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 配信を終え、空間魔法で借りているマンションへと戻ると、麻耶、流花、凛音たちの姿があった。

 リビングにいた彼女たちは皆魔力の訓練をしているようだ。


 いつもはここに玲奈もいるのだが、彼女は迷宮に潜っていることが多い。

 夏休みだ。それぞれ自由にやりたいことをすればいいだろう。

 そんなことを考えていると、俺に気付いた流花が真っ先に声をかけてきた。


「配信お疲れ様」

「まあ、何もなかったけどな」

「今日もいつも通りののんびり迷宮攻略でしたね……」


 凛音の言葉にちらとリビングに置かれていたモニターへと視線を向ける。

 そこには配信サイトが映っていて、恐らくそこで三人は俺の配信を見ていたんだろう。

 そんなことを考えていると、麻耶がぐっと親指を立てた。


「今日もお兄ちゃんかっこよかったよ」

「そうか?」


 麻耶にそう言われるだけで俺はまた配信をしてもいいか、という気持ちになってくる。

 ひたすら麻耶の言葉を脳内で再生していると、凛音が照れた様子で頬をかいた。


「……そ、そうですね。お兄さん……その……かっこ良かったです」

「ああ、そうか? ありがとな」


 凛音に関してはお世辞か冗談も含まれているだろう。

 麻耶ももしかしたら本心ではなかもしれないが、俺としては麻耶の真意など関係なく、ただ彼女の発言が大事だ。


「うん……迅さん、凄かった」

「はいはい、ありがとな」

「……なんか、流されてない?」

「……私も、そんな風に感じたんですけど」


 流花と凛音がジトリと見てくる。

 ……あまり表に出さないようにしたつもりだったが、どうやらバレてしまっていたようだ。


「いや、別にそうじゃないけどな」


 世間話の中でかっこいい、というくらいの会話は別におかしくはないからな。

 流している、というか日常的な会話に相槌を打ったような気分だった。

 というか、二人だって別に大して意識した発言ではないだろう。


「そうだったお兄ちゃん。私たち、夏休みを利用して迷宮攻略をしたいって話してたんだけど、何か手ごろな迷宮ないかな?」

「え? マジで?」

「うん。せっかく時間があるんだし、今できることをしたいって思ったんだよね」


 ……なんて向上心の塊なんだ麻耶はっ。

 彼女のひたむきな心に感涙しそうになっていた俺は、凛音のぼそりとした声を耳にする。


「できれば、私たちもまずは玲奈さんに並べるくらいにはなりたいと思いまして」


 ……凛音もいつの間にかかなり上を目指すようになっているな。

 玲奈だって、あれでSランク冒険者なのだからそう簡単に並べるものではないんだがな


「うん。あと、美也さんも入れての四人で活動したいと思ってたんだけど……どう?」


 有原か。

 確かにこの四人だと皆似たような冒険者ランクだ。

 有原が三人よりも少し劣っているが、そこはまあ彼女の負けず嫌いな性格があれば大丈夫だろう。


「玲奈はいないのか?」


 お兄ちゃんとしては、そこがとても心配である。

 皆に何かあった時に誰が守るのだろうか? 麻耶にもしものことがあったらと思うと不安で仕方ない。


「うん。ほら、玲奈ちゃんいたらやっぱり安心感があるから……冒険者ってそういうことばかりでもないでしょ?」

「………………そうだな」


 麻耶の……いう通りでもある。さすが、世界一カワイイ麻耶なだけあり、その思考能力もさすがだ。


 高ランク冒険者が近くにいれば、安全に狩りができる。だが、それだと独特の緊張感はなくなってしまう。

 頼れる人がいる、となるとやはり感覚的に違うものだ。


 その緊張感も、成長には必要なものであるため……確かに麻耶の発想は天才でグレートなものなのだが……お兄ちゃんはやはり心配なのだ。


「お兄さん、複雑そうな表情ですね」

「……まあな。もしものことがあったらと思うとな……」

「迅さん……そこまで、心配しなくても大丈夫」


 少し照れた様子の流花に、俺は小さく頷く。


「まあ、もしものときは凛音が超魔力で麻耶を守ってくれるよな……」

「私への期待が凄いところですが…………って心配するのは麻耶さんだけなんですか?」


 凛音がむすーっと頬を膨らませてこちらを見てくる。

 見れば、流花も似たような表情でじっと見てきていた。

 さすがに、そういうわけではない。


「いやいや。一番は麻耶が心配だけど三人共心配だからな? 皆に何かあったらさすがに俺もへこむからな。当日まできちんと訓練はするぞ」


 全員の戦闘力が上がれば、それすなわち麻耶の安全にも繋がるからな。


「…………う、うん」

「…………わ、分かってますよ」


 凛音と流花はどこか頬を赤らめながら頷いた。

 とりあえず、迷宮攻略かぁ。

 四人で行くとしたら、Dランク迷宮くらいか? いやでも、流花と凛音ならCランク迷宮でも大丈夫だろうし……うーん。

 色々と考えていると、麻耶と目があった。

 彼女はどこか満足げな表情でぐっと親指を立てた。


「麻耶、どうしたんだ?」

「お兄ちゃん、なかなか良い返しだったよ」

「ん? ありがとな」


 麻耶の言葉の意味は分からないけど、お兄ちゃんとしては褒められただけで嬉しかった。



新連載始めました! よかったら読んでください!


ゲームの悪役キャラに転生した俺が、裏でこっそり英雄ムーブで楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった

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