第36話 大賛成ですわ!
「で、何しに来たの? お前、貴族でもないのにどうやって王城に入ってこられたんだよ」
二度と会うことはないと思っていた、自殺志願者の顔を見る。
こいつ、不法侵入者か……?
衛兵は何をやってんだ。早く捕まえて殺せ。
「フレイヤに付き添ってきたんだ」
「は? なんで……って、ああ……」
フレイヤって、誰の事……?
と思ったが、オオトリと一緒に女貴族がいた。
完全に忘れていたが、ふと思い出した。
「何かありましたの?」
「こいつ、戦場で何を思ったのか、パトリシアに襲い掛かったんだよ」
「そんな……死にたいんですの……?」
「ち、ちがっ……!」
唖然とするダイアナ。
力がないとはいえ、依然この国では王族は最高の地位にある。
それを殺すとなると、かなりの反骨精神だ。ブラボー。
「ただ、俺たち兄妹は全力で応援するぞ」
「金銭支援も躊躇しませんわ」
「違うって言ってんだろ!!」
誰かパトリシアを殺してくれるのであれば、俺は心の底から、一切の邪念なく応援することだろう。
ダイアナも、決して他者に融通しようとしない金まで出そうとしている。かなり本気だ。
だが、どうにも女貴族はしないらしい。
何だよ。役に立たねえな。
「あれは、敵の強力な魔法によるものだ。僕もそれを証明するために、こうしてやってきた」
「あっそ。じゃ」
「ま、待ちな! あんたたちもあたしがそんなつもりじゃないと進言してくれたら、少しでも力に……」
ひらひらと手を振って去ろうとすると、フレイヤが呼び止めてくる。
予想外の言葉に、俺は驚かされる。
「え、嫌だけど?」
「なっ……!」
いや、何が「なっ……!」だよ。
全然当たり前の返答では?
「お前があの戦場でパトリシアに剣を向けたのは事実だろ。で、お前は敵の魔法にかかっていたと言うが、実際に魔法をかけられていたかどうかなんてわからねえし」
「貴族のあたしが、王族に敵対するはずないだろ!」
「え、あ……うん……」
俺は多分、必要あったら全然敵対するんだけど……。
え、違うの? 俺も貴族なんだけど、貴族って王族に歯向かわないの?
そんなことないよなあ。だって、謀反から興った国なんて、いくらでもあるだろうし。
「あと、お前俺のこと嫌いだろ。そういう態度を取っていた。だというのに、いざ自分が危険な状態にあるとなったら、そいつに助けを求めるのっておかしいだろ。情けなくないの?」
「くそ……っ!」
とりあえず、煽っておく。
他人が何も言い返せない状況で好き勝手言うの、最高だな!
追い打ちでもかけてやろうかと悩んでいると、フレイヤの元にオオトリが近づく。
「……フレイヤ。彼に頼る必要はないよ。僕が全力でサポートするから」
「オオトリ……」
「へえ。お前だったら、どうして助けないんだ! とか言うと思ってたわ」
何だか意味の分からない正義感を持ち合わせているみたいだし、性格からすると本当に言いそう。
しかし、オオトリは複雑そうな顔をしつつも、俺を糾弾することはなかった。
ちょっとまともなところ見せてくるの、止めてくれる?
「……そう言ってやりたい気持ちはあるけどね。ただ、君の言っていることも一理あるし」
……この前遭遇したばかりの男だが、一理あるとか言えるんだ……。
というか、俺の言っていることが百理だろう。
なんでちょっと俺が間違っているみたいな言い方してんの?
「というか、そもそも殺戮皇とか言われている貴族の言葉に、説得力とかないと思うし」
「殺すぞ」
しかし、これから誰に弁明しに行くのかね、こいつらは。
王城にいるってことは……下手したらグスタフか?
あいつ、相当面倒くさい王だから気を付けた方がいいぞ。
許されずに処刑されるか、あるいは許す代わりに何か面倒事を要求されるかの二択だ。
ひょえー。絶対に俺は嫌だね。
まあ、忠告もしてやらんが。
「さて、僕たちはもう行くよ」
「おう。二度とその面見せんなよ」
「僕は、君のやり方を否定している。また君が性懲りもなくあくどいことをしていたら、僕は君の前に立ちはだかることだろう」
「あっそ。じゃ、その時は俺に殺されて死ね」
「そんな簡単にはやらせないけどね」
ああ言えばこう言うな、この野郎。
というか、いつまで俺にため口なの? 死ねよマジで。
不敵な笑みを浮かべながら、オオトリは消えて行った。
フレイヤ共々死刑になってくれ。
「ふー……」
鬱陶しい奴が消えた後、一つ息を吐いて、ダイアナに提案した。
「よし、ダイアナ。帰るか」
「大賛成ですわ!」
「――――――何が賛成ですか?」
もろ手を挙げた状態で、ダイアナが硬直した。
振り返れば、にこやかに笑うパトリシアの姿があった。
俺はそれに対して一切動揺せず、余裕を持って穏やかに答えた。
「こいつがお前が怖いから逃げたいって言ってたんだよ。俺は、それはダメだってちゃんと言い聞かせていたところだ」
「!?」
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『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第3話
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『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第31話
https://unicorn.comic-ryu.jp/11327/
『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第7話
https://magcomi.com/episode/2551460909829488747




