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ピリオド:ジ エンド オブ ザ リヴェンジズ;前

 アオとタチバナとマダラはカガミハラ署に連れていかれた後、簡単な状況説明を済ませるとすぐに解放された。


 再び軍警察の灰色の車に乗って現場に戻ると縞模様のテープが張り巡らされ、黒尽くめとパワードスーツが現れた廃工場前から即席の撮影編集室を設営した空きビルの前まで、通り一帯が封鎖されていた。


 車を運転してきた憲兵に案内されてテープをくぐり、内側に取り残された機材を集めてバンに積み込むと空は暗くなりはじめていた。3人は荷物を満載したバンの前に集まって、レンジが戻るのを待っていた。


「大方、機械頭の刑事に絡まれてるんだろう」


 タチバナの通信端末がメッセージの着信を知らせた。ポケットから取り出すと、レンジからだった。本文をざっと見てから、タチバナは端末機をしまいこんだ。


「レンジから連絡があった。取り調べは終わったが、用事ができたから遅くなるんだと。先に帰っていてほしいとさ」




 レンジはその夜、日付が変わって数時間してからナカツガワ・コロニーに帰ってきた。酒場のホールに顔を出すと、タチバナに「遅くなってすみません」と謝った。


 タチバナはレンジの顔を見る。背負っていた荷物を下ろしたような表情を見て、「おう、お疲れ」とだけ返した。二人はそれきり無言で、レンジは従業員寮に入っていった。


 それから二日間、ナカツガワは平穏そのものだった。タチバナは次の撮影計画を練り、マダラは撮影機材を片付けた後、地下室の工房で機械いじりに精を出していた。アオはアキとリンにカガミハラの話をせがまれながら、一緒に酒場の掃除や料理の準備に動き回っている。レンジは山に出てプラントを回ったり、町の人々から力仕事の手伝いを頼まれ、あちこちに顔を出していた。




