35 番外編 聖なる日の贈り物(モブ執事視点)二巻発売記念
3月11日(土)にコミックシーモアさんでコミカライズの二巻が発売予定なので記念として、いつも応援ありがとうございます。こうして続けられたのも皆様のお陰です!
――聖なる夜。
ランザール王国では年が変わる日を聖なる夜として、家族で祝う日とされております。周辺諸国でも呼び名は違えど同じような祝祭日となっているようです。
この聖なる夜は家族と一緒に過ごす日とされ、大切な人達と一年の無事を祝いこれからの幸せを願いながら贈り物をする日でもあります。
そして、家族や友人等の大切な人達に一年の感謝を込めて贈り物をするため、宝飾品から食品まで幅広いものがお店で求められておりました。
お店にとっては一年の稼ぎどころといったところでしょう。年々、加熱傾向にもありました。どこかの商会が始めたとも言われていますが、今や定かではございません。でも、こんなふうに一大行事にまでなっているので仕掛け人は素晴らしい商才の持ち主だと思われます。
さて、長々とお付き合いいただいておりますが、私はこのサマーズ辺境伯家にお仕えする執事の一人です。主に館での内向きの仕事をこなしております。
今日は私の大切な坊ちゃまへの来客を案内しました。
そう、うちでお取引している商会の方です。
イーサン坊ちゃまがご婚約者のバルトロイ公爵家のご令嬢にお贈りする聖夜のプレゼントを選ぶために商会の者を呼ばれました。この時期は大変忙しいことでしょうが、我が家を最優先にしていただいておるようです。
持ち込まれた商品の数々をイーサン坊ちゃまは熱心にご覧になられています。
宝飾品からドレス、小物までいろいろと取り揃えておりました。広げられた品物が部屋を煌びやかに彩っています。
どちらかというと簡素なものがお好きなお館様はこのようなお品を選ぶことはあまりございません。お美しい方なのでさぞやお似合いだと思われますので、残念なことであります。
「こちらの品はどうでしょうか?」
「リアに似合うものが良い」
「今、王都ではこちらが流行っております」
販売員が勧めて来たのはアメジストの豪華なネックレスとイヤリングのセットになっているものでした。
幸いなことに私は坊ちゃまのご婚約者様を間近に拝見する機会が多くございます。
ですので販売員の勧めた王都で流行りのデザインの物は申し訳ありませんが、ご婚約者様にお似合いだとは思いませんでした。
しかし、私は一介の使用人です。主人の大事な商談に口を挟むなんてことはいたしません。
「それは派手過ぎる。デザインも見た目が派手な割には細工が雑に思える。リアはもっと繊細な作りの方が似合う。これでは宝石の方が負けている」
イーサン坊ちゃまの言葉に販売員の頬がひくひくと痙攣を起こしているかのように動いていました。
ですが、さすがでございます。私の坊ちゃまは良い目をお持ちでございます。
ここまでお育てした甲斐がございました。
あ、いえ。私がお育てしたと言うことではありませんが、小さい頃からお仕えしていましたのでついそう思ってしまうのです。
イーサン坊ちゃまは商品の中から小ぶりなネックレスや可愛いらしい小物を吟味して選んでおりました。
「うん。これにしよう」
「おお、お目が高い。それは細工師が手間暇かけて云々……」
イーサン坊ちゃまが満足そうに繊細な細工のペンダントとイヤリングのセットの物をお選びになられました。
ご婚約者様にはぴったりお似合いになられることでしょう。
残念ながら、まだお二人ともそれぞれの家族と過ごされるので、年越しの聖なる夜をご一緒に過ごされ贈り合うことはできません。
「これらをバルトロイ公爵家のリリーシア嬢へ」
「かしこまりました」
私は坊ちゃまから恭しく受け取って、手紙と共にそれらを公爵家へお送りする段取りをいたしました。
それから数日後、イーサン坊ちゃま宛にご婚約者様から贈り物が届いたようです。
「リアから?!」
いそいそと荷物を受け取る坊ちゃまはまるで子どものようです。学院に入って大人びたと思っておりましたが、まだまだのようです。
「リアのセンスはやっぱり素晴らしい。カフスボタンだけど光り輝いているように見える」
どうやらカフスボタンにお名前が刻まれていたようで、坊ちゃまのご機嫌は上々です。
カフスボタンを身につけられ鏡の前で確認しておられる姿はなんとも。あの幼少期に暴れ猪と呼ばれていたのが……、おおっとげふんげふん。これ以上坊ちゃまのことを申し上げてはいけませんね。
次の春を迎えると辺境伯領も華やかになることでしょう。今から楽しみでございます。
私は若奥様となられるお嬢様の姿を思い浮かべ坊ちゃまの喜んでいる姿と重ねました。
4月5日に各書店、紙媒体で発売されます。よろしくお願いいたします。




