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殺戮皇の悪しき統治 ~リョナグロ鬱ゲーの極悪中ボスさん、変なのを頭の中に飼う~  作者: 溝上 良


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第2話 は? 死ね

 










 これは、俺が異生物に住み着かれるときの話だ。











 ◆



 今日も元気に拷問タイムである。

 拷問施設の一部屋。

 常人なら一秒たりとも過ごしたくないと思えるような、劣悪な環境。

 不衛生だし、湿気は凄いし、冷たいし、硬い。

 そんな生活するのに最悪の条件をとりあえず詰め込んだような場所が、拷問部屋である。

 まあ、快適に過ごさせるのが目的じゃないしな。

 そんな拷問部屋は、今日も大盛況だ。

 俺がやってきたことで、拷問官もウッキウキで頑張っている。

 そのような姿を見ていると俺も参加したくなってくるので、一人を相手に頑張ってみた。


「も、もう許してください……! 知っている情報は、全部吐きました……! だから、もう……!」


 その結果が、目の前で色々と折れた様子の全裸の男である。

 血だらけで、身体の一部も欠損している。

 仕方ないね。こいつ、俺たちの領地を荒らす賊だから。

 同情する余地がまったくない。


「バカ言うな。お前、それだけ喋れるほど元気が有り余っているんだろ。素晴らしいじゃねえか。まだまだいけるよ。良い反応、してくれよな」

「ほ、本当にこれ以上は何も知らないんです! だから、解放してください!」


 よーし、次はどんな器具を使おうかなー。

 そんなことを考えながらガチャガチャとあさっていると、顔を真っ青にして訴えかけてくる。

 その顔色は、恐怖からか、あるいは血が抜けすぎたのか。

 どっちでもいいことだが、問題はこいつの言った言葉だった。

 俺は助ける意味も込めて、もう一度問いかける。


「あー……本当に何も知らねえの? どんな些細なことでもいいんだぞ?」

「し、知らない! 何も知らないんだ!」


 ブンブンと激しく首を横に振る賊。

 あーあ、最後のチャンスも無駄にしちゃったねぇ……。


「バカだなあ、お前。俺、わざわざ助け船を出してやったっていうのにさ」


 俺は賊を嘲笑する。

 バカなんだな、お前。俺が親切にも助けてやろうとしたのに、少しだけだが。

 でも、まあバカじゃなかったら賊をやらないし、何なら俺たちの領地にまで入ってこないよな。

 俺は拷問器具を放り投げて、賊に言う。


「よし、じゃあ殺すか」

「…………え?」


 ポカンと口を開ける賊。

 ……え? 自分の言ったことの意味を理解していなかったの?


「いや、『え?』じゃねえよ。お前、賊だろうが。聞くことがなくなった賊なんか、生かしておく意味ないだろうが」


 まさか、解放されるとか本気で思っていたのか?

 するわけねえだろ。また同じことするだろ、お前。

 別に他所の領地で好き勝手やっているのはどうでもいいんだけどさ。

 そこで人を殺そうが財物を奪おうが、俺は関係ないし。

 でも、俺らの領地でそんなことをするのはダメだよなあ。

 当然、死刑である。

 懲役刑? 禁固刑? そんなものはないですね……。

 生かしておくだけ無駄だし。


「そ、そんな……! 俺、知っていることを話して協力したのに……!」

「お前、それ協力とか偉そうに言ってんじゃねえよ。お前らが暴れまわって、どれだけこっちに迷惑がかかってると思ってんだ。お前らが好き勝手人を殺して財物を奪うから、税としてこっちにも上がってこねえんだよ。ぶっ殺すぞ」


 領民を傷つけられて、結局迷惑をこうむるのは支配階級である俺たちである。

 ふざけんなバカ。俺に迷惑かけてんじゃねえよ。

 そんな俺の決定を聞いて、賊は声を張り上げて俺を罵倒する。


「こ、この殺人鬼……! 殺戮皇!!」

「はいはい。まあ、何でもいいんだけどさ。じゃあ、とりあえず死ねや」


 そんな安っぽい罵倒で、俺が傷つくとでも思っているのだろうか?

 ノーダメである。まったく心に響かない。

 ……嘘だ。殺戮皇っていう二つ名だけ何とかしてくれ。恥ずかしいから。

 このまま生かしておいても恥ずかしいことしか言ってこないだろうから、さっさと殺すことにする。

 そこらへんにあった適当な鈍器を手に取り、頭蓋を破壊しようと振り上げ……。


『待ったあああああああああああああああああああ!!』

「うおおおおおおおおおおおおおお!?」


 脳内に響き渡る中世的な声の絶叫に驚き、それを落としてしまった。

 誰だ、こんな元気に拷問を受けているバカは!?


「な、何だ!?」

「閣下? どうされたんです?」

「い、いや、俺にもわからねえんだけど……」


 怪訝そうに俺を見てくる拷問官の部下。

 何か、お前の仲間に張り切っている奴がいるんだよ。分かるだろ、この声で。


『ダメだよ、殺したら! 君のカルマ値がまたどんどんと悪化しちゃう!』

「はあ? カルマ値? 何言ってんだお前。というか、誰だよテメエ」


 やけに明瞭に声が聞こえてくる。

 この拷問施設、密閉しているから割と音が響くんだけど、そういうのもない。

 あと、訳の分からないこともペラペラと喋っている。

 鬱陶しいな、これ。

 そんな俺を見て、部下がヘラヘラと笑いながら問いかけてくる。


「閣下、独り言っすか? にしてはでかいっすよ」

「は? お前は聞こえてねえのか?」


 こんな耳障りでうるさいのに、聞こえていない?

 俺が呆然として部下を見ると、そいつも俺のことを絶望の表情で見ていた。


「……ちょ、不気味なこと言うの止めてくださいよ。俺、そういうのダメなんですから」

「さんざん人を殺しておいて、今更何言ってんだテメエ」


 拷問官が幽霊を怖がるとか、何の冗談だ。

 仕事向いていないじゃん。辞めたら?


『とにかく、殺すのはダメなものはダメなんだからね』

「うるせえ!!」


 ギャアギャアと騒ぐ意味の分からない声に苛立ち、それを賊にぶつけた。

 そう、物理的にである。

 見事に頭がブレイクして見れたものではなくなり、絶命する。


「お、ナイスです!」

『あああああああああああああああああ!!』

「だからうるせえ!!」

「えぇっ!? 誉めたのに!?」


 褒めていたの?

 意味の分からない声がうるさすぎて、まったく聞こえなかった。

 というか、俺にしか聞こえないってどういうことだ?

 マジで幽霊とか、そんなのか? 殺すぞ。


「ああ、お前のことじゃ……面倒くせえな! 俺はちょっと休むから、適当に残りの奴で遊んでろ!」

「りょ、了解です」


 部下を置いて、拷問施設を出る。

 誰も周りにいないことを確認して、俺は声を出した。


「で、何だお前。幽霊か? 魔物か? 俺に何の恨みがあるっていうんだ」

『恨みは方々で大量に抱えているよね、君』


 心当たりはありすぎる。

 だから、誰か分からないから聞いているんだよ。

 人を殺したこともあるし、魔物も殺したこともある。

 ……逆恨みか?


『でも、僕は君を懲らしめるとか、そういうつもりで来たわけじゃないんだ』


 声はそう言って、告白するかのように強い声音を発した。


『僕は、君を助けに来たんだ!』

「は? 死ね」

『死ね!?』




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