恋愛偏差値0の悪役令嬢は攻略者を遠ざけたい!!
皆さん、こんにちは、まみやまみです!
悪役令嬢シリーズをまたまた投稿させていただきました!
恋愛偏差値0
それが私の異名だった。
友人Aの証言
「あー、あの子ね。そもそも鈍感なのよ」
友人Bの証言
「そういや、恋愛偏差値上げるとか言って乙女ゲームしてたわね〜。ま、結果は目に見えてるけど」
友人Cの証言
「あれはダメだ、あれは。好意を伝えても『これからもよろしくね、親友!』とか言われたし…。多分、生まれ変わっても恋って何?美味しいの?とか言ってそうだな…」
ふ、ふ、ふ…私、転生しましたー‼︎それも、大好きな乙女ゲームの世界に!
もともとは恋愛偏差値を上げるための教材だったのだが、どっぷりとハマって今ではグッズを買い集めるほどである。と、言ってもそれは前世の話。今は、ニーアという名前の令嬢だ。残念ながら、乙女ゲームの中の悪役令嬢。ただし、国外追放されるだけで、殺されるわけではないのは不幸中の幸いだった。
私が転生に気づいた時からやりたいことは一つだけ。
ヒロインから攻略対象のハイドを遠ざける!
…え?自分が好きだからってヒロインの恋を邪魔するのは良くないって?残念だけど私は誰かに恋をしたことなんてない。というか、友達に恋って何?って聞いても『気づいたら好きになってるもの』と言われて、恋は諦めた。ってそんなことはどうでといい。ともかく前世含め一回も私は恋をしたことがない。
だから、ヒロインからハイドを遠ざけるのには違う理由がある。それは、私がハイドを嫌いだから。ただそれだけだ。
それから数年。
いつものように私はヒロインに話しかけに行こうとするハイドの邪魔をする。
「ハイド!ねぇ、もうそろそろあの子に話しかけるのはやめたら?」
16歳になった私は着々と計画を遂行している。
「はぁ…べつに話しかけたくて話しかけようとしてるわけじゃない」
なら、なんでヒロインに話しかけにいくのよ!ゲームの強制力?
「だって、あの子に話しかけた時くらいしかお前から俺に話しかけてくれないだろ?」
「だって別にハイドに話しかける理由がないでしょう?」
わざわざ嫌いな人に話しかけにいくわけがないでしょ。するとハイドがポツリと何かを呟く。
「これでも伝わらないか…」
「え?何?はっきり言ってよ、もう」
ハイドのそう言うところも嫌いだ。いや、そもそも嫌いだからこそ全部が嫌に見えるのだろう。
ゲームの中のハイドは本当にひどい人だった。
ヤンデレで、ドSで、どっちつかずな態度で女子たちをもてあそんでて…悪いところをあげたらキリがないよね、マジで。まぁ、ゲーム内のハイドはそんな感じだった。本当に大嫌いだ。
正直ゲームをしてるスマホごとぶっ飛ばしたくなったくらいである。
「あ、そうだ。お前さ、今度のパーティーのパートナーって決まってる?」
「…いないけど…もしかしてモテないって言いたいわけ?」
「そうじゃなくて…だから、俺のパートナーになってくれないか?」
反射的にえ、やだ。と、言おうとしたがそれが顔に出ていたのかハイドは話を続ける。
「もし、ダメならあの子を誘う」
あの子は多分、ヒロインのことだろう。
チッと舌打ちしたいのを押し込めて頷く。
「わかった、私でいいならパートナーになる」
ハイドの毒牙にヒロインがかからないならこんなのお安い御用だ。この世界では、ハイドはカッコよくてイケメンで結婚したいとか言う女性がたくさんいるみたいだが、正直イケメンだからいいのか⁉︎と言いたくなってしまう。もし、性格がめっちゃ悪くてもイケメンやら結婚したい!というのなら喜んでハイドを押し付け…コホン、ハイドを渡してあげたいと思う。
「あ、そういえば今度のパーティーっていつだっけ?」
「あぁ、明後日だ。確か、城のホールで行うらしい」
ほうほう。
「楽しみにしてる」
そう言って笑ったハイドに不覚にも私はよろめいてしまう。
無駄にイケメンをばら撒かないでほしい…。
その上、よろめいた私を慣れた手つきで支える。
っ‼︎
つい、顔が赤くなった私を見てハイドはニヤリと嗤う。
「ニーア、どうかしたのか?」
「…支えてくれたのはありがとう。でも、早く手を離して」
多分今までも女子たちに本性を隠してこんなふうにスマートに接しておとしてきたんだろう。
考えるだけでむしゃくしゃする!