 カガミハラの事件から二日後、開店準備のために酒場のホールにやってきたレンジに、タチバナが言った。


「メカヘッドからお前さんに連絡だ。直接会って話をしたいんだと。今日明日中に来れないか、と言ってきてるが」


 レンジはすぐに動き始めていた。


「今から行っていいですか」


「おう、明日まで有給扱いにしとくから」


「ありがとうございます。行ってきます」


 バイクを取りに従業員寮側の入り口に歩いていくレンジを、不安げなアオと不思議そうな顔をしたタチバナが見送った。


「レンジさん……」


「あいつ、そんなにメカヘッドと仲良くなったのか?」




「こんなにすぐ呼び出されるとは思いませんでしたよ」


 数時間後、レンジはカガミハラ第4地区、微かに翳りがみえる繁華街の路地裏に構えられたミュータント・バー、“止まり木”のホールでソファに腰かけていた。


「すぐにまた会えて嬉しいわよ、私は」


 給侍服を着たチドリが、レンジの前にグラスを置く。薄紅色の液体が照明を浴びて、微かな泡を立てていた。


「ノンアルコールカクテルだけど、よろしかったかしら?」


「ありがとうチドリさん」


「んー?」


「……チドリ姉さん、いただきます」


「うふふ、はーい!」


 赤くなって言い直すレンジを見ながら、チドリはニコニコしている。


 レンジの正面に座ったメカヘッドが、水の入ったコップをつつきながら二人のやり取りを見ていた。


「レンジ君を呼びつけたのは、俺なんですけどぉ」


「メカヘッド先輩に言われて、この店に来たんじゃないですか」


「なんで二人でそんなに楽しそうなんだよぉ、第一、なんでママが女給の格好して、お姉ちゃんなんだよぉ」


「あら、今日はお店も閉めてるし、せっかく弟が来てくれたのだから、私がおもてなししようと思って」


「弟! やっぱり、弟! レンジお前、チドリさんとは初対面だったんだろう? どういうことだ!」


「ははは……」


「お前の方が年上だろ! なあ、何をしたんだ? ……いや、ナニをしたかなんて聞くつもりはないんだけど!」


 ごまかし笑いをするレンジの襟を捕まえてメカヘッドが追いすがる。


「似合うかしら?」


 チドリが指先でスカートの裾をつまみ、膝をゆるめてポーズを取ると、メカヘッドは途端にデレデレして手を離した。


「似合ってますよ! 写真に撮りたいくらいだ」


「店内での撮影と録音は固くお断りいたします」


「ああ!」


 きっぱりと言われてメカヘッドが頭を抱える。


「その、本題に入ってもらえますか? 何で俺を呼んだのか……それに何でこの店なんです?」


 先ほどまでふざけた調子だったメカヘッドは手を下ろし、指を組んだ。


「署内がゴタついててな。俺が独断で動いてるのを知られるのが、ちょっとまずいんだよ。この店は信頼できるしな」


「あら、あんまり物騒な話なの? お店が休みでよかった、と言うべきかしら」


「すまないな、ママ。だが今回の件はこの店にも関係していることだ」


 気楽な様子だったチドリが姿勢を正す。メカヘッドは若くして店を取り仕切るママの顔を見てから、話を始めた。


「昨夜、この店で働いている女の子が不審者に襲われる事件があった。幸い、たいした怪我にはならなかったが……」


 話をチドリが引き継いだ。


「実はその前の夜も、ミュータントの女の子が声をかけられることがあったの。うちの店の子じゃなかったんだけどね。それで怪しいから、店を休んで様子を見ようと思ったの。……軍警察にも相談してたんだけど、いい返事をもらえなかったのよ。レンジ君とメカヘッドさんが動いてくれるなら大歓迎よ」


「ありがとうママ。実はこの不審者というのが曲者でな、証言を聞いてみると、どうやら素体剥き出しのオートマトンのようなんだ」


「でも、オートマトンなんて動かすのにも整備するのにも、すごい額の金と技術がいるでしょう。簡単に使えるもんじゃないですよ」


 話を聞いていたレンジは納得できかねていた。チドリも口を挟む。


「そんな貴重品を、たかだかミュータント娘のナンパに使うかしら? この前の撮影みたいに、着ぐるみになって人が動かしてたんじゃないかと思うのだけど」


 メカヘッドは両掌を天井に向けて首を振った。


「まず、着ぐるみって線はないだろうね。二度目の事件では、犯人は女の子を突き倒した後、近くのビルの壁をヒョイヒョイ登って逃げていったんだと。人間が着ぐるみを着てやるなら、ヘタにオートマトンを使うよりも高い技術がいる。タチバナ先輩のところは例外なんだぞ」


「サイバネ手術を受けた人なら、できるんじゃないですか?」


 レンジの投げた疑問に、チドリが答えた。


「この町では武器を持ってる人だけじゃなくて、サイバネ手術を受けた人も管理区域に住まないといけないの。厳しく管理されてるから、自由な行動は難しいでしょうね」


「ママの言う通りだな。サイバネ手術を受けた賞金稼ぎや傭兵も当たってみたが、その晩は皆、管理区域から出てないそうだ。……それとオートマトンを疑う理由がもう1つあってな。それが軍警察のゴタゴタと関係してるんだが……」


 メカヘッドは言葉を切った。


「第6地区の事件で押収したコンテナから中身が脱走した。どうやらオートマトンだったらしい」


「それは……」


「ほぼ決まり、と言っていいんだけどな。署内は責任の擦り付けあいですったもんだしてるのさ。おまけにどうやら、連中の協力者も紛れ込んでるみたいでね。どこで誰に目をつけられるか、わかったもんじゃない。だからママの店を使わせてもらった、ってわけだ」


「なるほど」


「それで、レンジには捜査の協力を頼みたくてな。こうやって呼び出したわけだ」


「わかりました。やりますよ」


 レンジとメカヘッドが握手をかわす。


「レンジ君がいるなら安心ね。私も頑張らなくちゃ」


 二人の話を聞いていたチドリがやる気満々という様子で、両手を握りこぶしにしてみせた。手首から伸びている翼もふわりと動く。


「えっ?」


 メカヘッドが固まった。


「犯人はミュータントの女の子を狙ってるんでしょう。それなら、私が一肌脱がなくちゃね!」



 初めて会った時から、レンジにとってチドリは“思いきった行動をする人”だった。


 最初の事件があった夜、黒尽くめの集団やパワードスーツを倒し、メカヘッドの取り調べから解放された後、レンジはチドリに案内されて街灯に照らされた繁華街を歩き、第4地区の路地裏にあるミュータント・バー、“止まり木”にたどり着いた。


