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厄災の王女の結婚~今さら戻って来いと言われましても~  作者: 春風由実
第一章 厄災の王女

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37.変われないもの


 集団にあると人は気が大きくなるのか。

 それとも先にある破滅を認めて、ここで黙る意味を見い出せなくなったか。


 おそらくは前者だろう。

 一人が発言すれば、そこかしこから声を上げる者たちが出た。


「夫人も夫人だ。立場を弁えもせずに夫を陥れ、あげく他家まで巻き込んで自滅するとは」


「所詮あの程度の娘しか育てられん女だ。貴族夫人として弁えられていないのだよ」


「後継ぎの嫡男も産めなかった無能な女だからな」


「娘もこれでは、婿に乗っ取られていたであろう。あの家はもう終わりと決めての狂乱か」


「生家は子爵家だったな?躾けて嫁がせられずに可哀想なことだ」


 すべてが壇上にも届く声量での発言である。

 しかしどれもこれもが、ゼインらからは見えないところから発した声だった。

 集団の中に身を隠せば、個として特定されないとでも思っているのだろう。


 その想像はあまりに浅慮。


 会場には多くの騎士がいるし、給仕役としての城務めの者たちもある。

 広い会場において目の届かぬ場所がないようにと完璧に計算されたうえで配置された彼らが、誰に直で雇用された者たちか、貴族たちには分からないのだろうか。


 だからどれだけ人に紛れようとも、何人たりともこの場では隠れることが出来ない。


 それが直接面会しての報告ではないとしても、彼らは必ずや王へと報告を上げてくるのだ。

 城で働きここに配備されている時点で、誰が誰かを完全に理解した彼らが、貴族たちを誤認することもなく、それは正確な情報として。


 尋問において、夫人が提出した証拠のみならず、ここでの発言についても問われることになるだろう。

 しかし愚かなる貴族らはすぐ先に確実にある未来には考えが至らないようで。


「あの夫人だけの問題ではないと思うぞ。前々から戦後になって女子どもが驕っているように感じていたのだ」


「それはある。我らと長く離れ、安全なところで守られていたせいで、世の道理も分からなくなっているのだろう」


「誰のおかげで戦争に勝てたのかも分かっていないのであろうな」


「貴族でいられる理由も忘れたのではないか?」


「ようやく平時だ。今後は徹底して教育しようではないか」


「賛同する。躾けはより厳しくした方が良さそうだ」


 頼まれずとも勝手に発言してくれるおかげで、彼らをこの城から出さない理由が積み上がっていく。

 しかしこのまま自由な発言を続けさせていても、ゼインの威厳が落ちてしまうだろう。


 そろそろいい頃合い。


 しかもゼインは。



 ──フロスティーンを早々に下がらせるべきだったな。



 醜い言葉がフロスティーンの耳を穢していることに気付き、憤りはじめていたのだから。







読んでくれてありがとうございます♡

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