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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~  作者: 溝上 良


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第6話 すっごい嫌そうな顔

 










「めちゃくちゃにすると言っても、結局は殺すんだがな。必死に生きようとしている者を殺すのは、何ともいえない優越感に満たされて楽しいぞ」

『とんでもない悪役だ! 今、見て、聞いて、思ったもん! ダメだこいつ!』


 父上の発言を聞いて、発狂するかのように大騒ぎするプレイヤー。

 領主によくもまあダメとか言えるな。間違いなく処刑だぞ、お前。

 姿が隠れているからって、本当に言いたい放題だなこいつ。

 いつか本体を見つけられたら、生まれてきたことを後悔するほどの拷問にかけてから殺そう。

 俺は強く決意するのであった。


『というか、人を殺すだなんて……。絶対に悪いことなのに……』

「(時と場合にもよるだろうが。賊なんて生かしていても意味ないし、殺した方がいいだろ)」

『いや、でもほら……。その賊の仲間とか家族とかから恨みを買うだろうし……。人の恨みって、怖いじゃん』


 変な所で繊細だな、こいつ。

 俺の頭に勝手に住み着いて、領主である父上の悪口をペラペラしゃべることができる図太さはあるくせに。

 まあ、それもあながち間違いではないんだけどな。

 ただ、貴族なんて誰かに恨まれているのが当たり前だしな。

 というか、貴族に限らず、人間は生きている限り誰かから恨まれるだろ。

 だから、誰かに恨まれるかもしれないからと生活を制限していても、意味ないのだ。

 どうせ恨まれる。

 そもそも、生かしておくから復讐されるかもとか考えるのだ。

 本人はもちろん、その家族や親しい仲間まで皆殺しにしてしまえば、そんな復讐なんかに怯える必要はないだろう。

 だって、死んでいたら害を加えようとしても、どうしようもできないしな。


『最低の解決方法、見つけちゃったねぇ……』


 最高の解決方法だろ。

 殺したら何とでもなる。


「うむ。仲間を守ろうと必死に拷問に耐えていた男が、その仲間から殺された時の顔は傑作だったぞ。何せ、その仲間は私の提示した金欲しさに男を殺したのだからな。その理由を聞いた時の男の顔は……ほっほっほっ」

「はっはっはっ」

『笑える要素なくない?』


 面白いだろ。

 人間の汚いところって、それ単体で見てもそんなに面白くはないが、こういう落差があるとまた違ってくる。

 偉そうに仲間を守ろうとしていたのに、その仲間から金という俗物的な目的のために殺されるなんて……。

 そいつ、今地獄でどれほど暴れていることやら。

 まあ、しょせん賊だから、同情の余地はない。


「ところで、父上。俺を呼んだ理由というのは……」

「おお、そうだ。お前はよくホーエンガンプの私兵団を率いて、悍ましくも私たちの財産を貪ろうと侵入してきた賊を駆逐してくれた」


 父上からお褒めの言葉をいただく。

 まあ、今更これくらいで喜ぶような年齢でもないが。


「その賊について、王都から命令が下った」


 父上は、どこか忌々しそうにしていた。

 王都からの命令。それが意味するところは……。


「王都……。なるほど、無能な王族どもですね」

「その通りだ」


 王命ということである。










 ◆



 バンディット。

 現在、王国全域で猛威を振るっている、賊の集団の名前である。

 そう、王国全域。これが、この賊の異常性を物語っている。

 そもそも、一つの国家全体を荒らしまわれるような賊なんて、普通存在しないのだ。

 そこまで大きくなる前に、国に潰されるからである。

 だというのに、バンディットは間違いなくこの王国全域で略奪や殺戮を繰り返している。

 そこから分かることは……。


「本当、この国の力は失墜したものだ。ここまで来ると、もはや笑ってやることすらできん。ただただ哀れだよ」

「そうですね。これがまだ国としての体裁を守っていることに、驚きを禁じえません」


 賊が好き勝手している国家ってなんだよ。

 さっさと捕まえて潰すのが普通だろう。

 それすらできないということは、とんでもなく弱体化しているということである。

 そもそも、この国は屋台骨がぐらぐらで弱かったんだけどな。

 国が弱くないと、賊は大きくならないし。


「それは、ひとえに私たちのような領主が力を持っているからだろう。もはや、それぞれ独立した国のようになっている。国の統制なんて、まるで及んでいない。やりたい放題だ」

『あ、これゲームで見た。本当に戦国時代とか三国志みたいな感じだよね』


 楽しそうに指摘するプレイヤー。

 俺の知らん知識で物を語るな。気持ち悪い。

 戦国時代とか三国志ってなんだ。

 この国みたいな状況の国が、他にもあるってことか?

 最悪じゃん……。

 俺は楽しいからいいけど、弱い奴にとっては地獄みたいな場所だな。


『でも、この国の王族は本当に力を持っていないんだね。なのに、王命なんて意味あるの?』


 王に力はなくとも、象徴としての意味はあるからな。

 どれだけないがしろにされても、最後の一線は誰も超えない。

 ヘタレばかりだ。

 今のところ、俺も好き勝手できているので、殺すつもりはないが。

 ……まあ、状況次第だろうな。

 あそこには腹が立つ奴もいるし。


「まあ、あのような無能な連中のことは無視しても構わんのだが……。内容も内容だ」

「内容とは?」

「バンディットをたたく。全国の貴族の力を合わせ、一気に壊滅に持っていきたいらしい。一大反攻作戦だな。まあ、好き勝手やられているのは私たち以外の領だが」


 ふっとあざ笑う父上。

 まあ、うちに侵入してきた賊は、すぐに出向いて殺すからなあ。

 被害という面では、王国全体の中で最も少ないかもしれない。

 とはいえ、ホーエンガンプ領で賊が発生している、賊による被害が出ていると言うこと自体が、異常事態ではあるのだが。

 今までそんなことはなかったし。

 普通の民が困窮して賊になるのが一般的だが、この領地の民は俺や父上の恐ろしさを理解しているから、賊にならないんだよな。

 拷問されてから殺されるし。

 その代わり、レジスタンスはいるぞ! 面倒くさいけど!


「基本的にバラバラに行動している俺たちを、まとめて動かそうということですか。……国軍には、そこまで力がないのですか」


 各領地の力を合わせて賊をたたく。

 言葉にすると素敵なことだが、要は国軍単独では賊を討伐できないから、各領地の私兵の力を借りたいということだろう。

 何とも情けない。


「近衛は別格だが、それ以外は雑兵もいいところだ。お前の力をもってすれば、一日も経たずに全滅させることができるだろうな」


 自慢げに胸を張る父上。

 あと、でっぷりと太ったお腹もプルンプルンである。

 近衛なあ。精鋭が集められるだけあって、そこは少しはマシらしい。

 まあ、俺からしたら大して変わらんが。


「それが王命の内容ですか」

「まあ、他の領地がどうなろうと知ったことではないが、そこで勢力を拡大させてホーエンガンプ領に侵入してくるのは鬱陶しい。潰すのは構わないが……」


 苛立たしそうに、悪人面を歪ませる父上。


「問題は、王女がお前の名を出して出陣を要請していることだ」

「…………」

『うっわ。すっごい嫌そうな顔……』




過去作『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』のコミカライズ第6話がニコニコ漫画で公開されました。

期間限定公開となります。

下記のURLや表紙から飛べるので、ぜひご覧ください。

https://manga.nicovideo.jp/comic/73126

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