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貴族の子息の皆様、私は勇者のお嫁さんになるので、ダンスに誘わなくても結構です。ご令嬢の皆様、そういうわけですので私にダンスの相手がいないからって、哀れんで頂くなくてもよろしくてよ。

作者: 山口瑛史


3人の貴族令嬢に囲まれて、散々イヤミを言われる田舎貴族の娘の私。


「まぁ、ドレスも安物で品がありませんの。」

「装飾品も安物ですわね。趣味がよろしくありませんわ。」

「そんな衣装で恥ずかしくありませんのね。」

「「「ほほほほほっ!」」」


「むっ」

このドレスも、ネックレスも、田舎のお父さんが贈ってくれたもの。

きっと勇者エイトさんも一緒に選んでくれたはず。


あー。もう。本気の魔法で、この娘ら、ぶっとばしてやろうかしら。

どうせ田舎に帰るんだし。

ぶっとばして逃げたら、魔法で強化した私の足なら誰も追いつけないだろうし。

田舎で勇者エイトさんに慰めてもらうんだ。


でもやっぱ、怒られちゃうかな。


なら、イヤだなぁ。


----------------------------------------------------------


私、リゼ・トマール準男爵令嬢には、心に決めた人がいる。

準男爵って、令嬢を名乗って良いかはわからないけどね。

田舎の村長の娘だし。令嬢ってガラじゃないし。


私が心に決めた人は、戦争を終わらせた英雄で勇者さま。

私のお父さんの村で、スローライフってやつを満喫してる。

ずっと年上なんだけど、まだ独身で彼女もいないみたいだから、私がお嫁さんになってあげるの。


会った頃。私がまだ10才にもならなかった時だったと思う。

「リゼは大人になったら、何になりたいんだ?」

とか聞いていたから。

「大きくなったら、エイトさんのお嫁さんになる!」

って言ったら笑ってくれた。

「そうだな。リゼが大人の女の人になって、まだ想っていてくれたら、お願いするよ。」

って、言ってくれた。

これって、もう、婚約したようなものだよね。


自分の体を見下ろす。村を出て3年か。魔法学校は3年で卒業。

16才になった身体は、成長して、もう大人の女って言って良いと思う。

いろんなとこにお肉ついてきたし、腰は細くなってきたし。


卒業記念パーティーでダンスもあるんだけど。

そのダンスのお相手と卒業後に結婚したりするらしいんだけど。

私には相手いらない。ダンスのお誘いは全部断った。



魔法学校で2位の成績の侯爵令息とか、あ、1位は私。一回でも1位とってから誘いなさいっての。

国王陛下の弟殿下という方からも、お誘いがあったけど。冗談だよね。と思って丁重にお断りした。

あと、故郷近くの大貴族の変な3男さんからも

「私と踊るのに相応しいのは、リーゼロッテ。あなただ!」

って。リーゼロッテって誰?ってことで無視した。


仲の良かった平民の学友達は、このパーティーには参加していない。

私も参加したくなかったんだけど、お父さんのため、顔だけは出さないとダメらしい。


だから、会場の端のほうで所在なげに座っていたんだけど…。

「お、ここにおったか」

「アピスト先生。」

校長先生から声がかけられた。学校に残って研究を続けるように言われてたけど、私にはやることがある。


そう、

私は、勇者のお嫁さんになる!


