令嬢は卒業パーティーで婚約破棄される
今日は貴族学院最終のイベントである、卒業パーティーの日だ。
この国では卒業パーティーは、子供から大人に扱いの変わる大切な日と言ってもいい。
準備が終わりパートナーの殿下を探しているが、一向に姿が見当たらなくて困っている。王家の馬車はあったので学院に居る事は確認がとれているが、普段から居そうな場所を探すが見当たらない。
焦りで過ぎ行く時間に、入場門近くに行く。
婚約者とパートナーになる人も多いが、婚約者が居ない人は卒業パーティーに向けて探している。この様なパーティーではパートナーと一緒に入場するのだが、特に婚約者が居ながら1人での入場は恥とみなされる。このパーティーは保護者や一般にも開放されている為、参加している家族に心配はかけたくない…
殿下に好かれているとは思えないが、好かれる努力はしてきた。今まで入場からファーストダンスが終わるまでは一緒に居れたが、ダンスが終わると直ぐに仲の良いグループに1人で行ってしまうのが恒例になりつつある。
王家に縁ある者は後半で入場する為、先に入場してはいないと思うが…。
時間なのか様子を伺っていた係の者から促された為に、結局殿下が現れることも無く1人での入場になった。
「リデル侯爵令嬢ご到着。」
名前を呼ばれ門を抜けて会場に入ると、先程までの賑やかな空気が一変して静かになった。私が1人なのが気になったのか周りからの視線が集まるのが分かり、身の置き所がない為少し早く歩き壁際に移動する。
ヒソヒソと人々が話すのが気になり、スカートの裾を握りしめてしまう。
時間にすれば短い時間だろうが、視線に晒されていると入場を告げる声が会場に響いた。
「バルガス殿下ならび、クルセイド侯爵令嬢ご到着。」
ハッとして入場門を見ると、腕を組み仲良さそうに入場してくる2人の姿があった。
この状況に周りも驚いたのか沈黙の中、ただただ入口の2人と私の方を見比べている。
ここに来て以前からヴェルローズ様は殿下の近くに居られたが、ここ半年位殿下は無下にされず話していたのを思い出す。
どういう状況なのか分からず、震える両手を胸の前で握りしめて気持ちを落ち着かせる。
入場した殿下と一瞬目があいこちらに気がついたのか、ヴェルローズ様の耳元で一言二言囁くと2人優雅に歩み始めた。
会場に集まっていた人混みが割れ、殿下とヴェルローズ様が中央にたどり着く。殿下たちと私の間を遮る人も消え、人々に囲まれてしまったような気さえしてくる。
「ステファニー・リデラ侯爵令嬢。」
いきなり名前を呼ばれビクッとしてしまった、呼ばれたので壁から離れて中央へと向かう。
睨みつける様な視線で私の動きを見ている殿下が怖く、その横で余裕を浮かべて微笑んでいるヴェルローズ様に不安を覚える。
震えながら中央にたどり着くと、ピシッと私を指さした殿下が声を張り上げて宣誓した。
「リデラ侯爵令嬢。貴様は俺の婚約者という立場に胡座をかき妃教育を真面に行わず、学院の授業ですら真面目に受けてこなかった!よって貴族に在るべき教養などが全く身についていないと言えよう。
人々を導き見守り、そして見本とならねばならない王家にこの様な者を加えることは決して出来ない。」
殿下は何か演技をするかの如く、盛大にため息をついてみせた。一体何を言い出したんだろうと、驚きつつ見ていると更に声を張り上げて言い切った。
「よってここに居る皆を証言者として、この場でステファニー・リデラ侯爵令嬢との婚約を破棄する!」
周りに喧騒が戻り、人々が今目にした事を話し始めた。
「ここにもう1つ報告がある、ヴェルローズ・クルセイド侯爵令嬢を婚約者に据える。皆この婚約を祝福してくれ。」
殿下の誇った様な言葉に続いて、周りから盛大な拍手が送られ続けている。
「これで分かったか、お前は婚約者の立場に甘えていただけだ。分かったなら了承をしろ。」
「分かりました。バルガス殿下本当によろしいのですか?」
「よろしいも何も、婚約破棄を早く受け入れろ。」
私は下を向きつつ少しでも優雅に見えるようにカーテシーをして、承知しましたと伝えた。
途中で視点変えるか話を分けるか悩んで、話を分けることにしました。
感想など頂けると泣いて喜びます|ω・)