている場合には彼らのレベルに応じて惜しみなく自分たちの進んだ技術を教えていった。
時には誤解され敵意を抱かれることもあったが辛抱強く接していった。彼らは見返りを期待せず、喜んでくれる姿を見るだけで満足していた。それが彼らのセオリーである。
こうして宇宙にペルシカ人を中心として巨大なネットワークが形成されていった。
長い年月が掛かるが、ペルシカ人による宇宙開拓はおおむね順調に進められていた。
そして、ある時ネビロン星に探索の手が伸びたとき予期せぬ事件が起きた。彼らはネビロン星にも知的生命体の存在を確認した。ネビロン人は理解力が早くペルシカ人の教える科学技術力をどんどん吸収していった。更に、その教えられた技術を応用して独自の技術を確立していったのである。
ところがネビロン人はペルシカ人の忠告を無視して殺傷兵器まで開発してしまった。
ペルシカ人は迂闊にもネビロン星の真実の姿を知らなかったのである。ネビロン星は実はタウ民族とミュー民族とに別れて長年にわたって対立をしていた。ペルシカ人は、そんなことも知らずにタウ民族にだけにその進んだ科学技術力を教えてしまったのである。
こうしてタウ民族とミュー民族との力の差は歴然となってしまった。更に悪いことにミュー民族にその科学技術が伝わることを恐れ、ペルシカ人を監禁してしまったのである。
力をつけたタウ民族はそれから暫くしてミュー民族に対して戦闘を開始した。科学技術力で勝るタウ民族があっさりと勝利した。そしてタウ民族はミュー民族を支配下においてしまったのである。
ところが、そう簡単にタウ民族の思い通りにはいかなかった。監禁されていたペルシカ人の中で脱出に成功した者がいた。彼らは命からがらネビロン星を飛び立ち故郷ペルシカ星に戻ることが出来た。
そして、宇宙平和開拓委員会にネビロン星の現状をつぶさに報告した。この問題を重視したペルシカ星では直ちに平和維持軍をネビロン星に派遣した。
おびただしい数の平和維持軍に包囲されたタウ民族は戦闘意欲を失い降参せざるを得なかった。
こうしてペルシカ人の指導の下でタウ民族とミュー民族は和解をしたのである。
しかし、全てのタウ民族がこれに従った訳ではない。ペルシカ人のこういった行為に反発して不満分子が平和維持軍の包囲網をかいくぐって脱出し、姿をくらました。