海賊王じゃないけどね。


「うむ。国王リチャード様に頼んだりしたのだが、断れんとおもったんだけどな。」

「王弟様からの誘いって、先生の…」

「いや王弟テリー様も、リゼ嬢を気に入っておったのは確かなんだよ。」

会ったことあるのかなぁ。テリー。テリー?あ、後輩のテリー君か…。

テリー・ウォル・リベルト。なんて王族しか名乗れない名前で申し込んでくるからわからなかったよ…。

「侯爵令息のリカルド君も脈ありかと思ったんじゃがな 」


テリー君なら、隠れ蓑になったから誘いに乗ったかもしれないけど。

リカルド君は、結局私に勝てなかったな。ライバルだったし最後の思い出になら良かったかな。

あ、でも、本気になっちゃダメだからね。コレで良かったか。

私の彼氏を王都で作って、私を残らせる作戦だったらしい。


「ま、とにかく、儂はまだ諦めてないからな!」

「私などより、やる気もあって相応しい人間がいくらでもいますよ。テリー君とか」

「いや、儂は、リゼ嬢なら、この世界の魔法の常識を変えてくれると信じておる」

そんな大げさな。


変な伯爵家三男のシグルド君の話題は出ず。

彼は彼で、見た目も良いし、騎士学校上位だから人気あるんだけどね。

でも、ちょっと変なんだよね。


アピスト先生と話すことで、時間が潰せた。これで帰れるかなって思ったところだった。


ザ、貴族令嬢の皆様がこちらにやってくる。

公爵令嬢様、侯爵令嬢様、伯爵令嬢様、名前は忘れたけど…。


「あら、田舎者の貧乏貴族には、ダンスのお相手もおらず不憫ですわね。」

「そうですわ。可哀想。」

「マリベル様。お相手を、紹介してあげては如何です?」


いや、結構ですよ。学校の成績では、私の足下にも及ばず。

男子生徒からも、私の方が人気あったと自負してるわ。


文化祭のミスコンに無理矢理出させられたけど、この人達には圧勝したし…。

ま、それからは、会うたびにイヤミも言われたけど。

なんか、ものが無くなったりの嫌がらせはしてきたな。

男子生徒をけしかけて、私を襲わせようとした時は、どうしようかと思ったけど…。

ま、これでも魔法学校1位の実力。軽く撃退できたけどね。


成績別でクラスも違うし、我慢できるくらいだったから放っておいた。


「いえ。もう退席しようと思っていましたので」


「まぁ、ドレスも安物で品がありませんの。」

「装飾品も安物ですわね。趣味がよろしくありませんわ。」

「そんな衣装で恥ずかしくありませんのね。」

「「「ほほほほほっ!」」」


「むっ」

このドレスも、ネックレスも、田舎のお父さんが贈ってくれたもの。

きっと勇者エイトさんも一緒に選んでくれたはず。


あー。もう。本気の魔法で、この娘ら、ぶっとばしてやろうかしら。

どうせ田舎に帰るんだし。

ぶっとばして逃げたら、魔法で強化した私の足なら誰も追いつけないだろうし。

田舎で勇者エイトさんに慰めてもらうんだ。


怒られちゃうかな。


なら、イヤだなぁ。



3人の貴族の子息がこちらにやってきた。

「あ、テリー様。今日はよろしくお願い致しますわ」

公爵令嬢様が、テリー殿下に挨拶する。頷くだけ。やる気ないよね。


「リカルド様。お誘いありがとうございますわ」

侯爵令嬢様。あーややこしい。リカルド侯爵令息に挨拶する。


「シグルド様。良く来てくださいました。」

伯爵令嬢様が、シグルド君に挨拶する。

魔法学校の卒業パーティーだからね。騎士学校のパーティーは別日だからね。

そんな説明いらんか…。



3人の令息たちは、なぜか、ではないな。やはりというか、ご令嬢の皆様を無視してこちらにやってきた。


「リゼ。出席するなら私の誘いに乗ってくれても良かったのに」

「リゼ先輩。僕の招待状みていただけてないのですか?」

「おお、リーゼロッテ!」

3人が同時に話すと訳わかんないよ。



「「「どういうことですの・・・」」」


そういうことです。ご令嬢様方。私に断られたお三方が、親であったり家の事情で貴女たちを誘っただけですね。


ほんとーに、すみません。早く帰ったらよかったですね。貴女方が、私にイヤミを言いたくて、素敵なダンスの相手を見せびらかしたくて、私を引き留めるから…。


確かに、貴族令嬢の皆様は、お綺麗ですし、3人の貴族令息様は、みんな格好良くて素敵ですけど。


前もいいましたが、

私は、勇者のお嫁さんになる。

ので、私と違う世界で幸せに生きていって欲しいと思う。


3人のご令嬢と3人のご令息が、やいのやいの揉めだした。

私と踊るのは誰なんだ。とか。


収拾がつかなくなってきた。もう、帰りたい。


そんなときだった。会場の空気が変わった。

金髪をなびかせて、どこにも崩れもない完璧なご尊顔。

体つきは、歴戦の聖騎士であっただけに、偉丈夫であり、いまだ、その力は衰えを見せることを知らない。


国王リチャードが入場してきたのだ。

「陛下だ。」

みんなが頭を下げようとするが、会場中響き渡る声で

「今日は、将来の国の礎となる人材の門出である。忌憚なく大いに楽しんで頂きたい。」

陛下は当たりを見渡して

「では、ダンスパーティーを始めよう。」

と言い、合図すると。楽団が動き出し、音楽が鳴り出した。一人、また一人とダンスする人が出てきて、ダンスパーティーは盛り上がり始めた。


陛下は、お供も連れずこちらにやってくる。

そうだったのね。勇者エイトさんに会いに来るリチャードさん。

国王陛下だったんだ。珠に遠目からしか見なかったので気付かなかった。


あ、じゃあ、あの、アリスおねえちゃんは?魔王陛下だったの?

