第65話 ただいま戻りました
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「んがぁぁ……」
大きくあくびをする。
眠い……。疲れているからだ……。
ダイアナの膝の上でゴロゴロとしている俺を、呆れたように見下ろしてくる。
「だらけすぎでしてよ、お兄様。領民に見られたら……別に何でもないですわね。元が怖すぎるから、これくらいじゃ全然舐められませんわ」
領民に見られたら舐められる、みたいなことを忠言したかったのだろうが、余計なお世話である。
その程度で舐められるような施政はしていない。
こういうときに、圧政と暴力は役に立つ。
まあ、やりすぎたら完全に反感を抱かれて反乱を起こされるんだけどな。
諸外国では、それで潰れた国もいくつかあるみたいだし。
ただ、その場合は周りの状況が良ければ、という前提条件がつく。
あいつらはあんないい生活をしているのに、どうして自分たちは……という、周りと比較して不満を抱けば、革命や反乱は起きやすい。
幸いにして、王国はボロボロである。
王族もろくに力を持たず、各領地で貴族は好き勝手王のように振舞っている。
賊も出まくっているし、革命軍も周りに一切被害を与えずに行動することはできない。
となると、ホーエンガンプ領は、税は高いものの、命の危険はほとんどない。
賊は出たら俺が皆殺しにするし、革命軍も入ってこられていない。
周りの領地は、税は高いわ、貴族に意味もなく殺されるわ、賊が出てきて財物を奪われるわ、革命軍と貴族の争いに巻き込まれて殺されるわという状況である。
絶対にこっちの方がマシだ、と思っているからこそ、ホーエンガンプの領民たちは大人しくしている。
周りの環境がクソだと助かる。
「民に厳しくしていた甲斐があったな」
『胸を張るところじゃないよね』
「てか、本当に疲れたわ。こんなにクタクタになったの、本当に久しぶりかもしれない……」
「体力的というよりも、精神的にクタクタというのが、またお兄様らしくていいですわね」
頭を撫でてきながら、ダイアナが言う。
まあ、体力はあるからなあ。
正直、動きすぎて疲れたとか、そういう感覚に陥ったのはもうずいぶん昔のような気がする。
身体が弱いと圧政もできないからな。
「パトリシアさえいなかったら、気分良く雑魚を殺して楽しくなれたのに……」
やっぱり、あいつが諸悪の根源だ。
もうしばらくは絶対に顔を合わせないようにしよう。
「まあ、しばらくは休むわ。バンディットも潰したし、しばらくはうちの領地も安泰だろ」
散り散りになって逃げていたバンディットの元構成員たちも、見つけ次第拷問をかけて殺している。
俺がやろうとするとプレイヤーが邪魔してくることもあるので、なかなか直接できなかったのが悔やまれるが。
部下にやらせて苛烈に痛めつけてから殺しているので、よりホーエンガンプ領で悪さをしようとする者が減ったことだろう。
やったぜ。
「それはいいことですわ! 軍を動かそうとすると、大金が必要になりますから。今のうちに蓄財し、横領しておきますわ!」
「父上と母上にばらすぞ、お前」
「それは勘弁ですわ……」
堂々と横領するとか言うな。
ちなみに、シュンと反省したように見せているダイアナだが、こいつはやる。というか、やっている。
バレていないと思っているようだが、お金を数えてゲヒゲヒしている姿は、家族内では周知の事実である。
金を勘定しているときのダイアナの顔は、とんでもなく下品である。
『ディオニソスが大人しくしてくれるのは僕も大賛成だよ。君、動くたびに誰か殺そうとするから……。オオトリからのヘイト値を上げたらダメだって言っているのに……』
「全部意味がある殺しだから仕方ないだろ。俺が苛烈に敵を殺すことで、領内の安寧を保っているんだ」
「お兄様が自分で言うのもなんですけど、それには一理ありますからね。他の領地と違って、圧政を強いているのに王国最高に落ち着いているのは、お兄様の影響が非常に強いですわ。税金を高くしても反抗してこないから、わたくしは大好きです」
『税金を上げるのはやめてあげて。僕も頭が痛くなってくるから……』
何だ? こいつも税が高い場所で暮らしていたのか?
