第1話 転生したのはいいんですけど…
「俺らはそろそろ帰るよ。美しい女性の皆さまは、暗くなる前に帰ってね」
「そうそう。可愛い姫君達に怪我でもされたら、俺らは本当に悲しいからさ」
「いつも俺らを応援してくれてありがとう」
「俺らがこうしていられるのも、君達ミューズのおかげだよ。ありがとう、愛してるよ」
「キャーーーーーーーッ!!!!」
U-4のメンバーである4人の言葉に、大勢の女性達による盛大なる黄色い叫び声。
U-4の4人は歩く道の両端に群がる女性達に、笑顔で手を振る。
———そう、さっきまではこんな優雅な感じだったのだが…。
「あーーーー!!なんで俺はあんなことを言っちまったんだー!もっと気がきく言い方できたよなー!あーーーー!ムリムリムリムリ!失敗し過ぎてムリだわ!明日とか学園行きたくねー!もう誰とも会いたくねー!」
学園寮の部屋の中をグルグル走り回ったり、髪の毛を掻きむしったり、1人で大声をあげる赤髪のアダム。
「汚い汚い汚い汚い汚い汚い…。無理無理、俺に触るとかふざけてんのか…?勝手に触ってきやがって…マジやめろよ…マジきったねーなぁー…くっそ、手の汚れも落ちたか…?」
洗面台で、もうかれこれ10分以上手を洗い続けている金髪のリュウ。
「えーでもー別にいいじゃ〜ん?好きだから、触ってきてくれたってことでしょ〜ぉ?ナオトならぁ〜好きな人に触られたら、もうキュンキュンの嬉しすぎ〜〜っ!やっだぁ〜〜!」
椅子に座り手鏡を持ってニヤニヤしながら、自分の唇にリップを塗る茶髪のナオト。
「そうだよ。皆んな色々気にしすぎだよ。もっと俺らのファンのことを大事にしないと。彼女達の応援があってこそ、俺らも輝けるわけだからさ」
4人の中では一番落ち着いており、メンバー間でリーダーとかは決めていないけれど、いつも取りまとめてくれるリーダー的立ち位置の黒髪のユウヤ。
「ハルト、今日もありがとな。お疲れ。先に風呂入って休んでいいからな」
ユウヤにそう言われた僕だが、いそいそと部屋の冷蔵庫の前へと行き、中からチョコレートケーキの入った箱を取り出す。
「あの、これ、今日この学園の近くで販売してたんで買ってきたんすけど、皆んなで食べます?…って、あ、ユウヤさん最近トレーニング中で甘いもの控えてたんでしたっ…」
「食べる」
食い気味に僕の発言に重ねて答えたユウヤは、僕の持っているケーキの箱を、素早く奪い取り箱を開ける。ユウヤは、誘惑や誘いにとことん弱く断れない。
(あー…。卒業まで、僕はこの人達をうまくサポートできるんかなー…)
ハルトは、1人部屋の窓から外を見てため息をつく。
◇◇
まず、僕は今何をしているのか話そう。
気付いたら僕は、勉強の合間にしていた学園ゲームの世界に転生していた。僕ことハルトは、ゲームの中で主人公的な4人、アダム、リュウ、ナオト、ユウヤをサポートする役割、まぁいうなればこの4人の世話係、補佐みたいなものだ。
なんで普通の学園ゲームなのに世話係がいるかというと、…まあ、このゲームの設定だ。って言ったらそこまでなんだけど。
この学園にはU-4と呼ばれる4人がいて、人気、優秀な成績、そして容姿が秀でている4人が学園内からU-4として選出される。今はそのU-4にアダム、リュウ、ナオト、ユウヤの4人が選ばれており、このU-4には必ず世話係が1人つくことになっていて、それにハルト、に転生した僕が選ばれたのだ。
◇◇
「とりあえず〜ぅ、うちらみんな3年で今年卒業なんだからぁ、卒業までU-4を死守しよぉ〜!」
ナオトが握った両手を胸の前で上下に振って、首を傾げて微笑む。こんな仕草、女子でもやってるの見たことない。
裏ではこんなナオトだけど、一歩部屋から出れば目鼻立ちクッキリなバチクソイケメン男だから困る。
「ね〜ぇ、ハルト〜ぉ。この後はどんな予定〜?」
「あっ、えっと…この後は、課外授業の説明が放送で行われます」
「げっ!!課外授業!?もうそんな時期か!!最悪だわ!俺去年は忘れてて、ギリギリクリアしたんだよなー」
新品のタオルで何回も手を擦るリュウが、切れ長で形の良いアーモンド型の目をしかめて、アダムの方を振り返り同調を求める。
「あーそうか、うわー最悪。どうしよう、今度の課題なんなんだー?」
4人の中で1番背が高く、骨格がしっかりしている赤髪のアダムは、その大きな瞳を強く瞑り下を向く。相変わらず部屋をグルグルと歩き回ったままに。
(課外研修……なんだっけ……?)
僕はゲームの内容を一生懸命思い出す。
「ハルト、どうしたそんな難しい顔をして。もしかして、俺たちに内緒で課外授業で何をやるかもう知ってるのか?」
ユウヤが優しい笑みを浮かべて、僕の肩に手をかける。ちなみに、唇の端にはさっき食べたチョコケーキのクリームがついている。
「いえ…課外授業って毎年何やってたっけな…って思って」
僕はポケットからハンカチを取り出すと、ユウヤの口を拭く。
「あー、ありがと。てか、なんかついてた?」
「はい。クリームついたままでした」
「うぇーーっ!クリーム顔につけたままとか、信じらんねー!」
リュウが顔をしかめて首を振る。
「別にいいだろー。あ、で、ハルト課外授業な、確か去年は…モンスター討伐とかじゃなかったか?」
(モンスター討伐…!あぁ!あれか!思い出した!)
ここでいってる課外授業とは、ゲーム内で箸休めとしてミニゲームとして扱われていた部分だ。主ストーリーと絡んでなかったから、だからあんまり記憶になかった。
(あれ、だとすると、3年の年のミニゲームって確か…)
——ピンポンパンポーン——
急にけたたましく部屋中に放送が響き渡り、皆んな慌てて耳を塞ぐ。
「えー生徒の諸君。これから課外授業の課題について話をする。今回は、5人1組でチームを作ってもらい、目的地にいる人物を助ける、という課題になります。チーム全員でクリアすることで、課外授業の単位を付与となります。それにつきまして、まずは5人でそれぞれ役職を決めてください。剣士、騎士、魔導士、弓使い、司祭の5職となります。以上、まずはチーム作りから始めてください」
——ピンポンパンポーン——
そう…学園ゲームなのに、何を思ったのかミニゲームに急にRPG要素を取り入れていたのだ。開発者の好みなのか?分からないが、とりあえずは、これから学生のまま急な転職。
「うっわ、マジかよ。人助け?わけ分からん。まぁ、メンバーはもうここにいる、この同室の5人でいいだろ?」
頭の回転が早いリュウが、パパっと話を進めていく。
「そうだな〜。あとは職業決めかぁ〜」
ユウヤが腕を組んでポツリと言うと、皆んな天井を見たり頭をかいたり悩み始める。
僕はというと、このミニゲームはどんな流れでどんな終わり方したかを思い出そうとしているのだが…全く思い出せない。ただ、あのとき僕がこの5人に設定した職業は……。




