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番外編:アルリヒトの独白

幼い頃から夜会でステファニーに話しかけるまでのアルリヒトの独白です。

本文に上手くかませれなかったので、番外編で(汗)。


私はエルメシア王国の第1王子として生を受けた。

生まれた時から身体が弱くよく熱を出し、成人まで生きられないかもと宮廷医から言われていたほどだった。

母も産後の肥立ちが悪く、出産後からよく寝込んでいたそうだ。

だが5歳を迎える頃になると私の体調は驚く程の回復をみせ、幼い頃病弱だったのが嘘のように健康そのものになってきた。

その頃から上の階から物が落ちてきたり階段の手すりが壊れたりと、不自然な事故が始まりだした。

暗殺事件に発展して騎士団の調査が入り、幼い頃から弱い毒を与えられていた事も発覚した。私は毒に耐性が出来たが、母は耐えれず身体が弱っていくのが止められなくなっていた。

段々弱っていく母を見守りつつ、幼く自分の身を守ることも出来なかった私は怯えて過ごす日々をおくっていた。

唯一気が抜けるのは、母の親友であるリデラ侯爵夫人と一緒に王宮に来ていたエドと遊ぶ時間だった。母は母で気心のしれたリデラ侯爵夫人と話すと楽しそうで、心穏やかに過ごせるそんな時間だった。

リデラ侯爵夫人がたまに話してくれる生まれたての女の子の話を聞くことがあり、そのうち会いたいと思ったまま会えずに年月が過ぎた。


9歳になった頃1度リデラ侯爵夫人からその娘との婚約の話が出たが、いつの間にか相手が変わり弟と婚約を結ぶ事になったと謝罪された。

段々弱っていく母を見て笑う事を忘れそうになっていた時、気持ちとは違い穏やかな陽気の日だった。母の元にリデラ侯爵夫人が話に来た時に、初めて妃教育で登城した令嬢と一緒に来たことを聞いた。母がリデラ侯爵夫人と笑顔を浮かべて楽しそうに話すのを見て、心から本当に笑えない自分がいたたまれない気持ちに陥り廊下に出た。

しばらく歩いていると風に乗って微かな泣き声が聞こえてきた、普段なら気にしない出来事なのに何故かその日は泣き声が気になり声を頼りに進んでいく。その声はとても弱々しく、声の主を探すため庭園の樹木を掻き分け進んで行く。

植木を掻き分け見つけた少女は銀色の髪に、紫色の目を真っ赤に染めて池のほとりで泣いていた。王宮で今まで見た事無い顔だが、リデラ侯爵夫人が教えてくれた娘さんと特徴が一致する事から娘さんのステフだと気がついた。

リデラ侯爵家には借りがあるから声をかけ今まで培った猫を被りステフを慰める、先程聞き流した話では確かバルガスとの婚約を結んだ事で妃教育に来ていたはずだ。

自分の愛称を名乗りステフと呼ぶと、不思議顔で表情が止まった。

ここ王宮は常に蠢く闇を内蔵している魔の巣窟だ、表情1つで足を引っ張られる。ここで生きるためには感情を押し殺し、表情を殺して常に笑みを浮かべていないといけない場所。

そんな闇みたいな場所に少女は眩しく見えた、何気ない仕草に心からの微笑みが溢れてくる。微笑みは令嬢を見ているとどんどん大きな感情の起伏になり、本当に久しぶりに心からの笑いに変わっていく。

私が笑うとステフも笑う、そんな当たり前な事を忘れていた自分が情けない。目の前の少女は感情を素直に出していてコロコロと変わる表情に、目が惹き付けられ気になっていくのが分かった。


それから数日リデラ侯爵家の人に会うとステフの話題を聞くようになり、その内容を母に語り愛らしさを感じていた。そして微笑む母の顔を見るのが嬉しくて、かけがえのない時間になった。

