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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~  作者: 溝上 良


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第3話 え、きつ……

 










「いきなり何を意味わからねえこと言ってんだお前は」

『確かに意味は分からないだろうけど、死ねは酷くない!?』

「ひどくない。いきなり人の頭でギャアギャア騒いでいるお前がひどい」


 マジで目の前に現れてほしい。殺すから。


「だいたい、顔も名前も知らないお前に、いきなり助けに来たとか言われて、素直にありがとうと言うわけねえだろ。罠か?」

『いや、確かにそうだけど……』

「そもそも、俺は訳の分からん奴に助けを求めるほど困ってねえし」


 それこそ、本当に助けを求めている奴らなんて、この世界にいくらでもいるだろう。

 需要があるのはそっちなんだから、優先的にそっちを助ければいいのだ。

 俺は基本的に自分のことは自分でできるしな。

 だというのに、どうして困っていない俺を助けようというのか。

 意味が分からない。


『いや、今じゃないんだ。ただ、このままいくと君は主人公に討伐されるから……。だから、できる限りカルマ値を悪化させないようにしてほしいんだよ』

「……今の言葉だけでも分からんことしかないわ。主人公? カルマ値?」


 さっきから呪文のように理解できない言葉を吐かれるので、余計にイライラしてくる。

 しかも、今ではなく将来困るって……。

 詐欺師がよく使いそうな言葉だ。

 未来のことなんて、誰にも分からない。

 その分からないことで他人を不安にさせて食い物にしようとか、俺に通じるわけないだろうが。殺すぞ。


『えーとね、説明するね。別に隠すことでもないと思うし、隠せとも言われてないから』


 脳内でいきなり喋り出した異生物は、そう言って解説し始める。











 ◆



 えーと、つまりお前が言いたいことは……。


「この世界はお前のいた世界だとリョナグロ鬱ゲーとかいう創作の世界で」

『うん』

「その中で俺は外道極まる悪役で」

『うん』

「主人公とかいうやつに正義の名のもとに切り捨てられて死ぬ役で」

『うん』

「お前はそのゲームのプレイヤーの一人で、その未来を変えようと創作の世界に送り込まれてきたと」

『うん、完璧』


 なるほどなるほど。

 俺はうんうんと頷きながら、閉じていた眼を開く。


「どこが完璧だぶっ殺すぞ!!」

『えぇっ!? なんで!?』

「なんでもクソもあるか!!」


 こいつ、頭がおかしいんじゃねえか!?

 いや、こんなのが脳内で好き勝手している俺の方がやばいか。

 何だ? 呪いの類か?

 だとしたら強力すぎるだろ。

 誰だ、こんなことをした奴は。出てきなさい、怒らないから。殺すけど。


「まず、なんだリョナグロ鬱ゲーって!」

『いやー、すっごい主人公のヒロインとか味方とかが死ぬんだよね。しかも、凄惨な殺され方とか多くて。ひたすらプレイヤーの気持ちを貶めることしか考えていないんじゃないかってくらいの作り方だよ』

「意味わからん」


 ヒロイン? プレイヤー?

 この男とも女とも取れない中世的な声は、プレイヤーとかいう奴の一味なのか。

 何だか知らんが、こいつが喜ばないようなことが起きてくれているならいいや。


「まあ、俺が悪役だっていうのは別にいい。正義の味方みたいなことをしたことなんて、生まれて一度もないし」

『善行を人生で一回もしたことないって胸を張って言えるのは、さすがディオニソスだ! クズい!』

「……まあ、俺の名前を知っているのはもういいや。訳の分からんことを言っているのは知っているし」


 あと、割と俺のことをバカにしているよな、こいつ?

 実体ないのかなぁ……。あったら見つけ出して殺せるのに……。

 さすがに自分の頭蓋を切り開くのは嫌だ。

 実体がなかったら死に損だし。


「だいたい、俺がそこらの奴と戦って負けるわけないだろ。バカか?」

『確かに君はとてつもなく強かったよ。でも、結局主人公が途中で負ける創作って、ほとんどないんだよね。リョナグロ鬱ゲーのこれも、さすがに主人公が勝ったよ』

「あっそ」


 へー。俺、負けるのか。

 まあ、俺だって人間だし、殺されたら死ぬわな。

 その主人公くんがどんな手段を用いて俺を殺したのかは知らないが、ちょっと楽しみである。

 そんな俺の反応を見て、異生物――――プレイヤーは、驚いたような声を発する。


『……自分が負けるって聞いても、全然変わらないんだね』

「信じていないってわけでもないんだがな。どういうわけか、こうして俺だけに聞こえる声で延々と喋っているし」


 プレイヤーの言う通り、俺は負けるという未来もあるかもしれない。

 しかし……。


「ただ、俺は負けねえよ。俺は自分を信じているからな」

『おぉ……』


 簡単に負けてやるつもりは毛頭ない。

 今まで危ないと思ったことすらないんだ。

 むしろ、楽しみだ。

 どんな戦いができるんだろうな。

 ……と、それよりも気になることがある。


「もっと分からないのは、その悪役の俺をなんで助けに来た、なんて言えるんだよ。普通、嫌われるだろ」


 そう、こいつは俺を助けに来たと言った。

 なぜ俺を助けに来たのか。

 こいつの世界でも、俺が善人として描かれてはいなかったらしい。

 そして、実際の俺もそうである。

 人殺しを平気でするような悪人を、どうして助けてやりたいと思うのだろうか?


『まあ、確かに君はゴミクズクソ野郎だよ。やっていることも、最低極まりない』

「言いたい放題だな、ゴミ」

『でもね……』


 好き勝手言うプレイヤーにイライラする。

 本体を見つけたら、絶対にコロシテヤル。

 そんな風に考えていると、プレイヤーは大きく声を張り上げた。


『僕は、そんなディオニソスが好きなんだ!!』

「え、きつ……」

『えぇっ!?』




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