「ただいま」


 扉を開けると、ホールで給侍していたミュータントの女の子たちが振り向いた。


「お帰りなさい、ママ」


「マネージャーが心配してましたよ」


 チドリは壁の時計を見やる。


「あら、もうこんな時間! マネージャーと話して、準備してくるわね。レンジ君は席について、待っていてもらえるかしら」


「あっ、はい」


 チドリは店の奥に引っ込み、レンジは甲虫のような灰色の殻に被われた手足を持つ女給によって、ホール中央の席に案内された。アンティーク調で統一された店は客の入りもよく、テーブルはほとんど埋まっている。レンジは片身の狭い思いをしながら、「予約席」と書かれた札が立つテーブルの前に座った。


 目の前には一段高いステージがあり、壁際には年代物のアップライト・ピアノが置かれている。周りの席を見回すと、客たちはささやくような声でお喋りしながら、ステージに意識を向けているようだった。


 女給を口説く者はいないし、女性客やミュータントの客が多いことも、レンジにとって意外だった。皆、ミサ前の救済教徒のように、何かが始まるのを待っているのだ。


 奥の扉を開けて、冊子を脇に抱え、艶やかな生地のスーツを着た白髪の男性が入ってきた。チドリがその後に続く。男性がピアノの前に座り、三つ目用の老眼鏡をかけた。チドリがステージに立って会釈すると、客たちが一斉に拍手で応えた。


「今晩もお越しくださって、ありがとうございます。ごゆっくり、お楽しみください」


 照明がゆっくりと落ち、ステージが浮かび上がる。ピアニストの指が軽快なテンポで盤上を踊り、メロディが弾け出た。


「この曲は……!」


 ことりがよく歌っていた曲だった。チドリが歌いだす。ピアノにのってステップを踏むように、軽やかに。高く歌い上げるフレーズはさらに軽く優雅に。突然の低いキーは、“溜め”を作ってから大木の幹のように太く、豊かに。


 客たちは静かに聴き入っている。レンジは目を閉じて、豊かなメロディに聴き入った。




 約一時間のステージが終わると客たちは余韻にひたりながら、三々五々帰っていった。レンジがどう動くべきか決めかねていると、四つ目の女給が「楽屋でお待ちしています チドリ」と書かれたメモをレンジに渡した。


「ご案内します。どうぞ……」


 囁くように言って歩きだす女給の後について、レンジはステージ奥の扉に入っていった。




 扉の先には廊下が続いていたが、チドリの楽屋は入ってすぐにあった。女給がノックすると「はーい」と返事があり、ショーの高揚から頬を薄紅色に染めたチドリが出迎えた。


「さあ、どうぞ」


 楽屋の中に通され、言われるままにテーブルの前に座る。チドリは「ジェネレータで淹れたものだけど」と言って、紅茶のカップを置いた。


「ありがとうございます。よかったですよ、舞台」


「そう言ってもらえると嬉しいわ」


 レンジは紅茶を一口飲み、カップをソーサーに戻した。


「一曲目のあの歌……」


「ええ、私がことりに教えたの」


「気に入ってたみたいで、よく歌ってましたよ。他の歌も、聴き覚えのある曲ばかりで」


「そうなの! 少し前の曲だったけどあなたに聴かせようと思って、急いで差し替えてもらって、よかったわ。……あの子は?」


 レンジは両膝を押さえつけるように手をのせた。


「一年前に死にました。ヨシオカに射たれて……」


 チドリは静かに聞いていた。


「そう」


 立ち上がって、レンジに背中を向ける。


「ことりから何度か、手紙が届いてたの。あなたのことも、いつも書いてあってね。だから初めて会った気がしなかったんだけど……そう。最近は手紙がなかったから、どうしてるのかと思ってだけど、そうだったのね」


