番外編:カリーナの懺悔
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カリーナ視点の懺悔になります
暗い話になってしまったので、苦手な方はスルーしてください。
私は公爵家の長女として生を受け、2歳上に王子がいた事で王室に嫁ぐことを前提に育てられた。
我が家は昔は派閥も大きく勢力を誇っていたが近年は勢力も弱まり発言力も低くなりつつあり、私が嫁ぎ子供を王太子に据えゆくゆくは発言力を取り戻したがっていた。
しかし王子とは恋愛感情がわかずに、優しい兄のように感じていつもお兄様と呼んで懐いていた。
貴族学院に入学した時お兄様の横には柔らかく微笑んだ綺麗な女性が居た、子爵令嬢ということだが品もあり素敵な女性だった。お兄様に紹介され初めて会った時、優しいその人に私は懐いてお姉様と呼び慕った。
それからは3人でお茶をしたり出掛けたりと、一緒の時間を過ごす事が増えていた。
お兄様とお姉様が学院を卒業した後に結婚の話が出たが、国として権威が下がると反対にあっていると聞いた時ほど怒ったことは無かった。両方が想いあい結婚を望んでいるのに反対する事ができるのかと憤っていたが、反対派の筆頭を我が家が担っていると聞いた時の恥ずかしさと絶望感は今でも忘れられない。
その事を知った後2人に泣いて謝罪をしたら、2人とも私が悪い訳では無いのだからと反対に慰められてしまった。
そうしている内にお兄様に条件が課せられてしまった、お姉様と結婚したいなら有力な家から側室を取れと。
その条件を聞いた時私は率先して側室になる事を望んだ、私がお兄様とお姉様を守るのだと。今思えば愚かで子供っぽい正義感だったのかもしれない、でも当時は本気でそう思っていたのだ。お兄様とお姉様が相思相愛なのは有名で、愛される見込みの無い側室などなりたがる者もおらず。私は無事に側室になる事が決まった、一族の思惑に踊らされてるとも知らずに…。
学生時代からの延長のように3人で和やかに過ごしていた、そうしてお姉様の懐妊を皆で喜んでいた。
生まれたのは王子でアルリヒトと名前がついた、お兄様譲りの顔立ちにお姉様と同じ瞳の男の子。私は2人の子供であるアルリヒトが可愛くて、よくお姉様の元に通い子守りをしていた。
産後の肥立ちが悪いのかお姉様が伏せる事が多く、アルリヒトもよく熱を出していた。心配であったが出来ることも少なく、お姉様とアルリヒトの回復を祈って教会に通うしかできない自分が情けなかった。
身体の弱いアルリヒトは成人まで生きられないかもしれないと判断され、その状態で数年過ぎると後継問題がまた出てきた。
また伏せる事が多いお姉様に出産が望めないと判断され、側室として子を産むという責務が発生してしまった。私が子供を産むということは、大切なお姉様を裏切るということだ。
最初反対していたが私の意見が通るはずも無く、お姉様からも子供を産むことを望まれたのでお兄様と床を共にした。「ごめん」と言われて床につき、お兄様とお姉様の優しさに涙が一筋流れた。
無事第2王子のバルガスが生まれ肩の荷が下りたとホッとしたのもつかの間、一族がバルガスを王太子に据えたがり煩くなってきた。一族の復興に子供を巻き込む事は避けたいが、一族を撒くことが中々上手くいかない。
バルガスが生まれてから数年後、事態が急変する。アルリヒトの体調が落ち着くのと反対に、お姉様が伏せって起きる事がままならなくなった。
お姉様のいきなりの体調悪化を怪しんだお兄様が調べたところ、お姉様の侍女の1人が一族に買収されお姉様とアルリヒトに毒を盛っていた事が発覚した。それによって毒を飲むことの無くなったアルリヒトは健康になりすくすく成長し始めたが、産後の肥立ちの悪さに毒も加わったお姉様の身体はボロボロになって手の施しようがない状態だった。
