第54話 じゃあ、あげる
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シルバーが引きずって連れてきた、満身創痍の状態の女。
フロウが反応を見せていたことから、こいつも革命軍なのだろう。
ボロボロのジーナと違い、シルバーには大して傷を負っているような様子はない。
さすがは騎士団長。
……というか、騎士団長が革命軍に追い詰められるような状況になっていたら、この国も終わりだよな。
『ああ、ここでもこういう展開になるんだね』
プレイヤーが知った風な口を利くので、少し驚く。
あ? これって、お前の言う原作にあるやつなの?
ということは、ジーナとかいう奴は毎回シルバーにボコボコにされているの? 笑えるんだけど。
『似ている展開はあるっていう感じかな。ディオニソスがパトリシアと仲がいい展開は原作ではなかったから、一緒に二人が行動することはなかったんだけど……。今回、こうして二人で行動することが原因で、原作にはないけど類似した展開になったのかもしれないね』
え、俺とパトリシアって、仲悪いの? 原作の方がいいじゃん……。
あと、自然と俺たちが仲良しと判断するな。
どこをどう見たらそうなるんだ。殺すぞ。
『ただ、革命軍とは割とかかわりがあったからさ。パトリシアがしょっちゅう襲われていた。その時に、ジーナも出てくるキャラなんだよね。すっごく強いんだけど……それを倒すってことは、シルバーがそれ以上に強いということだ。……原作でシルバーってジーナを倒せるほど強かったっけ?』
知らんがな。まあ、実際に倒しているし、強いんじゃないか?
俺、ジーナとかいうガキの強さ知らないけど。
というか、革命軍ってしょっちゅう王女を襲うの? ガチのテロリストじゃん。
全員捕まえて処刑されても文句言えないことしているんだけど。
そういうことをしていたら、勢力拡大できなくね?
不人気の貴族を殺すならまだしも、人気の高いパトリシアを殺そうとして、ウキウキで実行する国民がどれほどいるか……。
まあ、殺そうとするんだったら応援するんだけどさ。
しかし、シルバーが強いことにプレイヤーが驚いているが、そりゃ強いだろうというのが俺の感想だ。
だって、王国の騎士団長だぞ?
王族が唯一動かせる武力のトップだ。
それが、テロリストに敗北するような雑魚だったら目も当てられない。
「さすがはディオニソス殿。ニックをあっさりと退けられたお力は本物だ。革命軍程度、相手にならなかったということですな」
うん。フロウもニックも雑魚だったぞ。
「お前もしっかり倒しているみたいじゃん。そいつ、強いんだろ?」
「ええ、なかなか。テロリストでなければ、ぜひとも近衛にと誘っていたのですが……残念です。しかし、そちらの男はフロウと見受けられる。革命軍実行部隊のリーダーとして、多くの貴族を苦しめた猛者。それを打ち倒されるとは……さすがです」
「あっそ。で、お前は何しに来たの?」
そんな心のこもっていない称賛を受けても嬉しくない。
何の用でこちらに来たのかさっさと答えてほしいものだ。
本来であれば、混乱している近衛の指揮に向かうべきだろう。
それを放置してこちらに来ているということは……。
「ディオニソス殿の援護を……という嘘は通用しませんかな?」
「うん」
お前、そんな殊勝な性格していないだろ。
そもそも、この国の騎士団は、王族と国民を守るために存在するのであって、貴族を守るために存在しているわけではない。
貴族は貴族で、勝手に私兵団を作って武力を所有しているし。
だから、そもそもシルバーは俺の援護に来る必要なんてない。
そして、仲がいいというわけでもない。
お互い、顔と名前を知っているくらいだろう。
「では、はっきりと申し上げますと……」
シルバーは温かい笑みを浮かべる。
「ディオニソス殿。貴殿を殺しにまいりました」
「えぇ……なんでぇ……?」
俺、何か嫌われるようなことした……?