数日後母の様態が悪化してしまった、やつれた母の元に行くと弱々しく話し出した。

最後の言葉は「側室様を母と思い慕いなさい、そして良い人と幸せになりなさい」だった、私や母に毒を盛ったり暗殺に手を貸している側室を母と思えるはずが無い。

母はこの王宮に嫁いで本当に幸せだったのだろうか?黒く染まった街を過ぎ行く棺を見ながら思った、幸せとはなんなんだろう…。

母が亡くなって後ろ盾を失った私はすぐに、暗殺から身を隠す為病気療養との名目で隣国に出国する事が決まった。

母の居ないこの国に未練などない、ただひとつ心残りがあるとしたらあの日であったリデラ侯爵令嬢のステファニーだけだ。


国を出た後もリデラ侯爵家とは繋がりがあり、侯爵夫人やエドワードと手紙のやり取りが続いていた。

手紙でステファニーの事を聞いたのが切っ掛けでエドに気持ちがバレてしまい、盛大にからかわれたが手紙にステフの事を書いてくれるようになった。


隣国で学院の院生として学び研究に勤しんでいた時、エドの手紙にステフがバルガスに婚約破棄された事が書いてあった。

大人になるに連れて幼い思いは色褪せることなく今も心にくすぶり続けていて、昔よりもっと強く好きという気持ちになっていた。今まで相手に望んでも弟の婚約者の立場にあったステフには何も言えず、決して手に入らないと諦めていたのに…。

可能性が少しでもあると思うとじっとして居られなくなり、隣国の生活を切り上げ自国に戻るのに数ヶ月かかってしまった。


自国に戻ってから父と王妃になった側室に会った、父からは帰国の喜びを側室からは無事を喜ばれた。側室だったが今は王妃になったカリーナ様はてっきり俺の存在を疎んでいるものだと思っていたが違ったのか、母の最後の言葉を伝えるとお姉様と泣き崩れてしまった。親世代にも色々なしがらみや思いが交錯し、すれ違ってしまっていたのかもしれない…。


落ち着くと早速エドに帰国の知らせを送り、再会したエドは帰国を大層喜んでくれた。そして気になっていたステフとバルガスの婚約破棄について聞くと、バルガスの馬鹿さ愚かさに苛立ちが湧いてきた。自分を偽ってまでひたすらに仕えてくれるステフの思いも知らずに、自分勝手な思いで婚約破棄に簡単に踏み切ったバルガスに怒りを覚える。

それにどんだけ思っても手に入らなかった婚約者という立場をバルガスはあっさりと捨て去った。それなら俺がその立場貰い受けても構わないだろう。

エドに近々開催される夜会の会場にステファニーを連れてきてもらうことを頼み、その為の準備に奔走することを誓う。


父に婚約したい令嬢がいる事を伝えると喜んでくれた、名前を告げると自分の力で頑張れと励まされた。聞くとバルガスとの婚約を破棄した時にステフと約束があるらしく、王家からの婚約要請は出せないとの事だった。

元より自分と一緒になるという事は不安定な立場を強いる事となる、きちんとステフの気持ちを汲んで進めていきたい。


そして何故か父と話した翌日から政務に関わる事になってきた、政務室として与えられた部屋には既に大量の書類が積まれていた。

ステフとの話を進めるために色々手を回したり準備したいのに、結局夜会当日まで書類に追われる日々を送る事となった。


満を持して迎えたかった夜会当日は、準備におわれて結局入場が遅くなってしまった。

入場して背の高いエドを目印に辺りを見回すと、会場の一角が開けていてそこに見つける。エドの下に視線を動かすと銀の髪の女性がいた、やっと再会出来ると思うと感慨深い気持ちになる。

そこにはバルガスも居て何故一緒に居るのかと一瞬怪訝な顔をしてしまったが、微笑みを浮かべてステフの元に急ぐ。


やっとの再会に何を話しどう伝えようか、今幼い頃からの念願が叶う時が来たのだ!

爽やか王子が腹黒王子に…

誤字脱字変換ミスがありましたら、ご連絡よろしくお願いします!

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