村では、リチャードさんといつも一緒にいる魔族のおねえさん。おねえさんっていっても、初等学生みたいな見た目だけど。

それは、今は関係ないけど…。



「リゼ。大きくなったな。」

「あ、はい」

「いままでのように、リチャードおじさんで構わないよ」

いや、それはさすがに…。


3人の令嬢達に言い放つ

「私の大切な友人の娘に対して、どういう態度であったか。調査はすんでいる。おって各々の親から、叱責がある。覚悟しておきなさい」


国王陛下から直々のお言葉なんて、ありがたくて涙が出るよ。

あ、みんな泣いてる?


リチャードおじさん。じゃなくて国王陛下が、厳しい顔が崩れて、優しく手を差し伸べて

「踊っていただけますか?」

優しい笑顔で…。断れる訳ないよね…。


陛下は、ちゃんと私をリードしてくれて楽しく踊れました。

6人の貴族の令嬢、子息の方々は、唖然として立ち尽くしている。


テリー君だけは

「お兄様も人が悪い。ま、兄さんだから仕方ないか 」

って笑ってたけど。君には多分もっといい人がいると思うよ。


勇者エイトにな。頼まれてな」

リチャードおじさんがダンスしながら話してくれた。

「エイトさん?」

「うん。リゼが一人で寂しくしないようにしろって」

「そうなんですね。」

私は、勇者の嫁になるんだから、一人で良いのにね。

「だから、テリーに誘わせたりしたんだが、断られたって泣いてたよ」

「あ、」

やっぱり、テリー君を隠れ蓑ってのが正解だったのね。


「それにな、悪い虫がつかんように、お前がちゃんと見張っとけって」

勇者さん…。国王をなんだと思っているのですか…。


ーん、悪友かなぁ?

なんか聞こえた気がする。


「そういうことを言ってくれるなら…」

悪い虫がつかんようになんて思ってくれているんなら…。

「ま、リゼのことは可愛がってたし、アイツも責任とるべきだと思うが。エイトだしなぁ」

「…そうですね。」

世界一強い勇者だけど、世界一、気持ち伝えるのが難しい気がする。


ダンスが終わろうとしている。

「おじちゃんは、リゼのこと応援してるからな!」

「は、はい。ありがとうございます。」

おじちゃんって…。国王様だよね。



些細な混乱があったけれど、国王陛下の乱入というハプニングはあったけれども。

私にとって、卒業記念パーティーは、有意義に終わることができた。


リカルド君とテリー君は理解してくれたようだけど、伯爵令息のシグルド君は、やっぱわかっていなかったようで、相変わらず。

「リーゼロッテ。待っていてくれよ」

なんて言ってた。実家近いし、やだなって思っていたけど、またそれは別のお話。




唐変木の鈍感勇者にこれから戦いを挑みにいかないとダメだから、味方は一人でも多い方が良い。

国王という、心強い味方ができた。


「私は、勇者のお嫁さんになる。」

からね。エイトさん。待っててね!



今連載中の番外編ですが、これだけで楽しんで頂けるように考えました。


良かったら作品に評価して頂けると嬉しいです。

下にある星を満タン…。でも、イマイチなら一つでも構いません。

よろしくお願いします。


本編は、

https://ncode.syosetu.com/n2694hf/

勇者である俺を暗殺に来た幼女を娘にした。暗殺を企てた教団よ、この娘を帰せと言われてももう遅い。パパ大好きな娘にしちゃったので。


の物語が始まる前のお話を考えてみました。

本編の方もよろしかったら、呼んで頂けるとめっちゃ嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほどこれはうまい。 短編としてきちんと作品になっているしこの後日談として長編がすでに書かれていると思えば興味は湧く。 主人公の割と危なっかしく見える一途さがどう転がっているのか楽しみだ…
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