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08 裏切りはどこに

 私が次にしたことは、


『身を守る術を習う』


 私は公爵家の私兵に目を付けた。


 彼らは常に目立たぬように公爵家を護衛してくれている。


 私は彼らに近寄った。


 今までだって、私がまだ小さいのもあるけど彼らと個人的に話などはしたことは無かった。


「あの、いつも守ってくれてありがとうございます」


 すると彼らは眉根を寄せた。


「いえ、これが仕事ですから、お礼を言われるほどのものではありません」


 ……その言葉にふと私も考えた。


 誘拐事件のときに馬車には彼らもいたはず。


 そもそも王都の公爵家の館から王宮への道筋にそんな危険なところなどあまりない。筆頭公爵家だから王宮の近くに館はあった。


 ひょっとしたら公爵家の私兵の中に手引きした者がいないとも限らない。


 盗賊団からの報酬のお金や甘言に目がくらんだ、若しくは弱みを握られて脅されてした者がいたかもしれない。ここを通るという情報を流していたかもしれない。そんな考えに行きつく。恐ろしさで少し寒気がしたが改めて彼らを眺めた。


 ――今習っても非力なので反撃などとてもできないだろうけど、それでも逃げるチャンスを掴んだり、相手のなすがままよりせめて一太刀でも相手にやり返したい。


「あの、私も護身術を学びたいのです」


「は? 護身?」


 彼らはきょとんとしてしまった。しかし直ぐ、


「我々の護衛では不満だと仰るのですか?」


「い、いいえ。そうではありません。私が、……私の我儘です」


 どうやら彼らを怒らせてしまったようだ。


 私はどうしていいか分からず俯いた。


 誘拐されて傷つけられたときのことは覚えていない。


 私のような無力なものが何をしても無駄なのは分かっている。


 でも、あれから死んだような人生だった。


 傷物と罵られ、顔を上げることも明るい日差しの中で空を見上げることもできず。


 息を顰めて生きるしかなかった。


 あれは生きていたとは言えない。


「……生きたい。今度こそ」


 私の呟きは彼らに聞かれてなかったと思う。


 彼らはまだ不満げな気配をしていたが、私は顔を上げた。


「気を悪くさせてすみません。ではせめて皆さんの訓練を見せていただけたらと……」


 彼らが鍛えるのを真似することができれば――。


 私の言葉に彼らはもっと困惑したようだった。


 それも私はまるで理解していなかった。


 彼らには主家の子どものただの迷惑な戯言だと思われていたのだ。


「あのですねぇ。公爵様にその話をされましたか?」


「いいえ。それはまだ……」


「御子息ならともかく、まだ小さいご令嬢に怪我でもさせたら大変なことになります」


 周囲の者もそうだといわんばかりに肯いていた。


「そうですか……」


 私が引き下がるのを見て彼らはほっとしたようだった。彼らに習うことはできないけれどお父様に相談してみよう。何かいい知恵を授けてもらえるかもしれない。


 そう、彼らにも殺されないようにするために――。どこに裏切る人が、手引きする者がいるかは分からない。

お読みいただき、ブックマーク評価ありがとうございます。

十話から溺愛ヒーローが出てきます。

お待たせしております。

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