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ホワイトデーはアンラッキーデー

作者:
掲載日:2023/03/14

 私は恋多き女である。

モテて仕方ないとかそういう自慢ではなく、ただ単に惚れっぽいだけだ。むしろ可愛くもないし全くモテない。そして何故かホワイトデーにフラれまくる星の下に生まれた女なのだ。実際、思い返せばここ五年はホワイトデーにろくな思い出が無い。

 まず五年前、中一の私は、幼馴染の優太に告白した。慣れないながらも一生懸命にチョコを作り、部活帰りの優太を捕まえて渡した。「ずっと好きだったから」と言って渡した。一か月後、「俺も好きだぜ」と、ニカッと笑った優太が渡してきたのは、目のついた巻きグソ型のチョコレートだった。私の長いながい初恋が終わった。あとこいつはこういう奴だった。

 四年前には、優太への失恋から立ち直り、クラスの人気者の男子にチョコを渡した。彼はホワイトデーまでの期間、「断る場合にもホワイトデーって何か渡すの?」と、友人に聞き続けた。お陰で一か月間、登校前の吐き気が止まらなかったし、当日は「ごめん、付き合えない。けどこれあげる」と、ラングドシャをくれた。吐き気は止まったし、百年の恋もとうに冷めていたが、ラングドシャが大っ嫌いになった。

 三年前は、直接渡すのが恥ずかしくて、意中の人のロッカーに手紙を添えたチョコを入れた。そして一か月後、今度は私のロッカーに「放課後、〇〇公園で待っています」という返事が届いた。舞い上がる気持ちを抑え待ち構えていると、全く違う人物が来た。どうやら間違えて隣のロッカーにチョコを入れたようだった。無関係の彼には、しっかりフラれた。

 二年前にチョコを渡した男子は、頬を赤らめて「ありがとう。ホワイトデーにはお返しをするね」と微笑み、メッセージのやりとりをしたり、一緒に下校したりと、面映ゆい日々が始まった。一か月間、まさに人生初めての春だった。しかしホワイトデー当日、「一か月頑張ってみたけど君を好きになれなかった。ごめん」と辛辣な言葉でフラれた。あの時の衝撃と絶望といったらなかった。

 一年前にはそろそろ学習し、バレンタインデーに告白するのを止めた。卒業式の後、一つ上の先輩に告白して、「え? 俺早苗と付き合ってるけど? 同じ部活だよね、お前ら」とフラれた。私のハートだけでなく、友情にも罅が入った。奇しくもそれは三月十四日であった。

 そして今年も三月十四日がやって来た。今年は、誰にも恋していないし、誰にも告白していない。だからさすがにフラれるわけがない。しかし近年の傾向を見るに、今日はどう考えてもアンラッキーデーだ。早く帰宅して炬燵に潜り込み、何事もないことを祈る他無い。私が友チョコの入ったカバンを下げてそそくさと下校していると、優太が声を掛けてきた。そして、珍しく真剣な様子で、「今でも俺の事好き?」と聞いてきた。

「はぁ? そんなこと聞きに来たの?」

「うん」

「あの時のアンタの答えと一緒だよ。好き好き、ずーっと好きだよ」

「……ウンコのチョコ渡したのゴメン」

「別にいいけど」

「俺はお前の事好き」

「はぁ?」

「照れくさくてちゃんとできなかったけど、ホントは子供の頃からずっと好き。付き合って」

「ハアァ!?」

私の声が三月十四日の夕焼け空に響き渡る。

 

 私は、四月から都内の大学に行く。優太も同じ沿線の大学だ。俺は馬鹿だけど、お前と近い大学に行きたくて頑張ったんだと優太は言った。そう言えば、こいつはこういう奴だったと思い出した。

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