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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~  作者: 溝上 良


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第5話 ほっほっほっ

 










 ホーエンガンプ領の一大拠点。

 というか、この地域一帯を収めている領主。すなわち、貴族が住んでいる邸宅である。

 当たり前だが、警備はガッチガチだ。

 私兵団は俺が全部任されているから、すべて部下だが。

 基本的に護衛に残しているのは、よく率いている明らか犯罪者顔ではなく、精悍な顔立ちの男や女である。

 周りにいるのがチンピラのようだと、これもまた舐められるのだ。

 そんな中を、俺はズカズカと歩いていく。

 もちろん、止められることはない。

 俺が呼ばれているということを知っているかどうかは知らないが、たとえ予定がなくとも、俺はこの場所を自由に歩くことができる。


「おかえりなさいませ、ディオニソス様」


 深く頭を下げて出迎える執事。

 ぴしりと隙のない所作は、父上に仕えるにふさわしい男だ。

 名前をイギス。

 昔からの馴染みの顔だから、いつも通りに対応する。


「おう。父上は?」

「いつもの場所で」

「分かった。ああ、あと賊から色々と情報を抜き出しているから、こいつから報告を聞いてまとめておけ」

「……まとめる?」


 いつもそつなく仕事をこなす男にしては珍しく小首をかしげる。

 イギスにしては珍しく、機嫌が悪ければ怒鳴りつけていたかもしれないが、基本的に報告なんてする方が事前にまとめなければならないのだから、不思議に思うのも当然かもしれない。

 しかし、理由は、別に俺が面倒くさくてサボったとかではないのだ。

 俺が言いながら後ろを指さすと、敬礼して元気に返事をするマリエッタがいた。

 そう、こいつは馬鹿である。

 俺が報告するのもおかしいし、マリエッタが一人でうまく報告をまとめられるわけもないので、イギスに丸投げである。


「よろしくっす!」

「こいつがちゃんと理論立てて話をすることができるわけないだろ」

「なるほど」


 イギスの頬が引きつっているのを見た。

 整った顔が台無しだぞ、イケメン。

 キャッキャッと駆け出していくマリエッタの背中を、どこか哀愁漂うものを見せつけながら追いかけるイギス。

 後は頼んだぞ。俺はしんどいからパス。

 そんなことを考えながら、大きな門から邸宅に向けて歩き出す。

 すると……。


『……でっか!!』

「うるせえ! 殺すぞ!!」


 プレイヤーがいきなり大きな声を上げるので、それ以上に大きな声で怒鳴り返す。

 お前が叫んだら直接頭の中で響くからクソうるせえんだよ! 止めろ! 死ね!


『いや、でかすぎるでしょ! お城かと思ったよ!』


 プレイヤーは、どうやら父上の住んでいる邸宅を見て驚いたらしい。

 まあ、結構でかい。さすがに王城よりは大きくはないが、他の領地と比べたら一番かもしれない。


「そりゃ、領主の邸宅がこじんまりしていたら舐められるだろ。こういうのは、見栄えが大事なんだよ」

『これが領民の税金からできていると思うと、素直に褒められない……』

「お前、普段どんな場所で暮らしてんの? 領民のためにこうやって見栄張ってるんだろうが」


 バカなことを言うプレイヤーに呆れる。

 こいつの住んでいた場所は、いったいどのような場所だったのか。


「みすぼらしく縮こまった場所に領地のトップが住んでいたら、下に見られるだろうが。賊も簡単に入ってくるだろうし、他領からもむちゃくちゃな取引を持ち掛けられたり要求されたりするだろ」

『……もしかして、この国って戦国時代並にやばかったりする?』

「戦国時代っていうのが何か知らんけど、なかなかいい響きの名前だな」


 隙を見せたら食われる。当たり前のことだ。

 この世界は弱肉強食なのだから、弱くなったら強者に食い殺される。

 そうならないように、人は常に強くあらねばならないのだ。

 そんなことを考えながら歩いていると、父上のいる広間の前にたどり着く。


「おし、もうお前黙っとけよ。喋ったら殺すから」

『わ、分かった』


 また気の抜けることを脳内でギャアギャア言われたらたまったものではないので、くぎを刺しておく。

 いくら親子関係があるとはいえ、公の場では弁えた態度をとらなければならない。

 俺は広間に入り、高座に座っている父上の前で跪いた。


「ただいま戻りました、父上」

「おお、よくぞ戻ってきた、ディオニソス」


 俺の挨拶を受け、父上……ホーエンガンプ領の長は、鷹揚に頷くのであった。











 ◆



 グレゴリアス・ホーエンガンプ。

 ホーエンガンプ領の領主にして、大貴族。

 作中? での強大な悪役ボスキャラディオニソスの実父である。

 その性格は、まさに冷酷無比、残虐無比。

 ディオニソスの性格に間違いなく悪影響を与えたキャラ? であり、作中ではほとんど描かれないにもかかわらず、プレイヤーたち? からは諸悪の根源として毛嫌いされている、ぶっちぎり不人気キャラ? の一人である。

 ちなみに、それに比類しているのがディオニソス……つまり、俺ということらしい。


「(お前、人の父親に向かってなに好き勝手言ってくれてるの?)」

『い、いや、僕だけの意見じゃなくて、プレイヤー大多数の総意だから! 決して僕だけが好き勝手悪口言っていたわけじゃないから!』


 慌てて否定してくるプレイヤー。

 プレイヤーって複数形なの? 考えるのだるいわ。

 しかし、よくもまあ人の親のことを、その子供の面前でバカにできるよな。

 常識がないのかよ、こいつ。

 俺に言われるって、よほどのことだぞ。


「(あのなあ。結局、それはお前の眼で直接確かめてないだろうが。他人が言っていた噂でそいつの評価を下すのは、本当に愚かだぞ。自分にとっての好機やメリットも、全部捨てることになる)」

『うぬぬ……』

「(自分の目で確かめて、自分の価値判断のもと、自分の意見を持てよ。お前がやっているのは、ガキでもできる)」

『うぐぅ……。ディオニソスのくせに、正論を言ってきやがった……』

「(殺すぞ)」


 一言多いんだよ、こいつ。

 しかし、プレイヤーも思うところがあったのか、重々しく声を発した。


『でも、確かに君の言う通りだ。僕も、しっかりとグレゴリアスのことを見て、判断するよ!』


 領主のことを見極める。

 つまり、品定めするということだ。

 よくそんなことが言えるなと思った。

 他の普通の領民が言っていたら、殺されても文句言えないようなことだぞ。

 ただ、こいつを殺すとなると、今のところ俺の頭蓋を切り開くしかない。

 それは無理だから、プレイヤーは安全が確保されている。

 まあ、いつまでもこのままじゃないけどな。

 必ず本体を見つけ出して、後悔させてやる。


「ディオニソスよ。お前の活躍はしっかりと私にも届いているぞ。父として、とても誇らしく思う」

「もったいないお言葉です。父上もご壮健で何よりです」


 俺がそう言えば、父上はご機嫌そうに笑った。


「ほっほっほっ。ストレスなく生活するのが一番だな。少し気分が落ち込みそうになったときは、敵の人生をめちゃくちゃにしてスッキリするのだ。楽しいぞ?」

『はい、アウトー!!』


 うるせえ!




過去作『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』のコミカライズ第6話がニコニコ漫画で公開されました。

期間限定公開となります。

下記のURLや表紙から飛べるので、ぜひご覧ください。

https://manga.nicovideo.jp/comic/73126

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