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10 運命の出会い

 ミランダ達は行為に夢中だったから気がついてはいないと思う。


 でも、私が見つけるくらいなので他の人にも目撃されていたはず。でも、あまり噂にはなっていないので今思えばミランダか相手の男子が何らかの手を回していたのかもしれない。


 こうして彼らの支配下から抜け出すといろいろなことが見えてくる気がした。


 それから私は領地に向かうべく侍女達と支度をした。何日かして準備が整うと、


「お父様も後から必ず行くからな」


 名残惜し気なお父様に見送られ私はエブリンお姉様、お母様、それにグレイお兄様と領地へ向かった。




 バルトロイ公爵領は王国でも屈指の広さを持つ。全領地を廻ると何か月もかかるだろうけれど、領主館、いえ、領主城には馬車で四日ほどで着く。早馬なら二日というところ。


 こうして馬車の窓から見える景色はバルコニーから落とされる前にはあまり見たことがなかった。


 一面の緑の草原。白い花々がところどころ咲いている。遠くに見える山脈や森の木立。


「綺麗ねぇ。お母様。あれは何という鳥かしら?」


 馬車の窓から見える景色にはしゃぐ私を暖かく見守る家族にただ嬉しくて、ますます明るい声で話しかけた。


 領主城に着くまでは領内に王都との道中に宿泊できるように建てられている公爵家の別館で休む。それぞれに領地の管理者もいてお兄様達は私と違って休むことなく彼らの報告を聞いたり指示を出したりしていた。




 そうして四日目に領主城に着いた。殆ど初めてと言っていいそのお城に足を踏み入れた。


 ……王城と比べるものでもないけれどそれなりに広いし荘厳な感じでこちらの方が好きだわ。籠城も出来そう。


「お帰りなさいませ」


 多くの使用人が出迎えてくれる。領民も好意的だった。公爵家の馬車を見ると手を休めて礼をしてくれたり手を振ってくれたのだ。


 領主城では家令や各領地の管理官達も出迎えてくれた。なんとお抱え魔法使いまでいらしたのよ。お名前はクリフ様と仰います。ご年配の穏やかな方でした。


 挨拶を済ますとお姉様達は少し休まれるみたいなので一緒に私も休んだ。お兄様はお仕事みたいね。


 時間は一杯あるから探検は明日以降にしよう。こんなにわくわくするのはいつぶりかしら?


「そう言えばわくわくするなんてことはなかったわ」


「リアお嬢様?」


 側に控えていたケイトが怪訝そうにする。


「いいえ、なんでもないわ。少し休みますね」


「はい。私はお嬢様の荷物の片づけをいたします」




 そして、ぐっすり寝てしまったのだ。昼間にはしゃぎ過ぎたみたいで気が付けば辺りは真っ暗だった。どうやら夕食も逃したみたいだった。


 使用人を呼ぶベルを鳴らさず廊下にそっと出てみる。台所で何か飲み物でも飲もうと歩き出した。


 すると暗く寝静まった領主城で人の気配がした。


 そこは客間の方でその前の廊下にいたのは帰城したときに挨拶した魔法使いのクリフ様だった。彼は元王宮魔法使いの一人で、高齢のため引退し公爵家で客分として雇われていた。


 その方が客間に入ろうとしていた。勿論そこはクリフ様の部屋ではなく、そこから呻き声が――。


 私は立ち去ろうとしたけれどクリフ様が私に気がついてこちらに声をかけてきた。


「これはお嬢様。こんな遅くにどうしたのです?」


「こんばんは。クリフ様。早く寝たのでこんな時間に目が覚めてしまって、その……」


「邸内とはいえ、夜分は危険です。お部屋までお送りいたそう」


「あ、いいえ。何か飲み物でもと思って、それに具合の悪い方でもいらっしゃるのですか?」


 平和な現在において魔法使いは戦闘というより主に治癒魔法の方で活躍している。


 大昔は魔法使いで国家間の大戦争があったのだが、協定を結び今は落ち着いている。それに魔法使いは存在自体が希少で国に一人いれば良いくらい。私は以前に王宮にいたのだろうかと思いだそうとしたけれど見た覚えは無かった。


「……じゃあ、様子を見て少し治癒をしたら、お嬢様を部屋までお送りしようかの」


 クリフ様は長いお髭を一撫ですると部屋に入ったので私も連れられて入る。


「リリーシアお嬢様は先にお休みになられたのでご説明ができませんでしたが、こちらの方はサマーズ辺境伯の嫡男のイーサン様じゃ」


 客間の寝台に寝かされているのは顔や全身を包帯で覆われた少年だった。額には冷やす手布巾も乗せられていたが、苦しそうにうなされているのでずり落ちてしまった。


 私はつい駆け寄ってそれを額に乗せてあげた。


「お嬢様!」


 クリフ様の窘める声がしたが、私には見過ごせなかった。


「……だ、れ?」


 私は苦しそうな声を上げる少年の側に寄った。


「私はリリーシアと申します。この家の娘です」


「リ、リー……」


 少年の吹き出る汗を拭おうとして辺りを見回すと公爵家の使用人が困ったように私を見ていた。使用人が控えているとは気がつかなかった。


 確かにこんな酷い状態の人を普通は放っておいたりしないわよね。

お読みいただきブックマーク、評価をありがとうございます。

やっとヒーローでました。お気づきのかたはブファと笑ってください



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