「あっそ、じゃ、俺そろそろいくから。じゃあな」
素直にじゃあねと言うのも気が引けて私は睨みながらハイドを見送る。
あぁもう!本当にむしゃくしゃする!!
パーティー1日前になり、一応ドレスを用意するために仕立て屋に行くと、仕立て屋の前でヒロインが笑っている姿が見えた。
「誰と話してるのかしら?」
ひょこりと角から顔だけ出して見てみると…。
「ハイド⁉︎」
思わず大声を出してしまい、急いで口を抑える。どうやら、2人は会話に夢中らしくこちらに気づかなかった。
ホッと息を吐き、はてと考える。
「そもそも、私が隠れる必要なくない?ヒロインとハイドを遠ざけなきゃいけないんだし」
そう思ったがなんでか悪いことをしているような気持ちになる。
なんで、こんな気持ちに?ヒロインとハイドを引き離すのはヒロインのためなんだから。
そう思い踏み出そうとした瞬間ヒロインがこちらをみる。
こちらを見て、喜んだ顔に…はならず、何故か私は睨まれた。
え?え?なんで睨まれたの?もしかして…。
「ヒロインってハイドのことが好きなの⁉︎」
だから、私に引き離すなとばかりに睨んできたのだろうか?
確かにそう考えれば今まで、ヒロインがたびたび私のことを睨んで来た理由もわかる。
知らぬ間に私、恋敵になってた!無自覚って恐ろしい!
ヒロインが好きならハイドを引き離さなくてもういいか。
そう考えると同時になぜか胸がズシリと重くなった。
「あ…れ?」
突然ポロリと落ちてきた涙に自分で困惑する。なんで、涙なんか?
脳裏に浮かんでくるのは意地悪そうな顔をしたハイド、キザだと思いながらも完璧なエスコートをするハイド、お互い睨み合いながらも本気では口論をしないハイド、そしてときどき優しく微笑むハイド。
この気持ちって…。
いや、あり得ない!だって相手はあのサイテーなハイドよ⁉︎
ギュッと気持ちを心の中に押し込めるが、収まるわけもなく、じわじわと私の胸に広がっていく。
多分、私の目の前のハイドはゲーム内のハイドとは性格が変わっている。私が関わった影響か、はたまた違う理由かはわからないが、個人的にはゲーム内のハイドに比べ性格がイケメンになっているのだ。そんなハイドを好きにならないはずがない。
『気づいたら好きになってるもの』
あぁ、今になって前世の友達の言ってた意味を理解した。
「今、気づいても遅いよ…」
舞踏会当日。
重い足を引きずりながら屋敷を出ると馬車とハイドが待っていた。
ドキリと跳ねた胸を押さえながら私はハイドから顔を背ける。
「い、行こう」
「あぁ」
流れるような手つきで私をエスコートすると馬車に乗せてくれる。
「ハイドってなんでこんなにエスコートがうまいのよ。沢山の人をエスコートしてきてるから?」
「んなわけないだろ。練習をたくさんしたからだし。そもそも俺、家族とニーア以外エスコートしたことないし」
ゔっ…。
嘘だとわかっていても完璧な答えに胸の鼓動が収まってくれない。もっと、嫌なやつだったら私だってすぐに嫌うことができると思うのに、文句の付け所がない。
パーティー会場に入ると沢山の人がすでにダンスなどをしていた。もちろん、私はダンスを踊る気などさらさらない。
「一緒に踊ってくださいませんか?」
突然目の前に来て柔らかい微笑みを浮かべながらそう言ったのはヒロインだった。
普通は男性が女性を誘うのが常識となっている。女性が男性を誘う時。それは、あなたのことが好きです。と公に伝えることと同じだ。さすがにハイドもこの場で返事をすることを躊躇ったのか、「少し場所を変えよう」と提案するが、ヒロインは全く意にも介さない。ざわざわと周りがざわめくのも無視しながらヒロインは言葉を続ける。
「あなたと踊りたいんです。もちろんこの意味がわからないわけがありませんよね、ハイド様。…どうか、私と婚約していただけませんか?」
フワリと花のように微笑んだヒロインはゲームの中とは違い、少しブラックな感じが滲み出ている。
そんな笑顔を見た瞬間考えるよりさきに私はハイドの前に飛び出していた。
「待って!」
「何かしら?」
「あなたには渡したくない‼︎」
思わず口から出てしまった言葉に私自身が一番驚く。
「渡したくない?そもそもハイド様はあなたのものじゃないわよ。悪役令嬢風情でなにをいってるのかしら?」
悪役令嬢!
