最終話 守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話
息を吐きながら、アドリアで肩を叩く。
いやー、やっぱ大技をぶっ放すのは気持ちいいな!
「ふー。ひっさしぶりにこの能力を使ったからスッキリしたわ。やっぱ、良い奴だったわ、オオトリ」
『いや、君のストレス発散のために突っかかってきたわけじゃないから……。しかも、一度首を飛ばされているからね、物理的に』
確かに、殺されたのは久しぶりだ。
オオトリ……というより、あの聖剣はなかなか良さそうだな。
よし、所有者もいなくなったことだし、俺が接収しよう。
当然の権利だな!
「う、うう……」
『あ、あれ? でも、オオトリは生きているよ!?』
死んだと思っていたオオトリが、うめき声をあげてよろよろと起き上がる。
おかしいな……。
確かに、存在が消滅する一撃を叩き込んでやったのに……。
『そんなえげつない攻撃だったの……?』
うん。だから大技なんだけど。
ともかく、まだ生きているのであれば、とどめを刺してやらなければならない。
俺はゆっくりとオオトリに近づいて行く。
「おう。まだ息の根があったか。やるな。じゃあ、続きをやろうか」
「え、え……? あ、あなたはいったい……? それに、僕はどうしてこんなところに……?」
「あん?」
目を丸くして、少々怯えながら俺に問いかけてくるオオトリ。
先ほどまでの傲慢な態度はどこに消えたのか。命乞いで必死だった顔は面白かったのに……。
なにこれ? 記憶喪失?
演技……には見えないな。
そんな嘘をつくのがうまいようにも見えなかったし、まるで人格がコロッと入れ替わったようだった。
まあ、本当に記憶喪失だったとしても、普通に許さんけどな。
「今まで頭の中に強い靄がかかっていたのに、それが綺麗になくなっている……」
オオトリのそんなつぶやきを聞いて、プレイヤーがハッとしたように声を発する。
『も、もしかして、君の攻撃で消滅したのはオオトリに憑依していた僕とは違うプレイヤーなんじゃないかな? だから、オオトリ自身は無傷なのかも……』
あー……。
なんかよく分からないけど、俺で例えると、俺は無傷でお前だけが死んだみたいな感じか?
『うん、そうだけど……。たぶん、ディオニソスよりはるかにプレイヤーに操られていた感じだからね。原作を知る者とすれば、オオトリがあんな外道なことをやって言うはずもないし……。それはそれとして、なんかすっごく嫌だね、そのたとえ……』
なんで……?
俺、今自分にあの大技を叩き込むことを真剣に検討しているんだぞ?
んー……。それじゃ、こいつどうっすかな……。
今までのことは、こいつは本当に関係ないのか。
だとすると、殺すのはちょっと気が引けるな……。
何も悪いことをしていない奴を殺す趣味はない。
それなら、生かして色々と利用する方がいいのだ。
さて、どうしたものか……。
「それなら、わたくしが!」
「うぉっ!? お前、安全だと思ったら急に出てきやがって……」
悩んでいる俺の元に飛び込んできたのは、ダイアナである。
シュバッと飛び込んできて、そのままオオトリの元に飛んでいく。
「あなたはわたくしとお兄さまに多大な迷惑をかけたのですわ! これは、本来なら処刑待ったなしのこと……。しかし、今なら何と賠償金がこれくらいでわたくしが許して差し上げることを検討できなくもないですわ!!」
『全然許す気ない言い方じゃん』
しかも、自分の懐を潤す気だぞ、あいつ。
俺にそのお金を渡すつもりは微塵もないな。
さすが、横領クソ妹だ。
「それなら、私も」
「お前もか、パトリシア……」
スタスタとスイセンを連れて歩いてきたのは、王女パトリシアだ。
こいつの邸宅でドンパチしていたから、遠ざけることもできない。
ちっ……。
そして、パトリシアもダイアナと同じようにオオトリの元に近づいて行った。
「あなたは王女である私に下賤な目を向けてきていました。これは許されざることですが、今なら私の言うことを聞いて、手駒になって、ディオニソス様を手中に収めることを協力してくれるなら、許すこともやぶさかではない可能性が少しあります」
『こっちも全然許す気ないじゃん……』
「は、はい! なんだかよく分からないですけど、頑張ります!!」
『頑張らないでぇ!』
……もしかして、本当のオオトリってバカなのか?
おかしな女二人にあっさりと騙されているけど……。
まあ、オオトリのことはあいつらに任せるとしよう。
あれもなかなかキツイだろうが、贖罪と思って頑張ってくれや。
それで……。
『……ん? なに?』
俺がオオトリに殺されるから、それを阻止するためにお前が来たって言ってたよな?
で、俺はもうあいつに勝ったんだから、殺される心配はないわけだ。
つまり、お前が俺に寄生する理由も一切なくなったぞ。
おら、さっさと出て行けや。
そして、死ね。
『ふっ、ディオニソス……。僕が君に寄生してから、それなりに長い月日が経ったよね? だとしたら、分かっているんじゃないか?』
なぜか余裕たっぷりのプレイヤーに、俺は嫌なものを感じ取る。
…………なにを?
『僕が! 後のことをしっかり考えて行動するような存在じゃないってことを! 君の頭から出て行く方法!? 知らんな、そんなの!』
「ふっざけんなあああああああああああああああ!!」
『はっはっはっ。僕にもどうしようもないよね、これ。……本当にどうしよう』
最悪だわこいつ!!
いつまで俺にくっついているつもりだ、ああ!?
俺は怒りのあまり、周りのものを破壊しまくった。
「ほら、あそこで発作を起こしているのが、あなたがこれから償いをしなくてはならないお兄さまですわ」
「精一杯贖罪しましょうね。私たちも手伝って差し上げますから」
「は、はあ……」
オオトリは怒り狂う俺を見て、憐憫の目を向けてきた。
「なんか、大変そうだな、あの人……」
『守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話』 終わり。
完結です!
最後までお付き合いいただきありがとうございました! 楽しく書くことができました。
原作主人公にも同情されるディオニソスくん、強く生きろ……。
現在、『外典・マガツヒ教創世記 ~働きたくないので弱小女神で宗教を始めたら、街を乗っ取る最悪カルトになっていた~』という小説を書いています。いつも通りのコメディ作品です。
お手すきの際に、暇つぶしに読んでください。下のリンクから飛ぶことができます。
それでは、ありがとうございました!