…………心当たりはいっぱいあるんだけど。
◆
え、何で俺いきなり命を狙われているの?
俺、なにかシルバーくんにやったっけ?
心の底からパトリシア殺すことを応援している相手から殺すと言われると、なかなか衝撃的だった。
純粋な好意を否定されるのって辛いんだな……。
『人殺しを応援することを純粋な好意って言うな』
「さて、革命軍のフロウ。この女を殺されたくなかったら、私たちの前から消えろ。ただし、革命軍をすべて撤退させるのは、あと十分程度遅らせろ」
雑につかんでいるジーナを見せる。
完全に気を失っているのだろう、されるがままである。
というか、割と早く治療しないと危なくなるのではないかと思う程度には傷を負っている。
……まあ、そりゃ騎士団長にテロリストは勝てんよな。
まさかだけど、タイマンで勝負したの?
テロリストなんてしているくせに、何で変なところで正々堂々しているんだよ。
「どうして僕が敵対する騎士団長様の意見を聞かないといけないのかな? 従うとでも?」
「私はあまり気が長い方ではない。この女を殺されたくなければと言った。次に求めていない言葉が出てくれば、殺す」
「……ッ!」
最初は抵抗を見せていたフロウであるが、シルバーの言葉に嘘偽りがないことが分かってしまったのか、グッと歯をかみしめる。
次に否定の言葉を吐いたら、マジで殺しそう。
いや、別にどっちでもいいけどさ。心の底から。
そんなことを考えながらぼーっとしていると、フロウがキッと俺を睨んできた。
どうして?
「ディオニソス・ホーエンガンプ……! この屈辱は、一生忘れない。必ずやり返してみせる……!」
「え、俺?」
困惑している俺を差し置き、投げ捨てられたジーナを抱えてフロウはゆっくりと去って行った。
人質解放してもらったら、もうシルバーの命令に聞かなくてもよくね?
フロウがどういう風に対応するのか知らないし、味方でもないから助言しないけど……。
俺だったら、もうさっさと撤退させるね。嫌がらせの意味も込めて。
「なんかとばっちりが連続していてつらいんだけど……」
「とばっちりというのはよくわかりませんが……」
「しかし、よく分からん命令をしていたな。さっさと全体を引かせた方がよかったんじゃないか?」
お前の大好きなパトリシアの危険も下がるぞ。
「普通ならばそうですが、私はここで貴殿を殺すつもりです。さっさと逃げられてしまえば、近衛やあなたの私兵がここに集まってくる。私がディオニソス殿と戦っている姿を他人に見られるのは、非常にマズイ。そのために、しばらくは革命軍にかかり切りになってもらおうと」
シルバーはマズイと言っているが、実際どうなんだろうな?
騎士団長であるこいつと、貴族である俺。
それが殺し合いをしていたら、少なくとも近衛騎士はシルバーの味方をするだろう。
また俺が何かをやらかしたと判断するだろうな。
『君の私兵も、君が何かをしたと確信しながら味方をしてくれそうだよね』
ゴミじゃん。
「まず、何で俺を殺そうとしているんだ? こんな素晴らしい貴族は、他にいないだろうに……」
「……それについてははっきりと申し上げないでおきましょうか」
はっきり申し上げていいぞ。素晴らしいって。
『その自己評価の高さはなに?』
言いづらそうに顔を歪めていたシルバーは、一転して笑みを浮かべる。
「私があなたを殺す理由はただ一つですよ」
もったいぶるように時間を置いて、胸を張るシルバー。
「私は、パトリシア・レッドフォードを愛しているからです」
「じゃあ、あげる」
「え?」
「え?」
ポカンとシルバーが俺を見る。
俺も、え? ってなんだよと思いながら首を傾げる。
……沈黙が流れた。
え、何だよこの空気……。
『あげるじゃないだろ!!』
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下記のURLや書影から飛べるので、ぜひご覧ください。
『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第34話
https://unicorn.comic-ryu.jp/12473/




