第48話 ついにやってくれたのかい!?
王国に召集され国中を荒らしまわっていた賊をぶっ潰し。
帰ろうとしたらバカ王女に誘拐されて王都にまで引きずられ。
そこで近衛騎士のエースとかいう雑魚助が襲い掛かってきたので半殺しにし。
今、俺はようやくホーエンガンプ領に戻ろうとしていた。
だというのに、諸悪の根源である王女パトリシアが引っ付いてくるとかいう、クソ対応。
悪評のある俺と一緒に行動しようとするなや。
まあ、ホーエンガンプ領に帰る道が、パトリシアの向かう先と同じというだけだ。
明日には別々の道に行くから、今日までの辛抱。
そして、すでに最後の同行地点である街にも着いた。
もうしばらくは顔を合わせなくても大丈夫だと安心していたのだが……。
「恋バナしましょう、恋バナ」
「…………」
唖然としてしまう。
なんでこいつ当たり前のように俺の部屋にいるの……?
ベッドでゴロゴロしていたダイアナも硬直してしまっている。
……いや、お前もなんでいるんだよ。
金はあるだろ。自分の部屋くらいとれや。
……とか言ったら、ムダ金を使うのはとんでもないとか言うんだろうな。
そのために嫌いな俺と一緒に寝泊まりしようとするのだから、こいつの守銭奴は筋金入りだ。
まあ、こいつは最悪どうでもいいのだが、問題はパトリシアだ。
こいつがここにいて、俺のメリットとなることが何一つないぞ。
「スイセンはどうした」
「撒いてきましたわ」
「止めてあげろよ。結構でかい責任問題になるだろ」
護衛しなければならない対象を行方不明にしてしまった、なんてとんでもない失態だ。
一発アウト、間違いなくグスタフ王にばれたらクビだろう。
仮にパトリシアが傷つくようなことがあったら、処刑だな。
顔を真っ青……いや、真っ白にして必死に探し回っているスイセンが思い浮かぶ。
「大丈夫です。私は誰にも言いませんし、誰かが気づいたら私がかばうので。スイセンはとてもよくしてくれていますから、ちゃんと守りますよ」
「そこまで気を遣ってあげられるんだったら、俺にもそうしてくれない? 関わるなって言ってんだけど」
「そうは言いましても……。明日にはお別れしないといけないのですから、今だけでも楽しくお話したいです。次にいつお会いしてお話できるか分かりませんし……」
上目遣いに俺を見てくる。
それ、俺に効果があると思ってんの? 一切ないんだけど。
『こういうかわいいところを原作主人公以外にも見せるんだね……』
突然頭の中に住み着いてきたプレイヤーが、しみじみと呟く。
反吐が出そうになる感想だな。
お前は今まで何を見てきたの?
これのどこが可愛いのか言ってみろよ。
「あほか。だいたい、こんな夜更けに貴族の男のところに行っているってばれたら、最悪のスキャンダルになるだろうが」
「大丈夫です」
「俺が大丈夫じゃないんだけど。していないことで敵を増やすのは面倒なんだが?」
テメエの心配なんてしてねえんだよ。俺の心配をしてんだよ。
人気の高い王族であるパトリシア。
そんな彼女が、評判が悪い貴族である俺の元に、夜中会いに来ていたと周りに知られたら……。
ああ、マジでいいことが何一つない。
俺は一切悪くないのに、色々と俺のせいにされた悪評が立ちそうだ。
やれ弱みを握って脅迫しているだのなんだの……。
そんな危惧を、パトリシアはニッコリと笑って斬った。
「じゃあ、本当にしてしまいましょうか?」
「泥船に乗るつもりはないから」
「ひどいですね」
パトリシアに手を出すということは、俺が王族の味方をすることになる。
さすがに知らんでは済まされないだろう。
で、この国において王族は大して力を持っていない。
野心ある貴族もいるし、そいつらと敵対する羽目になる。
それ自体は別にいいのだが……そうなると、俺が全力で頑張っても、最後実を持っていくのは全部王族になる。
それは認められない。
阿呆ばっかりだったらなんだかんだうまくいけるかもしれないが、グスタフも自分の権威を守ることにかけてはなかなかずる賢いしな……。
「まあまあ。そうおっしゃらずに恋バナをしましょう。楽しいですよ?」
「恋していないからできねえわ、俺。ダイアナとしてくれ」
「っ!?」
『ナチュラルに押し付けたなあ……』
ベッドでゴロゴロしていたダイアナが、どうして裏切ったんですか!? みたいな目を向けてくる。
最初に裏切ってパトリシアの相手を全部押し付けてきたのはお前だろうが。
と、そんな時間を過ごしていると、荒い足音が近づいてくる。
ノックもなしに扉が開かれ、入ってきたのはスイセンだった。
……ここ、俺の取っている部屋なんだけど。
貴族の部屋に乱入してくるとか、マジで礼儀とマナーどうなってんの?
「殿下! こちらにいましたか! 勝手に行動するのは止めてくださいと、あれほど……!」
「どうしましたか? 随分と慌てているようですが……」
そりゃ、下手したら自分の首が物理的に飛ぶかもしれないんだぞ。ビビるし焦るだろう。
そんなスイセンは、汗を大量に流しながらも、冷静に口を開いた。
「襲撃です。現在、近衛が対応していますが、危険です。すぐに避難の準備を」
シルバーくん! ついにやってくれたのかい!?
とりあえず、俺はパトリシアを縛り上げて窓からつるしておくべきか……?
『絶対に真剣に悩んでいいことじゃないからね、それ』
第3章スタートです!
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『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第8話
https://magcomi.com/episode/2551460909829488747
『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第4話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg991556