全私財を没収して放逐してやったらよかったのに、こんな奴。
「ともかく、メンタルが回復するまで少し休みたい……。それか、意味もなく弱い奴をいじめて気持ちを持ち直したい……」
『よし、前者にしようね。後者を選んだら、皆の前で脱糞だ』
腹痛の嫌なところって、どれだけ痛みに耐性をつけても、なぜか耐え難いものがあるところだよな。
我慢できない苦痛ほどつらいものはないだろう。
まあ、そんなことをしてくれやがったら……。
「そうなったら何としてでもお前を徹底的に拷問して地獄の苦しみを与えてから殺し、見た奴も全員殺す」
俺の悲惨な姿を見た者がいなくなれば、それは世の中で起きていないということと同義。
お前の大好きな他人の命がより奪われることになるから、注意しろ。
「わたくし、そうなったらちゃんとお世話してあげますわ。綺麗にしてあげますわね」
「その時のお前、めちゃくちゃ笑ってるだろ」
嬉々として俺をバカにしている姿が想像できる。
その時は家族のこいつも殺さないと……。
「ともかく、しばらくゆっくりする……。弱い者いじめができるほどにメンタルが回復するのを待つ」
『そんな回復は二度としないでほしい……と思いつつ。ということは、しばらく引きこもりクソニートになるんだね?』
「クソニートじゃない。俺がどれだけの金と恐怖を生み出していると思っているんだ」
『うーん、この悪人。……そういえば、敵キャラだったね、君。忘れそうになる』
「どこに忘れられる要素がありますの……? 徹頭徹尾悪人ですのに……」
別に善人だなんて思っていないし、悪人だと謗られることも何とも思わないのだが、ダイアナに言われるのは腹立たしい。
どの口が言ってんだ、こいつ。俺より悪人だろ、この守銭奴。
悪人から悪人だと言われることに違和感を覚える。
「で、引きこもることがどうかしたのか? お前、いつも大事な情報を小出しにするからむかつくんだよ。今のうちに全部吐け」
『い、いや、別に隠しているつもりはないんだけど……。というか、今回は別に何かを知っているわけじゃないんだ。ただ……』
少し言いづらそうに言葉を詰まらせるプレイヤー。
『君の家族……ホーエンガンプ家と会うのかって思ってね。ぶっちゃけ、君の家族関係まではそんなに掘り下げられていなかったから、どんな人たちなのか気になって……』
そんなプレイヤーの言葉に、俺とダイアナは顔を見合わせて小首をかしげる。
「「別に普通の人だぞ(よ)」」
『嘘つけ』
◆
何やら人の親に勝手に期待しているプレイヤー。
正直、気持ち悪くて仕方ないが、帰らないわけにもいかない。
『さあ、この鬼畜兄妹を生み出した親っていうのはどんな感じなんだ……。グレゴリアスはやばかったけど、母親もきっと凄いんだろうなあ……』
ブツブツと何言ってんだこいつ。
別に父上も母上も普通だって言ってんのに……。
そんなことを考えながら、ホーエンガンプの家につく。
相変わらず城のような感じだ。
貴族の邸宅は、でかければでかいほどいい。
まあ、全部民からの徴収で作り上げられたものだから、革命軍なんかは積極的に破壊したがるけど。
すでに資産も人材も投下して作ったんだから、別に壊す必要もないと思うんだが……。
俺の私兵がすでに知らせを送っていたようで、出迎えに使用人がずらりと並んでいる。
そこをダラダラと歩いていると……俺の前に飛び出してくる人がいた。
彼女は満面の笑みを浮かべていた。
「おかえりなさい!!」
『うわっ、若いっ!? 君ってまだ妹とかいたの?』
は? 何言ってんだこいつ?
俺はプレイヤーのバカな言葉を無視して、その女に返事をした。
「ただいま戻りました、母上」
『母上!?』
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『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第36話
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『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第7話
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『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第8話
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『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第6話
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