その言葉が意味すること。それは、ヒロインである彼女も前世の記憶があるということだ。
「そもそもヒロインである私に彼は恋をするの。悪役令嬢なんてそもそも最初からお呼びじゃないのよ!ちゃんとヒロインの幸せを願いなさい」
…。
グッと唇を噛み締め私は思案する。
もともとをいえば、ハイドに近づいたのはヒロインに幸せになってもらうためだった。なのに今更、自分がハイドを好きだからって恋路を邪魔するのは、ずるいんじゃないだろうか?
そう考え、私は少し怖気付く。それに気づいたのかヒロインは満面の微笑みでつげる。
「あなたは大人しく国外追放されてればいいのよ」
その通りかもしれない。もともとハイドを邪魔したのは私であり、本当ならハイドはヒロインとくっつくべき存在なのだ。2人が幸せになるのなら私が引くべきなのでは?
「私…」
トンッ
軽く肩を叩かれて私は急いで振り返る。
「ハイド…?」
後ろをみると今までに見たこともないほどハイドが怒りで顔を歪ませ立っていた。
「あのさ、さっきから聞いてたら人の気持ち無視してなんだよ。私に彼は恋する?ふざけるな!俺が恋する相手は自分で決める!」
「ですが、ハイド様、あなたは私と婚約した方が幸せになれますわ!いいえ、私が幸せにして差し上げます!」
「昨日も言ったと思うが、俺は幸せは自分で掴むものだと思ってる。だから、自分の好きな人は自分で決める!ちょっとこい」
「え?」
何故かグイッと手を引かれて私はよろける。え?え?と困惑しているうちにいつのまにかハイドの馬車に私は乗せられてしまった。
「あの、パーティーは?」
「それより大事なことがあるだろ」
それで私はハッと気づく。待って、さっきハイドは渡したくない‼︎って、いったの普通に告白じゃない⁉︎公開告白⁉︎
「おい、大丈夫か?青ざめてるぞ」
「は、ハイド…さっきの忘れて‼︎今!すぐに!」
するとニヤリとハイドは微笑む。
「忘れるわけないだろ?…てか、忘れてほしいことってなんだ?そんなことあったっけ?」
最後の言葉は小さすぎて聞こえなかった。私はハイドを睨みながら口を開く。
「ゔ…ここでドS要素出さないでくれない!私、帰る‼︎」
急いで馬車の外に出ようとドアを押し引きするが全く動かない。
「なんで…」
「そりゃぁ、俺が上を押さえてるからだろ」
「っ⁉︎」
ついに逃げ場所がなくなり私はゆるゆると力を抜く。
「ゔぅ〜…イジワル!サイテー!バカ!アホ!」
「言葉の攻撃やめろよ…はぁ…。そもそもニーアが俺のこと嫌いなのは最初からわかってるよ。でも、ニーア、やっぱり諦められないんだ」
はい?突然始まった急展開に頭が思考停止する。
「あの、なんのこと言って…」
「ニーア」
熱のこもった声でそう言われて反射的に背筋を伸ばす。
「ニーア、ずっと前から好きだった!婚約してくれないか!」
……。
「……」
「……」
ギュッと頬をつねって私はカッと目を見開いた。
「夢じゃない‼︎」
「当たり前だろ⁉︎てか、今の間って夢かどうか確認してたのかよ!」
諦めたようにはぁとため息をついた後、ハイドは苦笑しながら聞いてくる。
「で、返事は?『はい』か『YES』で答えて」
「…もちろん、『はい』も『YES』も両方に決まってるじゃん!」
「そうだよな、もちろん無理…って、え?」
ポカンと口を開けるハイドに私は抱きつく。
「もちろん、大好きだよ!」
私の恋愛偏差値は多分まだ高くはないんだろう。でも、だからこそ恋をしたら当たって砕けるくらいの覚悟でぶつかっていこうと思う。
「覚悟しててね、ハイド!」
ハイドの顔は抱きついてるせいで見えなかったけど、多分いつものあの笑顔だと私は何故か確信した。
読んでくださりありがとうございました!
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追伸(気になる人だけ読んでください)
高校生になって初めての、あの、地獄の日々がもうすぐ訪れようとしています…。
そう、中間テストです!!!!!!
…実は、5月中旬に中間テストがあり、只今も地道にこちらに向かってきています…。なので、申し訳ないのですが、中間テストが終わるまではなかなか小説が投稿できないかもしれません…。すみません!!もし、投稿できそうだったら投稿させていただきます。