24 今度こそ幸せになろう 本編完結
「信じられない。私はとても幸せだわ。イーサン。今、死んでもいいくらいよ!」
「そんなの困るな。リア。式はこれからなんだから。それにもっと幸せになろう」
「そうだぞ。イーサンの言う通りだ」
「本当。そのウエディングドレスもとても良く似合って綺麗よ」
嬉しそうに涙ぐむお母様とお父様。
貴族学院も卒業して、イーサンと私は結婚式を迎えた。
あのハロルド様の断罪劇から一年が過ぎた。
結局あのことは世間に知らされることはなく表向きは側妃様とハロルド様は病になり転地療養と発表された。その後一月ほどで二人とも病死と発表された。実際は地下牢で取り調べを受け最後に毒杯で死を賜ったのだ。ミランダは先に処刑されている。王族の毒殺未遂という恐ろしい罪だった。側妃に唆されたとしても重罪なことは間違いない。だからミランダの男爵家は褫爵されて、側妃の実家も表向きは別の理由を付けて降格された。
だけど王太子に決まった第一王子のアルバート様と違って民衆や貴族から人気の無かった側妃様やハロルド様のことはあまり大きな話題にもならず、直ぐに世間では忘れ去られていった。
それよりもアルバート様の王太子即位式が側妃様達の喪が明け次第されるのでそちらの方に注目されていた。
今も即位式を半年後に控え、王太子即位の記念陶器、記念のお菓子などが王都の店を賑わせている。それにはアルバート王太子殿下ご夫妻の絵が描かれていた。
そんな中、私はイーサンと辺境伯領で盛大な結婚式を挙げることができた。
お気に入りのデザインのウェディングドレスはバルトロイ公爵家とサマーズ辺境伯家の威信をかけたもので数年がかりで作られた。婚約が決まった時からイーサンと私はデザインをあれこれと考えていたのだ。
以前の紙切れだけのハロルド様との結婚からは考えられない盛大なものだった。
結婚準備を楽しめるなんて。それもとても楽しい日々だった。一つ一つ、イーサンと話し合って準備した。ちょっぴり喧嘩したこともあったけれどそれも楽しかった。
愛情の籠ったイーサンの瞳を見ると今これが現実なのだと信じることができた。
今のイーサンは全ての傷を治し、父親である王弟に似た美青年になっていた。その姿を見たご令嬢方は地団駄を踏んでいたが、懲りずにイーサンに言い寄ったらしい。でも――、
「そもそも人を見かけで判断するような女性は僕はごめんだな。人の本質も分からないような者では国境を守る者としては困るしね。僕の最愛の婚約者であるリアは酷い傷のあった僕でも愛してくれている。あの頃、君達は僕を醜いと逃げていたよね? リアは真摯に看病もしてくれたんだ。素晴らしい女性だと思わないかい? リアは姿も美しいけれど心はもっと美しいと僕は思っている。だが君達はどうなんだろうね?」
と今までの態度を引き合いに出して撃沈させたらしい。パトリシア様やサンドラ様がその様子を面白そうに話して下さった。今日はお二人もお招きしている。
「私は生きて、幸せになっていいのよね」
「勿論だよ! これからもっと幸せになろう。リア。一緒に」
イーサンが私の手の甲に口づけをした。
お父様が横からイーサンを押しのけるように話しかけてくれた。
「私の可愛い娘。リリーシア。幸せになるんだぞ。そして、何といってもお隣なのだからいつでも気軽に帰ってくるんだよ」
「はい!」
「公爵。いい加減に諦めてください。リアはそんなに帰しませんよ」
お父様に元気に返事をするとやや不機嫌になったイーサンと共に新婚旅行先であるイリシア帝国に向かう馬車に乗り込んだ。
結婚式に出席できなかったエブリンお姉様に挨拶を兼ねてイリシア帝国を訪問することになっている。皇太子殿下に招かれていて、素敵な離宮を貸して下さる予定になっている。
出発間際にお父様が馬車の側に近寄った。
「幸せになりなさい! 我が娘よ。愛してる。誰よりもお前は幸せになるんだ。……今度こそ、私はお前が生きていてくれるだけで嬉しい」
――え? 最後はなんて言ったの? お父様。……今度こそって、どういうつもりで? もしかしてお父様は――。
私達を乗せた馬車は隣国に向けて軽快に走り出していた。お父様とお母様の姿が見る間に遠ざかっていった。
「リア、楽しもうね」
「え、ええ。勿論」
私はイーサンからイリシア帝国での楽しい予定を聞いている内にお父様の言ったことを忘れてしまった。
皆に、イーサンに愛されて、愛することができて私は幸せ一杯のあまりに。
傷痕王子妃と蔑まれて世を儚みましたが、今度は幸せになりたい
了
ここまでお読みいただき、☆、ブックマーク、ご感想をありがとうございました。無事本編完結しました。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
序盤は辛いシーンが多いので読むのが大変だったかと思います。
最後は幸せを掴んだヒロインに安堵していただければと。
次話はリアの父親バルトロイ公爵視点での番外編で終わりです。
それではありがとうございました。
他の作品でもお立ち寄りをお待ちしております。(ぺこり)