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守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話  作者: 溝上 良
第2章

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第43話 敵キャラを応援するな

 








 ガラガラと地面に崩れ落ちていくゴーレムの残骸。

 その破片は一つ一つがとても大きく、地面に落ちるたびに地鳴りと砂煙を巻き上げる。

 近くにいるとかなり危険であるが、ニックは身動きが取れないほどの衝撃を受けていた。

 自分の、文字通り力をすべて絞り出して作り出した巨大なゴーレム。

 城一つを落とせると確信できるほどのもの。

 それが、ディオニソスの剣の一振りで、粉々に破壊されてしまった。

 魔法や特殊な能力を使った形跡は微塵もない。

 つまり、あの男は単純に力で、暴力で、あのゴーレムを破壊せしめたのだ。


「――――――」


 観客はシンと静まり返っていた。

 多くを占める騎士たちは、目の前の光景が信じられず、呆然としていた。

 自分たちがあそこに立っていたらどうだっただろうか?

 おそらく、手も足も出ずに潰されていただろう。

 だが、ディオニソスはたった一振りでそれを覆してみせた。

 貴族だからと侮っていた者も多い。

 後ろでふんぞり返っているだけで、現場のことなんて知りもしないのが貴族だ。

 ディオニソスもそうだと多くが確信していたのだが、それがあっさりと覆された。

 そして、味方であるはずの私兵たちも黙り込んでいた。


「えぇ……。あの人、こんなやばいの……?」


 ドン引きしていた。

 ディオニソスがやべー奴であることは、その下についている自分たちはよく分かっている。

 しかし、ここまで圧倒的なのは想定外だった。

 キャッキャしているのは、忠犬マリエッタとニックにボコボコにされて恨みつらみだらけの私兵の男だけだった。


「さてと」

「ッ!?」


 ディオニソスが地面を踏みしめる音が、やけに耳に届いた。

 ゆっくりと歩いてくる男。

 憎たらしく、自分が最も嫌悪するべき男。

 彼は貴族であるがそれに対して恐怖を抱いたことなんてなかった。

 いつか痛い目に合わせてやる。

 そして、今日こそがそんな日になる……はずだった。

 だが、今どうなっている?

 自分はすべてを絞り出し、今にも倒れそうなほどに疲弊している。

 流れる大量の汗は、ブラフではない。

 一方で、ディオニソスはふざけた笑みを浮かべたまま、その足取りはゆるぎない。


「……は?」


 気づいたのは、自分の身体が後ろに下がっていたこと。

 意識的ではなく、無意識に。

 だからこそ、ニックはここで死んでしまいたいほどに恥ずかしくなった。

 敵に怯え、後ろに下がる近衛がどこにいる!?

 それに気づいているのか、それとも気づいていないのか。

 ディオニソスは、ヘラヘラと酷薄な笑みを浮かべながら口を開く。


「他に何かできるんだったら、やってもいいぞ。待ってやるよ。ほら、これって一応御前試合で、パトリシアも来ているからさ。一方的にお前をボコボコにするのも悪いと思ってな」


 ふざけたことを抜かすな! 私はまだ戦える!

 そう叫びたいのに、喉がつっかえて言葉が出てこない。

 すでに、本能が認めてしまっている。

 この男に、勝てないと。

 この男が、恐ろしいと。

 ニックは、のまれていた。


「お前の大好きな王族に、格好いいところを見せてやろうぜ。まあ、全部俺が押しつぶすんだけど」

「くっ、う……っ!」


 脚がガクガクと震える。

 それは、極度の疲労によるものもあるだろうが、何よりも……。

 目の前で笑っている男が、恐ろしかった。


「あ? ないの? マジか……。こんな規模にまで膨らませて、大貴族である俺の時間まで奪っておいて、この程度か……」


 はあ、と一つため息。


「近衛って、大したことねえな」

「お、おおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 それだけは、その言葉だけは許してはならない。

 ニックは恐怖を振り払い、猛然とディオニソスに襲い掛かって……。


「――――――」


 ディオニソスが剣を振った。

 とっさに構えた剣はへし折られた。

 身体を守っていた強固な鎧は、粉々に切り裂かれる。

 その衝撃で身体を支えきれなくなり、ニックの身体は面白いように飛んでいく。

 広場を囲っていた壁に衝突し、声もなく崩れ落ちる。

 誰もが黙り込む中、ディオニソスの気だるげな声が響いた。


「はい、終わり」











 ◆



 壁に激突し、崩れ落ちたニックを見る。

 うわぁ……。俺がやっておいてなんだけど、結構えぐいな。

 腕とか脚が変な方向に曲がっているし……。かわいそう……。

 ただ、ピクピクと動いているから、死にはしていないようだ。よかったね。

 そこで俺は、会場の空気が凍り付いていることに気づく。


「……え? 何この空気……。まるで、俺が何か悪いことしたみたいじゃん……」

『悪いことは全然していないんだけどね。……というか、ディオニソスってこんなに強かったってことを、改めて思い出したよ。ああ、そうだ。プレイしているときに、何度君に殺されたことか……』


 え、俺お前のこと殺せたの?

 それ、めっちゃいいじゃん……。


「しかし、どうするか……。とりあえず、もう帰っていいかな? 褒美もめちゃくちゃ搾り取ってから帰ろう」

『良いと思うよ。褒美のことを考えてキャッキャしているダイアナも連れて帰らないとね』

「関わりたくねえ……」


 さらに金銭が手に入ると知ってウキウキになっているダイアナが見える。

 当たり前のように俺の褒美を自分のものにしようとしているところが凄い。

 あんな妹いらなかった、マジで。

 パチパチと手を打ち鳴らす音が聞こえてくる。

 見れば、パトリシアが立ち上がって拍手をしていた。


「さすがです、ディオニソス様。とてもいい試合を見させていただきました」

「あい」

「褒美を差し上げましょう。何か希望はありますか? 何でも構いませんよ」

「ん? 今、何でもするって」

「言いました」


 俺の言葉を遮るように肯定してきた。

 何だこいつ……。失言だろ、もっと焦れや。

 王女が貴族に何でもするとか言ってんだぞ。大問題だ。

 実際、隣のシルバーくんが唖然としている。

 しかし、これは最大のチャンス。

 俺はその好機を見逃さず、心の底から望んでいる言葉を口にした。


「じゃあ、もう二度と俺に関わらないでください」

「ダメです」

「言っていることおかしくない?」


 絶対におかしいよね? 何でもするって言ったよね?


「…………ッ」


 凄い形相を一瞬だけ浮かべたシルバーの顔を、俺は見逃さなかった。

 何か勘違いしているようだ。

 まさか、パトリシアと俺が仲良く見えていたのだろうか?

 だとしたら、頭部に強い衝撃を与えてまともなものに戻さなければならないが……。

 俺は君を応援するぞ、シルバーくん!


『敵キャラを応援するな』




過去作のコミカライズ最新話が公開されました。

期間限定公開となります。

下記のURLや書影から飛べるので、ぜひご覧ください。


『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第7話

https://kimicomi.com/series/eb41931417e85

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