第7話 とりあえずそこを
父上のいる部屋から退室する。
久々の親子の再会でかなり簡素だとは思われるかもしれないが、プライベートとはしっかりと切り離して行動するタイプなのだ。
プライベートではちゃんとしっかり親子として交流しているので、特に問題ない。
それに、あのクソ王女の話が出たから、とてもじゃないが和やかに会話をする気にはなれなかった。
……思い出したくなかった。
頭の片隅にでも、あいつの情報が占めているのが許せない。
『ねえねえ。君って、この国の王女とも面識があるの?』
そんな俺の感情が伝わったのか、プレイヤーは好奇心丸出しで声をかけてくる。
腹立たしい奴だな。
「あ? それはお前の知っている知識にはないのかよ」
『君は悪役キャラだったからね。そんな掘り下げられなかったんだよ』
「あっそ」
話は終わりだと言わんばかりにぶった切る。
そうか、俺の情報は垂れ流しになっているようだが、実際に俺がどういうことをしてきたのかは、プレイヤーも知らないらしい。
『で、どんな関係?』
「お前にペラペラしゃべるわけねえだろうが。黙ってろ」
『えー』
しつこく聞いてくるプレイヤー。
ぶーぶーと文句を言ってくるが、鬱陶しくてたまらない。
誰かこいつのことを殺してくれないか?
俺が頭を下げて感謝してやるぞ。
「というか、別に有力貴族だったら王族と面識があっても何も不思議じゃないだろ。所要があったら王族が対応してくるしな。そうでもしないと、貴族連中に愛想をつかされかねないし」
この国の王族は、そもそも国自体が大した力を持っていないから、貴族の協力がなければ国家運営すらままならない。
だから、貴族のご機嫌伺いをしないといけない。
力関係が完全に逆転しているんだよなあ……。
そのため、一定以上の力を持つ貴族が王城に赴くようなことがあれば、王族がわざわざ出迎えてくれるのである。
迷惑極まりない。いらんわ、その気遣い。
『確か、この国の王女ってとても薄幸な美女だったよね! 美人なのに儚くて、キャラ人気も凄かったんだよ!』
「王女は何人かいるから誰のことを言っているのか知らねえよ」
しつこいプレイヤーを無視するために、悪あがきをする。
俺と関係がある王女と言えば、あいつくらいだし……。
とはいえ、薄幸というところには心当たりがまるでない。
あいつ、そんな感じだったっけ?
『名前は何だったかな……。あまり僕はそっちに興味がなかったし……。ただ、とんでもなく悲惨な最期だったから、好きな人たちは阿鼻叫喚だったらしいけど』
「なんでそれだけ印象的なことがあるのに覚えてねえんだよ……」
ため息をつく。
しかし、ふとプレイヤーが言った言葉が頭に残った。
……とんでもなく悲惨な最期?
「……あいつが悲惨な目に合って死ぬっていうのは本当か?」
『え、う、うん。確か、助け出すルートすらなくて、主人公でもどうすることもできない、逃れられない死があるキャラだったはずで……』
ほーん、なるほどなるほど。
俺はうんうんと頷きながら、周りに誰もいないことを確認する。
そして……。
「よっっっっっっし!!」
渾身のガッツポーズを披露した。
最高だ! ここ最近で、一番うれしい出来事だ!
今まで一切何の役にも立たないゴミ以下の存在だと思っていたプレイヤーだが、こういういいことを教えてくれるのであれば、多少報いてやる必要があるだろう。
めちゃくちゃに痛めつけてから殺すつもりだったが、適度に痛めつけてから殺すにシフトしてやる。
『えぇっ!? なにその喜び方! 今まで見たことないほどなんだけど!?』
「お前が気にすることじゃねえ」
『気になるよ! すっごい気になるよ! だとしたら、そんな反応を見せたらダメだよ!』
「そんな未来が待っているんだったら、仕方ねえなあ。王命に従ってやるとするか!」
気分がいい。
賊がのさばるのは結構だが、俺たちの領地で暴れられるのは非常に腹立たしいので、皆殺しにするのは賛成だ。
この二つの理由で、俺は王命に従い動いてやることにした。
「おう、ワンコ」
「はいっす!」
『うわっ!? どこから!?』
呼べば、どこからともなく現れるマリエッタ。
こういうところが、こいつを重宝している理由である。
まあ、身体を動かすことにおいては、割と有能な奴なのだ。
頭脳? ……うん。
おそらく、姿の見えないエギスは今頃ぶっ倒れていることだろう。
父上に言って給金を上げてやるから、これからも頼むぞっ!
「私兵団の希望者……とりあえず100人集めろ。遠征だ」
「了解っす! 選抜方法はどうするっすか?」
「早い者勝ち」
「了解っす!」
返事をするや否や、すぐさま駆けだすマリエッタ。
一瞬で姿が見えなくなるほどの脚力。
さすがワンコ。使い勝手がいい。
「あ、閣下!」
「あ?」
と思ったら、またすぐさま戻ってくる。
え、こわ……。なに……?
「なんか、またうちの領地に賊が来たらしいっす。どうするっすか?」
マリエッタの報告に、眉を顰める。
またか……。
『うわ、タイミング悪いね。王族から呼び出されているのに……。時間もないけど、どうするの?』
プレイヤーはそう聞いてくるが、答えなんて決まり切っている。
どうするもこうするもねえだろうが。
「じゃ、とりあえずそこを潰してから行くかぁ」
「了解っす!」
『かるっ!』
とりあえず、侵入してきた賊を皆殺しにしてから、王命に従って動くことにした。
……今度は殺すの邪魔すんじゃねえぞ、クソプレイヤー。
過去作『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』のコミカライズ第6話がニコニコ漫画で公開されました。
期間限定公開となります。
下記のURLや表紙から飛べるので、ぜひご覧ください。
https://manga.nicovideo.jp/comic/73126




