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守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話  作者: 溝上 良
第3章 革命編

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第60話 どうしてこんなことに

過去作『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』のコミカライズ第1巻が発売中です。

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 血を噴き出して倒れるシルバーくん。

 それを見下ろし、俺は小さく呟いた。


「どうしてこんなことに……」

『えぇっ!? ここで後悔するの!?』


 がっくりと肩を落とす。

 俺は、別にシルバーと戦いたいとかいじめたいとかは思っていなかったのだ。

 むしろ、心の底から応援しようと思っていたのに……。


「だってお前……。シルバーくんは、パトリシアを何とかしてくれるはずの人だったのに……。唯一あの化け物を殺すことができる存在だったのに、俺がそれを殺してしまった……」


 どうして俺を襲うなんて馬鹿なことを……。

 ただの自殺行為じゃないか……。

 普通に、『これからパトリシアを襲って弄んでから殺します』と言ってくれたら、邪魔しなかったのに……。


「まあ、あっちから殺意満々で襲い掛かってきたら仕方ないんじゃありませんか? あとは、お兄様が殿下に苦しめられるだけですし、わたくし的には良い感じでしたわ!」

「お前のことはどうでもいいんだけど……」

「かわいい妹になんてことを……!」


 かわ、いい……?

 ぷんすかと怒りを露わにしているダイアナを見て、困惑する。

 こんな敵対的な妹が、どうしてかわいいと……?


『これからどうするの? なんだかとんでもないことになって、原作乖離も甚だしいんだけど……』

「え、知らん」


 ちなみに、この街が燃えていることも知らん。

 革命軍も知らん。

 まあ、革命軍はもう引き始めているだろう。

 そもそも、あいつらの目的は俺を殺すことみたいだったし、実行部隊のリーダーがボコボコにされたら、まだ続行するとは思えん。

 引き際を知らない奴は、近衛騎士に捕まるか俺の私兵に殺されているだろう。

 その戦いの余波でとんでもない目に合っているこの街の修繕は……パトリシアが何とかするだろう。

 自分の評判も上がることだしな。

 そんな俺に、ダイアナがポツリと。


「事情が事情ですけれど、相手は王国騎士団長ですからね。まず、王女が革命軍に襲われているし、護衛していた騎士団長が実は殿下を狙っていた変態だったり、その変態がお兄様にぶっ殺されたり、お兄様は国に報告していない魔剣を持っていたり……色々とまずくありません? そもそも、王族護衛のトップが死んだら、影響が大きすぎると思いますわ」


 んー……なるほどなるほど。

 まず、騎士団長が変態でパトリシアをどうにかしようとして俺を殺しにかかってきたと主張しても、何人が信じるだろうか?

 俺とシルバーの前評判の差がえげつないから、絶対に俺が嘘を言ってシルバーを殺したという感じになるだろう。

 とはいえ、これだけのことだ。

 内々に処理することもできないし、間違いなく事情を聴かれる。

 ……あー、だるい!


「……面倒くさい。帰るぞ」

「はいですわ」

『えぇっ!? 絶対にそれで済ませていいことじゃないよね!? 明らかにマズイよね!?』


 いいんだよ。馬鹿正直に対応しても、痛い目に合うだけだ。

 だったら、対応してやる義理もない。だるい。


『せめて、パトリシアにはちゃんと国王とかに説明してもらった方がいいんじゃ……あれ? パトリシア、どこにいたっけ?』


 あん? そこらへんに転がっているんじゃ……。

 そう思って見渡すと、誰もいない。

 ……んんんん?


「……これ、万が一革命軍に殺されていたりしたら、具合が悪くありません?」


 ダイアナの言葉を受けて、俺は重々しく頷いた。


「……俺が1、ダイアナが9といったところか……」

「まさか、それ責任の話をしていませんわよね!? ふざけないでくださいまし! 何が何でも道連れにしてやりますわ……!」

「止めろ! 死ぬなら一人で死ね!」

『いや、なにこの兄妹……』


 食らいついてくるダイアナと取っ組み合い。

 ギャアギャアと燃え盛る街の中で騒ぐホーエンガンプ兄妹。

 それは、私兵が集まってくるまで続くのであった。

 その間に、血だまりを残して消えているシルバーのことなんて、完全の意識の外だった。

 どうでもいいし。











 ◆



「はぁ、はぁっ……!」


 今にも倒れそうになる身体に鞭を打ち、シルバーは歩き続ける。

 生き延びるために、必死に脚を動かす。

 しかし、これが何か意味があるのかと冷静な部分が冷たく言い放っていた。

 ディオニソスが言っていたように、魔剣『アドリア』の効果の一つが、死の呪い。

 これがどれほどの傷で発動するかは分からないが、そもそも呪いがなくとも重傷と呼べるレベルの傷を負っている。

 ならば、その呪いが発動しないはずがないというのが、シルバーの考えだった。

 それでも、彼は決して生への望みを捨てなかった。


「まだだ……! まだ私は死ぬわけには……! この呪いを、何とか解呪して……!」


 魔剣の呪いを解呪できる方法があるのか?

 あったとして、そもそもこの傷を治療して生き延びることができるのか?

 そう思っても、決してあきらめることはない。

 なぜなら……。


「で、殿下を、私の前に……!」

「――――――あら、お呼びしましたか?」

「あ……?」


 燃え盛る街で不釣り合いな穏やかな声。

 誰もが怯えて焦った声を出すであろう惨状の中、いつも通りの声音。

 それは、シルバーの目の前に、ニコニコと笑みを浮かべて立っていた。


「で、殿下……?」

「はい。ごきげんよう、シルバーさん。いつも私たち王族の護衛、ありがとうございます。とても助かっていますよ」


 王女パトリシア・レッドフォード。

 シルバーが求めてきた、盲目の王女が立っていた。

 先ほどまで何者かによって縛り上げられていたはずだが、とっくに解放されている。

 彼女の護衛だろうか、と思いながら、シルバーは笑う。

 まさか、こんな幸運があるとは、

 自分の求めてきた女が、目の前にのこのこと現れた。

 しかも、護衛すらいない様子。

 最後の最後でチャンスが……。


「ふっ、ふふっ……。いやはや、まさか、革命軍に襲われる羽目になるとは……。殿下の進むルートは、秘密裏にしていたはずですがね。誰か内通者でもいるのでしょうか」

「間違いなくそうでしょう。おそらく、近衛の中にもいるはずです。王国の現状は、民の皆様にとってはとても厳しいものですから。王族としてとても力不足を感じています」


 ふう、と悩まし気にため息を吐く。

 そのしぐさすら艶めかしく、シルバーは死にかけであるのにごくりとのどを鳴らす。

 しかし、やはり聡明。

 ちょっとした悪戯で内通者のことを尋ねてみたが、どうやらパトリシアはそれを把握していたようだ。

 革命軍と騎士が内通。

 ばれれば極刑間違いなしだが、それでもそうしなければならないほど、この国は悲惨だということだろう。


「……いやいや、この国を蝕んでいるのは、王族というよりも貴族が」

「それに」


 シルバーの言葉を遮るパトリシア。

 彼女はニコニコと、いつも国民に向けているような柔らかい笑顔を浮かべながら、何でもないように言った。


「――――――今回の私の情報を革命軍に流したのは、私自身ですから」

「…………は?」




過去作のコミカライズ最新話が公開されました。

期間限定公開となります。

下記のURLや書影から飛べるので、ぜひご覧ください。


『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第35話

https://unicorn.comic-ryu.jp/12775/


『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第42話

https://www.comic-ryu.jp/36413/


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第9話

https://magcomi.com/episode/2551460910063227225

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