短編小説 『ドッペルゲンガーと絆』
俺とアイツは親友だ。けど、どちらかが、ドッペルゲンガーなら...
ドッペルゲンガーと絆
俺は、ごく普通の高校生だった。
…いや、今でも"普通"なのかもしれない。
けれど、あの日を境に、俺の人生は大きく変わった。
出会い
それは、いつものラーメン屋でのことだった。
昼飯を食べていると、不意に隣の席から声をかけられる。
「君、前にも会ったことない?」
顔を上げると、そこにいたのは——俺だった。
「…あぁ、あの時の?」
「そうそう!僕たち、すごーく似てない?」
驚きはしたが、不思議と恐怖はなかった。
むしろ、話せば話すほど気が合い、趣味も、嫌いなものも、何もかもが一致した。
「連絡先、交換しようぜ!」
そうして、俺たちは友達になった。
…いや、それどころか、すぐに"親友"と呼べる関係になった。
青春の日々
親友の家に泊まりに行った。
ゲームをしたり、勉強をしたり、夜遅くまでくだらない話をした。
「そういえば、昨日やってた恐怖映像、見た?」
「見てないな。どんなの?」
「ドッペルゲンガーの話さ」
彼が語った内容は、こんなものだった。
ドッペルゲンガーに会った者は死ぬ
ドッペルゲンガーには意思がある
記憶が奪われることがある
襲わなければ、どちらにも異常が起こる
ドッペルゲンガーは必ずしも凶暴ではない
殺し合いが、最も重要な解決策である
「俺たちは大人になっても、親友でいられるのかな?」
そんなことを呟いた彼の言葉が、なぜか心に残った。
違和感
それから一ヶ月後——彼が転校してきた。
しかも、俺と同じクラス、隣の席。
最初は気まずくなるかと思ったが、そんなことはなかった。
授業が楽しくなり、班活動も最高だった。
バイトも一緒で、同じミスをして叱られた。
これが青春ってやつなのかもな。
そう思った。
…だが、その日々は長くは続かなかった。
いつしか、俺は自分の記憶が曖昧になっていることに気づいた。
好きだったもの、苦手だったもの、昨日何をしたのか——それらが徐々に霞んでいく。
病院で診察を受けたが、異常はなし。
ある日、鏡を見ると、俺の手が透けていた。
…いや、親友も、同じ現象が起こっている。
「これって…まさか…」
偶然ついていたテレビの中で、再び"ドッペルゲンガーの症状"が語られていた。
親友からのメッセージが届く。
『君って、もしかしてドッペルゲンガー?』
「はぁ? もし俺がそうなら、お前は死んでるだろw」
軽く流したが——俺も、同じことを考えていた。
俺は、本当に"俺"なのか?
決断
「会おう。明日。」
「もちろん。俺も話したいことがある。」
場所を決め、俺たちは対峙した。
「なるほど、やっぱりな。」
「やっぱり?」
「何となく察してたよ。で、問題は——どっちが"死ぬ"か、だよな。」
「…そんな簡単に決めるなよ。」
「俺も記憶がない。家族がいたはずなのに、それすら曖昧になってる。」
「俺もだ。どちらも本物なんだよ。」
沈黙の末——俺は決意した。
「殺し合おう。」
お互いにナイフを手に取る。
そして、約束を交わした。
「学校でやる。」
「いいね。人がいないから都合がいい。」
明日、俺かアイツのどちらかが"消える"。
勝った方が、本物として生き残る。
真実
——そして、決戦の日。
チャイムの音が鳴り終わると同時に、俺たちは動いた。
刃が振り下ろされた。
僕は血飛沫を上げながら、荒々しく倒れ込む。
『楽しかったな...』
???「フフ…見事だね。実験は成功だ。」
静寂を破り、白衣の男が現れた。
「お前が黒幕か。」
『...計画通りだぜ!』
俺たちは、殺し合わなかった。
俺たちは倒れ込む"演技"をし、血糊を使い、どちらかが"死んだ"ように見せかけた。
「バカな…! なぜ殺し合わなかった!? そんなはずは…プログラムは作動しているのに…!」
「俺たちはお前の実験体なんかじゃねぇ。俺は俺だ。」
「俺もテメーのおもちゃじゃねぇぜ!」
科学者は焦った様子で後ずさる。
「君たちはデータから作られた複製体だ。本物など存在しない。どちらも、ただの"コピー"に過ぎないんだ!」
「だったら——」
俺はアイツと視線を交わし、同時に言った。
「俺たちがどう生きるかは、俺たちが決める!」
俺たちは科学者を逆に追い詰め、施設のシステムを乗っ取り、ついに自由を手にした。
俺たちの記憶は偽物かもしれない。
けれど、過ごした時間、絆、それは間違いなく"本物"だった。
——俺たちは、俺たちとして生きていく。
彼らが見てきた物。それは...