第55話 お前の目は節穴か
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「あ、あげるというのがよく分かりませんが……」
頬を引きつらせているシルバー。
どうした。俺を殺すとか言っておいて、何で引いているんだ。
むしろ、お前の発現の方が引かれるべきものだと理解しろ。
シルバーはスッと目線を向けた。
そこに誘導されると……俺は唖然とした。
「すでに、王女殿下は私の手にあります」
壁にもたれかかっているパトリシアがいた。
気を失っているようで、目をつむっている。
すでに、シルバーは魔手を伸ばしていたようだった。
それは別にどうでもいいんだけど……。
「…………狸寝入りか」
パトリシアめ。こいつがあっさりと他人に意識を奪われるはずがない。
何を考えているのか、この期に及んで気絶したふりをしているのだろう。
何考えてんだ、このクズ王女。
だいたい、何あっさり捕まってんだ。
お前、その気になったら絶対にシルバー殺せるだろ。
「少々手荒なことをするかと思っていたが……なぜか縛られていて、とくにそんなこともなく普通に捕まえることができました。なぜだろう……」
「なんでだろうなあ……」
何かやんごとなき事情があったんだろうな。
これは、パトリシアが捕まってしまうのも仕方ない。うん。
王国の貴族として、必ず救い出さねば……。
俺が守護る。
「もともと、私は殿下のことを愛していました。ぜひ手に入れたいと……私の下で跪かせ、侍らせたいと思っていました」
「なかなか屈折した欲望ですねぇ……」
いきなり性癖暴露されても困るんですけど……。
貴意の高い人物を手中に収めたいという気持ちだろうか?
……よりによってこの女は止めておいた方がいいと思うんだけど……。
「しかし、どうにも殿下はディオニソス殿に執心の様子。このままでは、私の目的が果たされない。だから、あなた……いや、お前を殺すことにした」
「短絡的では?」
あと、ため口止めろや。
どいつもこいつも……。こんなにため口を使われるのが連続するのってなんでだよ。
「あのさあ。俺、パトリシアをお前に上げるって言ってんじゃん。しかも、そもそもそいつが俺に執心な理由って、恋愛みたいな気味の悪いものじゃないぞ。適当にいたぶって右往左往している奴を見るのが好きなだけの、性格破綻者だぞ」
「ふん、そんな嘘をつく必要はない。私はお前よりもずっとそばで、長く殿下を見てきた。そのようなはずがない」
「お前の目は節穴か」
完全な好意からの助言も、シルバーくんは無視する。
あーあ。まあ、そもそも俺にとってはこいつがパトリシアを持って行ってくれるのであればいいんだけどさ……。
しかし、どうして俺を殺すなんてことを……。
俺に隠れてこっそりパトリシアを持っていくのであれば、知らないふりもできたのに……。
わざわざ死にに来るとか、バカなの?
「くー、くー……。私はディオニソス様が好きです……」
「…………ッ!!」
「いや、おかしいよね。明らかに起きているよね? なんで突っ込まないの?」
パトリシアの寝言(笑)を聞いて、キッと俺を睨みつけてくる。
その殺意は、ゴミみたいな性癖はあっても騎士団長にまで上り詰めただけはあった。
……なんでこんな奴が騎士団長なんだ。もうこの国ダメだろ。
「……あれ? お兄様が生死をかけた戦いをするのは勝手なので別にどうでもいいのですけれど」
「どうでもよくない」
「これ、わたくしシルバーさんの本性を知ったわけですけど、生かして帰してもらえますの?」
ふと気づきましたとダイアナが尋ねる。
……こいつ、自分が安全だったら俺のことなんてどうでもいいと思っているな。
相変わらず、兄妹で思考が似ていて気持ち悪い。
『君も思っているのかよ』
というか、ダイアナは殺しても死なない。
ゴキブリみたいな女だからな。
『自分の妹のことをゴキブリって言うの? ホーエンガンプ家おかしい』
ダイアナの質問を受けたシルバーは、仰々しく頷く。
「当然、殺す」
ダイアナの顔が死んだ。
よっしゃ! 男女平等だ!
と思っていたら、シルバーの目がダイアナの身体を舐めるように見渡す。
…………うん?
「……と言いたいところだが、私に跪き、殿下と同じように這いつくばるのであれば、生かしてやってもいいぞ」
「マズイですわ、お兄様! こいつ、わたくしのことを性的な目で見ていますわ! 正気!?」
シュバッと俺の背中に隠れながら抱き着いてくる。
おい、止めろ! お前が俺の後ろに隠れると、あいつの厭らしい目が俺に向かってくるだろ!
だいたい、自分に言い寄ってくる男を正気かどうか聞くな。自己評価どうなってんだ。
「ダイアナのことはどうでもいいし、パトリシアのことはさらに勝手にしてほしいところだが……」
こいつらを守るために戦う、ということは死んでもないが。
何度でもいうが、俺が好きなのは弱い者いじめである。
「お前を痛めつけて殺すのも楽しそうだ」
「私の崇高な目的のため、邪魔者には消えていただく。ディオニソス殿はここで死ぬのだ」
俺とシルバーは、燃え盛る街で剣を向け合った。
過去作のコミカライズ最新話が公開されました。
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『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第34話
https://unicorn.comic-ryu.jp/12473/
『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第42話(後編)
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1000910




