第64話 そんな男じゃないのに
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革命軍総本部。
王国を変えるために、悪辣な貴族を排するために行動を続けている革命軍の本拠地。
国内のどこかに存在し、いまだ現体制派から居場所を突き止められていない場所の一室に、フロウとジーナの姿があった。
彼らがうなだれている中、その前に立つ女は、重たいため息をついた。
「ふぅ……。まさか、こんなことになるなんてね……」
頭が痛そうに眉根を揉むのは、革命軍のリーダーであるミズハである。
フロウは実行部隊のリーダーであるが、ミズハはそんな彼をも束ねる革命軍のトップだ。
つまり、現体制派の貴族たちからは、最も殺したい相手である。
そのため、たとえ仲間である革命軍のメンバーの前にも、そうそう顔を出さない。
その姿を知るのは、革命軍の中でも幹部だけである。
自分よりも絶対的な上。しかも、散々に面倒を見てくれた相手である。
フロウは肩身を狭くして、顔を下げることしかできない。
「……ほ、本当にすみませんでした」
「んー……。まあ、しっかり反省してくれているようだし、もう過ぎたことだからね。君たちには何度も助けられたから、多少のミスは庇ってあげられるよ。でもねえ……」
フロウたちを責めるという感じではなく、ただ純粋に困ったように顔を歪める。
「ちょっとタイミングが悪かったよね。人気の高いパトリシア王女がいる中で襲撃を仕掛けたのは……」
「…………」
「で、でも、ディオニソスがホーエンガンプ領から出ている機会なんて、ほとんどないわ。今を逃したら次のチャンスがいつ来るか分からない。それが分かっていて、フロウは……」
当然、ホーエンガンプ領で事を起こす方が難しい。
圧政を強いているホーエンガンプ領だが、だからこそ反乱や革命のようなことが起きないような管理は徹底されている。
それに、ディオニソスの敵に対する情け容赦ない苛烈な攻撃によって、もはやホーエンガンプ領の民は逆らうことすら頭に浮かばないほどである。
革命軍がホーエンガンプ領で動こうとすると、おそらく領民からの密告が入るだろう。
ならば、ディオニソスを害するのは、彼が領外に出ているときでなければならない。
「うん、ジーナの言いたいことも分かるんだけどね。確かに、私たち革命軍にとって、ディオニソス・ホーエンガンプはいつか必ず敵対し、倒さなければならない敵だよ」
革命後の王国に、ディオニソスがいてはならない。
それは、革命軍全体の意思である。
「それに、ディオニソスの強さも目の当たりにできたんだよね?」
「……はい。とても強かった……。信念を持たない男なのに、どうしてあそこまでの強さを……」
「……本当、それはこっちが知りたいくらいだよ。神様も不公平だよね。あんな性格破綻者に、あれだけの強さを与えるんだから」
苦虫を嚙み潰したような顔をするフロウとミズハ。
直接戦い、その力をまざまざと見せつけられたフロウは、より感じ入るものがあった。
自分は強いと思っていた。実際に実力は伴っている。
だが、当然世界で最強ではない。
自分よりも強い者が存在し、それが敵になることだってあるのだ。
ディオニソスという存在で、分かっていた風になっていた事実を改めて突きつけられた。
「ともかく、ディオニソスを相手にするんだったら、相当な準備と手練れを用意しなければいけないということだ。それが分かっただけでもよかったじゃん。絶対に次に活かそうね」
「そ、それだけ……?」
フロウは目を丸くする。
これだけの大事を引き起こし、あまつさえ失敗してしまったのだ。
何かしらの罰が下されるとばかり思っていた。
そんな彼に、ミズハは面倒見が良い笑顔を浮かべる。
「君たちはちゃんと反省しなくちゃいけないんだよ? この作戦で死傷者も出ているんだ。彼らには、ちゃんと報いないといけないよ」
「はい!」
「……まあ、もっと状況が悪かったら、厳罰を与える必要はあったんだけどね。幸いにも、今回の事件は革命軍云々よりも大きなニュースがあったから」
そのニュースは、フロウも把握していた。
「裏切りの王国騎士団長シルバー・フリムランのことですね」
「そう。今はそっちに話題が全部持っていかれてね。パトリシア王女も無事だったから、革命軍にあまり注目が集まっていないんだよ。ただ、具合が悪いのは、今回の事件でディオニソスも株を上げたことかな」
革命軍が貴族と敵対しているのは、周知の事実だ。
実際に激しい戦闘がいくつも起きている。
一方で、王族を守るべき騎士団の団長が裏切り、王女パトリシアに襲い掛かったというのは、誰もが驚く衝撃的なことである。
革命軍の行動がきっかけだったとはいえ、シルバーがどうしてそのようなことをしたのか、結果はどうなったのか。そちらの方に民は意識を集中させていた。
そのおかげで、革命軍は悪く言えば忘れられており、批判もそれほど上がっていない。
また、シルバーを打ち倒したのが、あの悪名高い殺戮皇ディオニソス・ホーエンガンプだというのが、民の心を掴んで離さない。
ホラだとする者も多かったが、助けられた本人であるパトリシアが事実だと認めているので、その意見は真っ向から否定される。
そうなると、後はディオニソスの評判が上がるのみである。
なお、ホーエンガンプ領の領民たちは、『あの人が他人を無償で助けるわけないじゃん……』と思っていたりする。
「あの男が誰かのために戦って、誰かを守るなんてことはありえないんだけど……。結果だけ見たらその通りだからね。彼のことを知らない民は、そのことを信じてしまうだろう」
ホーエンガンプ領の民と同じことを考えているミズハは、深くため息をつく。
「……そんな男じゃないのに」
「ッ!?」
ゾッと背筋を凍らせるフロウとジーナ。
ミズハからあふれ出る殺気が、彼らを驚愕させた。
実行部隊として様々な修羅場を潜り抜けてきた彼らを恐怖させるほどの殺意。
それが、優しいミズハから漏れ出たということに驚かされる。
「あ、ごめんごめん。まあ、そういうわけだから。君たちはちゃんと反省すること。いいね?」
「はい!」
パッと表情を笑顔に変えるミズハに、突っ込むことはしなかった。
怖いからである。
「んー……しばらくは大きな動きは見せられないかなぁ。ほとぼりが冷めるまで、力を蓄える機会としようか。それに……」
ミズハは、普段の柔らかく優しい表情からは想像もできないほど、意地悪な笑みを浮かべた。
「ディオニソスも……というより、ホーエンガンプ家も、これから大変なことになるだろうしね」
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『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第8話
https://kimicomi.com/episodes/9f9f3e77bda4a
『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第36話
https://unicorn.comic-ryu.jp/13165/
『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第7話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1007534
『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第8話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1007531