一族の野望を甘く見ていた私の落ち度だ、詫びて済む問題ではなかった。第2王子の一族という事で大事に出来なく一部の者を切り捨てた形で決着が付けられてしまう、私含めいっその事一族郎党処分をして欲しかった。
その頃からアルリヒトは本当の笑顔を見せなくなった、仕方あるまい弱っていく母親を見守ることしか出来ないのだから…。私も一緒だ、弱っていくお姉様を見守ることしか出来ないのだから。
そんな時バルガスの婚約が決まった、相手は中立を保ちつつ第1王子寄りだったリデラ侯爵家の令嬢だった。リデラ侯爵夫人はお姉様の親友で学院時代に何度か私も会った事があった、お姉様の親友の子供ならアルリヒトと婚約話も出ていただろうに一族が無理やり決めてしまった。ここにも子供の犠牲が出てしまった、なんて無力なのかと悲しくなる。せめて幸せになれる様に、この小さな婚約者を見守っていくことを心に誓った。
お姉様が亡くなったのはそれから間もなくしてだった、街中悲しみで黒に染まった。早すぎる訃報にただただ泣くことしか出来ない、ちゃんと一族を抑えられなかった私の責任だ。
悲しんでいられる時間は短く、また一族が怪しい動きを始めていた。今度はアルリヒトの暗殺疑惑が出始めた。今度は一族も簡単にしっぽを掴ませない為、罪に問う事も出来なくて歯痒い思いが募る。お兄様と相談してアルリヒトの身の安全の為病気療養との名目で隣国に保護してもらう事とした、この国を背負っていくのはアルリヒトだと私は考えている。
バルガスは一族の煽てに調子に乗る事が増え、そしてバルガスの婚約者であるステファニーは何故か髪を染めたりしだした。教育をお願いしたスミス夫人に聞くが、理由が分からないとの事だった。教育は順調に進んでいるみたいなので会った時に褒めついでに理由を聞くが、ステファニーは何も無いの一点張りだった。
どんどん変わっていくステファニーが心配になり、バルガスに釘を刺すが何処までちゃんと聞いているのかが分からない。
バルガスも18歳になり何事も無く終わる筈だった学院の卒業パーティーの夜、お兄様の侍従から驚愕の事実がもたらされた。
よりにもよって卒業パーティーの場でバルガスがステファニーに婚約破棄をした、私は小さな婚約者すら守り切れないのかとイライラしながらバルガスの帰りを待つ。帰ってきたバルガスに謝罪して婚約を結び直す様に説得するが、なんの臆面もなく新しい婚約者まで立てたと言い切った。この子に一族が関わる事を防げなかったせいか、一族の言葉を鵜呑みにして傲慢に育ってしまっていた。悔いても仕方ないが未然に防げなかった自分に腹が立ち、呆然として泣くことしか出来ない。
暫くしてアルリヒトが急遽帰国してきた、いきなりの帰国で驚いてしまったが逞しく育った姿に嬉しさが募る。お姉様に立派に成長した姿を見て欲しかった、無事を喜ぶと何故かアルリヒトが驚いていた。アルリヒトは幼いながら賢く周りをよく観察して動く子供だった、一族の事を知っていたのかもしれない。そうするとアルリヒトがお姉様の最後の言葉を教えてくれ、亡くなる際まで私の心配をしてくれていた事を知り涙が止まらなかった。
アルリヒトの急な帰国には婚約を結びたい相手が居るからという事が分かり、幼い頃から想っていたという純愛にこの年齢でも胸が熱くなる。
どうかアルリヒトの想いが相手に届き、幸せな毎日を送れるように天国のお姉様に祈った。
本編の設定考えてる時に思い付いたけど、本編に組み込む事が出来るはずもなかったので書けて良かった自己満足な話です(汗)
次回はステファニー視点です!
誤字脱字変換ミスがありましたら、ご連絡よろしくお願いします。