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37 番外編 断罪後から後日談 結婚準備編

コミカライズ三巻発売を記念して番外編を書き下ろしました。

この話は少し続く予定にしております。

「うーん。やっぱりこのデザインにして正解だった。とてもリアには似合う」

「ありがとうございます」

 今日は王都の辺境伯家の館にデザイナーのエイダ夫人を招いてウェディングドレスの最終確認をしていました。婚約が決まった時から少しずつこうして準備をしていました。

 二年間の貴族学院ももう後少しで卒業です。卒業式の後、直ぐに辺境伯家に嫁入りすることになっています。

 貴族学院での生活はいろいろあったけれどととても充実した日々でした。

 こうしてやり直す前はハロルド様の顔色を窺い、周囲の人たちからは蔑まれ、ミランダには……。

「でも王都で式を挙げて、公爵領、辺境伯領でもお披露目をするとなると大変でしょう」

 デザイナーのエイダ夫人がほほと笑みを浮かべて話かけられました。。

「そうなのです。でもお父様は公爵家でと懇願されましたし。それに王位継承権のある方の結婚は王宮の王冠の間で宣言をしないといけない決まりがあるらしく、その後はバルコニーで民衆にお披露目することにもなっているそうです」

 そう、あの時、お披露目は私ではなく、ミランダが……。

 最近どうしてもあの頃のことを思い出してしまう時があります。

 そんなことを考えているとイーサンが、

「辺境伯領の皆もリアのウェディングドレス姿は見たいと思うよ」

 ケイトもエイダ夫人の荷物の片づけを手伝いながらこちらを向きました。

「私だって見たいです! 王宮は貴族でないと入れませんし、公爵領の皆もリリーシア様の花嫁姿を拝見したいと言っていますよ。なんたってお嬢様は公爵領でお住いの方が長かったのですから」

 イーサンとケイト、エイダ夫人まで頷いていました。

「皆、リアを見たいんだよ。だから、こうなるのは仕方ない。どうしたの、疲れた?」

 やり直す前は式自体もありませんでしたから、こうして皆から祝福されての式は初めてでつい……。

 イーサンが私の目元に触れました。

 私達の雰囲気を察してエイダ夫人とケイトは応接室からそっと出ていきました。

「結婚式前の花嫁は気持ちが高ぶるものだと聞いているけど、何か心配なことでもある? いろいろと花嫁方が決めることが多いから大変だっただろうし、学院へ行きながらだしね」

 そうしてイーサンが優しく抱き締めてくれました。

 優しくそっと包み込むような腕にますます私は……。

 私は首を横に振ると、

「そうね。式の前だからかしらね……。これはそう、幸せな夢なのかと思ってしまって。目が覚めたたら私はやっぱり惨めなままだったとしたらと……」

「リア!?」

 イーサンが私を覗き込もうとしたけれど私は目線を逸らせ俯いた。

 今の顔を見られたくない。どんな顔をしていればいいのかも分からない。

 昔の惨めな私が出てきてしまう。

 そう、これはやっぱり私が死ぬ間際に見ている夢なのかもしれない。

 そんな思いが拭えないの。

 傷痕のことやお母様たちのことは変えられた。

 ハロルド様のことも……。

 それでもまだ私は私の死んだ日までは来ていない。

 もしかして、あの日になるとやっぱり私は……。

 イーサンや皆を残して……。そう思うと不安で胸が一杯になるの。

 イーサンは私を覗き込むことを止めた変わりにぎゅっと抱きしめてくれた。その腕の力強さと温かさに涙が堪えきれず。でも、イーサンに心配をかけたくなくて、

「ふふ。こうして昔からイーサンは私が不安になった時に抱き締めてくれたわね」

「それは君だって……、僕は特に何も。ただ、君が不安に思うことは全て叩き切りたいけれどね」

 少しイーサンの腕の力が抜ける。

「そうね」

 出会ってからずっとこうして二人で乗り越えてきた気がする。

 ――いいえ。イーサンがずっと側にいて守ってくれていた。

「イーサンは本当に私の騎士様ね」

「ああ。ずっとリアの専従だよ。それに騎士科の奴より強い」

 最後は急に不機嫌そうになったので思わずくすりと笑ってしまった。

 騎士科の生徒とはいろいろあったから。

「リアが笑うのだからあいつらにも少しは価値があったか」

「でも辺境伯の騎士団へ入団希望みたいね」

「まあ、うちのは実力主義だからテストに合格すれば誰でも歓迎するさ」

 そう言い切るイーサンの顔は次期辺境伯としての自信に溢れていた。

 私はイーサンに悟られないように微笑んで見せた。

 ……私が死んだのは、そう私の貴族学院卒業後……。私ではなく、ミランダとの式を終え……。

「新婚旅行はご好意に甘えて義姉上が招待してくれたイリシア帝国の皇室の別荘地だ。そちらの準備もしておかないとね」

 エブリンお姉様のことを思い出して今度は心からの笑みを浮かべた。

「ええ。そうだったわね! 準備をしなくちゃ。甥っ子に会えるもの」

 エブリンお姉様は無事ご出産されて、私にも甥っ子ができました。これでイリシア帝国も安泰だとお祭り騒ぎでした。

 前はどうなっているのかさえ聞くこともできなかった。今は本当に嬉しい。

 私が準備をしたいと言うとイーサンもそっと腕を緩めてくれたので、私はお姉様や甥っ子への贈り物はどんなのが良いのかと思いながらいそいそと部屋へと戻りました。

少し不穏な感じですが、今回は甘々イーサンの予定のはずです。

お読みいただき、評価、ブックマーク、いいね、誤字報告をありがとうございます!

コミカライズはもう少し続くのでどうぞよろしくお願いいたします。

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