第4話 祭り
香子は、一鬼に連れられてお祭りの様子を見学する。
鬼の国の住民は少なく、家の数も少ないと一鬼に説明される。
これでも大勢だと言われるが、香子には祭に集まる鬼たちの数は少なく感じられた。
鬼には人の額にはない角があったが、見た目は人とあまり変わりがなかった。
ひとしきり歩くと、香子に好奇心旺盛な子供達が話しかけてきた。
「人間のお姉さんだ!」
「本物だ!」
「角がない!」
彼らの話から、やはり人間と鬼の違いはそうないのだと香子は分かった。
そこに一鬼が補足する。
鬼は人より体が頑丈で、肌に炎が触れても燃えないのだと言う。
それに鬼火という特殊な力を使って、炎を生み出す事もできるのだった。
「見せてあげる!」
子供達は得意げに小さな鬼火を香子に披露した。
加えて、鬼族のものには、白い角と黒い角の物がいるのだと知ったのだった。
話し掛けてきた鬼の子供も、白い角と黒い角の二つの色だった。
鬼が出す鬼火は、角の色に応じた色になるのだという。
それから数分後。
香子と一鬼は、人気のない場所へ向かった。
歩き疲れた香子をベンチで休ませてから、一鬼が飲み物を買ってくるためにその場を離れた。
するとそこに桃鬼という女性が現れる。
桃鬼は一鬼の幼馴染だったが、彼に対抗心を燃やしていた。
一鬼が次の国の長に決まっていたが、桃鬼にも長になるチャンスがあるのが原因だった。
だから、一鬼よりもすぐれた点を見せようと努力していたのだ。
しかし、何をやっても一鬼に及ばない桃鬼は、自分の力を高めるよりも、相手の評価を下げることに腐心するようになる。
そのため桃鬼は、一鬼が保護した人間の女を排除しようと考えていた。
そうすれば保護者である一鬼が責任を追及され、長になりにくくなると考えたのだ。
そんな桃鬼は、香子に告げる。
「一鬼は人を食った事がある鬼よ」と。
「一鬼は黒い角の鬼。黒い角の鬼は人間を見ると食べたくなる呪いがかけられているの」
だから、死にたくなかったら一鬼から離れて私の庇護かに入りなさいと続ける。
手を差し出す桃鬼だが、香子は一鬼を信じる事に決め、誘いを断った。
香子の答えを聞いた桃鬼は、悔し気な顔をしてその場を去った。




