ネビロン人の動向
ネビロン人は人間を研究すると同時に、労働者を確保するために人間を誘拐し続けていた。そして、人間の科学技術力、軍事力等を分析した。また人間の性格についても分析し、出世欲、権力欲が強い人間が、リーダーとして立つケースが多いことも分かってきた。
また、ある低い地位にいた者が熾烈な競争の末、人を蹴落とし権力の座についたとき、その人を賞賛する人も多いが逆に嫉み嫉妬する人も多いようだと分析した。
しかしながら一方では自分の財産を投げ打って人々に奉仕するような人間もいる。
一方では不正を是認し、また一方では正義を推進しようとする。ネビロン人はこの矛盾だらけの人間にしばしば当惑させられた。
だが概ね邪心に引っ張られる人間が多いという結論に達した。
それ故、彼らネビロン人が開発した邪心を増幅させるディアボロスは、絶大な効果があると判断し、その機能は益々強力になっていった。
そして政治家や、軍人、そして反体制グループのリーダーを主なターゲットにした。わずか一夜にしてクーデターが成功したという事例も出始めた。
世界各地で政治家の汚職事件は毎日のように報道され、政府の信頼は地に落ち、暴動が頻発し、無政府状態に陥ってしまったところもある。
ただディアボロスの出力は大きくなったため、ターゲットにされた人物ばかりでなく人類全体にその影響が出るようになった。
それ故に世界は混乱の一途をたどり、もう一押しで人類による文明社会は崩壊するところまできていた。
ただし、ユリカの父の装置により守られている地域だけは、強化されたディアボロスによっても邪心の影響を受けることは無かった。
完璧を期したいネビロン人にとっては、いまいましい存在である。
ほんの小さなほころびから、どんな事態に至るか分からないからである。
しかも、拉致したユリカの父、マイソンからその場所を聞き出す事は出来ていない。
捕らえられたユリカの両親は口を固く閉ざした。更に自白装置を用いても聞き出す事は無理だった。彼らが調べたところどうもその部分の記憶が消されているようだった。そのためネビロン人はユリカを誘拐するという計画を立て始めた。ユリカならディアボロス無害化装置のある場所を知っていると思ったからである。
またネビロン人は、ペルシカ人の意志の強さ、責任感の強さを恐れていた。一人でもペルシカ人が残っていればどうなるか分からないという危機意識だ。しかも邪心を増幅させるという武器はペルシカ人には何の役にも立たなかったのである。