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22 卒業パーティ

 卒業式も無事終わり、学園の卒業パーティ会場に私達は向かった。


 会場に着きハロルド様が私を見つけるとニヤニヤと笑っていて嫌な感じがしていた。


 しかしながら思ったような騒動もなくパーティは過ぎて、パトリシア様にもご挨拶を済ますことができた。ウェスカー侯爵令嬢のパトリシア様と良い友人になることができたのもイーサンのお陰だと思う。


 最初は私もハロルド様の寵愛を得ようとするミランダと同じように思われていたのですが、イーサン一筋と分かってもらえると逆にハロルド様の行状を謝られるようにまでなりました。


 以前なら私のことを傷物王子妃と噂する令嬢の中に彼女もいたかもしれない。


 そうして、イーサンと私は挨拶も終えたので帰ろうとしていたところだった


「ここに集まりの皆! よく聞いてくれ」


 ハロルド様の声が響いて、会場は静まりました。それに気を良くしたハロルド様は、


「私は運命の人と出会った。よってウェスカー侯爵令嬢の高慢なパトリシアと婚約を破棄し、運命の人であるリ……」


「はい! 私、ミランダでーす!」


 きゃはと奇妙な声を上げて何処からともなく現れたミランダがハロルド様の身体に抱きついたのだった。


「なっ?! ミランダ? どこから出てきたのだ。お前など関係ない!」


 ハロルド様はミランダを引き離そうとしますが中々離れません。恐ろしいほどの吸着力です。


 私は慌ててパトリシア様を探しましたがお側に姿がありません。イーサンは私の腰を抱き落ち着いて成り行きを見守っています。まあ、ここからハロルド様までの距離は大分ありますからね。 


「ハロルド様~。ミランダは嬉しいですぅぅ。ハロルド様の妃になることをやっと側妃様にお認めいただいたの!」


「はあ?! ど、どうして母上が?」


「ふふ。ハロルド様には可愛いミランダがお似合いですって言ってくださったわ。パトリシアのような取り澄ました女より私の方がずっとずっとぉぉ良いんですって! それに私は側妃様に特別に頼まれてアルバート様に……」


 会場は成り行きを黙って聞いていました。そこへ、


「そこまでだ!」


 威厳のある声が響いて、国王陛下と王妃様、その後ろには顔色を無くした側妃様がお出ましになられました。


「父上! どうして、ここに……。それに母上まで。そうか、分かりました! 私の王太子即位とその私の妃となるリリーシアとの婚約を発表しに来たのですね!」


「ハロルド、お前は……どこまで愚かなのだ」


 国王陛下の落胆を通り過ぎてお怒りの様子にハロルド様もやっとおかしいと思われたようです。陛下はハロルド様を睨んだ後、側妃様に、


「何か申し開きはあるのか? ここまでお前とハロルドが愚かだったとは、そなたの教育は間違っていたようだな」


 側妃様は顔を真っ青にされてブルブルと震え出していました。


 その姿は今まで見たことはありませんでした。私を慈悲深く見下ろすか高笑いをされる側妃様しか知りません。勿論、バルコニーから突き落とされる前の話です。今の私は王宮に一切行っていなかったですから側妃様と面会したこともありません。


 会場は静まり返っていた。陛下は溜息をつくと、


「今日はこれでお開きとする。後日、卒業パーティは王家主催で仕切り直そう。ハロルド抜きでな」


「ち、父上?!」


「騒がしい。お前と側妃は……、捕らえよ」


 はっと言う声とともに衛兵がお二人を拘束して連れて行きました。ミランダもです。


「なんでよぉぉ。邪魔なアルバート様も排除して、私はハロルド様の妃となって、今度こそ王太子妃になるのよぉぉ! なるの!!」


 見苦しく叫ぶミランダは最後まで足掻いていましたが衛兵に連れて行かれた。静まった会場で陛下がお開きと言われたので私達もそれぞれ出て行きました。






 そして、数日後、私とイーサンは王宮に呼ばれました。イーサンはこのことが分かっていたようです。私が着ていくドレスまで用意されていたのですから。ドレスの用意は数日ではできませんもの。


「一体何があるというの?」


「行けば分かるよ。リアには絶対危害を加えさせない。僕が側にいる」


 王宮の玉座の間まで通された。


 案内する侍従もいたが、私はどこか懐かしく感じていた。


 あの奥の王族専用の一室に私はいたのよね。


 ある意味見慣れた王宮でした。


 ほぼ十年ぶりの王宮です。


 でも違うのは私はもう傷物王子妃ではないこと。


 愛されて、愛することを知っている公爵令嬢になっている。


 顔を上げて微笑んで歩こう。誰にも蔑まれたりしない。


 もう心を殺した私ではなくなっていた。


 隣を一緒に歩くイーサンを眺めた。まだ彼の左側には表面だけ傷跡が残っている。


 だけど傷など関係ない。この十年で確かな絆を分かち合えていた。


 私の視線に気が付くと口元に笑みを浮かべてくれた。


「好き」


 そっと私が呟くとイーサンが私に顔を寄せた。


「僕の方がもっとリアのことが好き」


 私をエスコートする手に力が籠ったので嬉しくて踊り出しそうになる。

お読みいただき、評価、ブックマーク、をありがとうございます。

後二話で終わります。

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[良い点] —でも違うのは私はもう傷物王子妃ではないこと。  愛されて、愛することを知っている公爵令嬢になっている。  顔を上げて微笑んで歩こう。誰にも蔑まれたりしない。  もう心を殺した私ではなくな…
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