「俺は、ことりを守れなかった」


 チドリは振り向いた。


「ヨシオカに執着されていたのは私だもの。ひどい因縁を残したのは私」


「それが、ヨシオカはあの後、ことりにつきまとうようになって……」


「ろくでもないやつね」


 そう言って笑うチドリの目尻に、光るものがあった。レンジはうつむき、チドリは両手で顔を覆った。




「お見苦しいところを見せて、ごめんなさい」


 数分で泣き止むと、チドリは顔を拭いてレンジに向き直った。


「いや、いいんです。……ナカツガワに戻らないといけないんで、そろそろ行きますね」


「そうなの。一晩くらい泊まっていったらいいのに」


「勘弁してくださいよ……」


 動揺して目をそらすレンジを見て、チドリは愉快そうに笑った。


「あら、うちは“そういう”営業はやってないのよ。あなたは弟みたいなものだから、特別よ。……“そういうこと”が目当てなら、蹴りとばしてたけど」


 レンジは苦笑いした後、ライダースーツの懐に手を入れ、指環と反対側ーー右の隠しポケットから、灰色のメモリーカードを取り出して、テーブルに置いた。


「録り貯めていた、ことりの歌です。俺はまだ、聴けてないんですけど」


 チドリは手に取ると、ぎゅっと握りしめた。


「ありがとう。今度は一緒に聴きながら、色々話せるといいわね」


「それじゃあ、また」


 戸口から出ようとするレンジに、チドリが声をかける。


「待ってるわ。その時には、もう少し畏まらないで話をしてくれると、お姉さん嬉しいな」


 レンジは振り返って笑った。


「チドリさんの方が年下じゃないか。……また、すぐに顔を見せるよ」




 チドリが「暗い中でも目立つように」と着替えている間、レンジは“止まり木”の入り口横の壁にもたれて、三日前の夜を思い出していた。


 ベルが乾いた音を立てる。


「お待たせ」


 白いドレスに着替えたチドリが、扉を開けてやって来た。


「よく似合ってるよ」


「ありがとう。本当はエスコートしてもらいたいのだけど」


「まあ、距離を取って後ろから追いかけるから」


「頼りにしてるわね」


「『おーい、俺もモニターしてるんだが』」


 二人のつけたインカムに、メカヘッドの声が聞こえた。近くに停まったスポーツ・カーに待機しているのだった。


「メカヘッドさんも、よろしくお願いしますね」


「『はい! お任せください!』」


 チドリは「うふふ」と笑って歩き始めた。夜の町に蝶が舞うように、スカートが緩やかに翻り、闇に溶けていく。


「よし、俺も始めますか……!」


 レンジは銀色のベルトーーライトニングドライバーを腰に巻き付けた。


「“変身”!」


「『OK, let's get charging!』」


 掛け声と共にベルトのレバーを下ろすと、力強い音楽とシャウトが響いた。


「『ONE!』」


 道行く人々が驚き、振り返る。


「『変身シーンを初めて見るんだけどさ』」


 カウントと音楽を聴きながら、メカヘッドが言った。


「『TWO!』」


「何ですか?」


「『このやたらノリノリな音楽とシャウト、どうにかならんもんなの?』」


「『THREE!』」


「どうにもならないですね。気にしないでください」


 すっかり諦めたレンジがあっけらかんと言うと、インカム越しにチドリが吹き出す声が聞こえた。


「『……Maximum!』」


「俺はもう馴れました!」


「『そう……ヒーローも大変だな』」


 街灯に照され、雷電スーツが鈍く輝く。金から青にグラデーションがかかったラインが走った。


「『"STRIKER Rai-Den", charged up!』」


「よし!」


 雷電が左掌に右の拳を打ち付けると、両手の間に雷光が弾け飛ぶ。道行く人々の視線を集めながらチドリの後を追い、カガミハラの繁華街を歩き始めた。



 まだちらほらと人の姿が残る大通りを、白いドレスのチドリと雷電スーツを身につけたレンジが、距離をとって歩いていた。オートマトンだと思われる不審者が出没したのは、しばらく歩いた先にあるうら寂しい区画だ。


「『ねぇ、レンジ君』」


 個人通話回線を開いたチドリが、歩きながら話しかけてきた。


「チドリ姉さん、何かあった?」


「『いえ、大丈夫。ちょっと二人でお話ができそうだったから。……レンジ君は、どうしてナカツガワまで来たのかな、って』」


「それは……ことりが話していた“憧れの町”だったから。俺には他に居場所はない、って思ったから、かな」


「レンジ君は、ことりと一緒にここまで来たのね」


「どうかな。……チドリさんは、その……」


 レンジが言葉を濁すと、チドリは微かに笑った。


「『私がナカツガワの手前で落ち着いてることが気になるのよね』」


「タカツキを出る前に、ことりの部屋を整理したんだ。チドリさんからの手紙も、何通も出てきた。けど、カガミハラにいるってことは書かれてなかったから、ことりも、そして俺もナカツガワにいるんだと思ってたよ」


「『私もね、ミュータントだけが暮らす町に憧れていたの。でも、この町で一休みしようと思った時に、町で暮らすミュータントのことが目に留まったの。この町ではミュータントだからってひどい迫害を受けることはないわ。オーサカやナゴヤのサテライト・コロニーとは比べられないほど治安もいいし』」


「うん」


「『でもね、居場所はないのよ。仕事もないし、よるべになるコミュニティーもない。町の人から無視されているの』」


 レンジは無言で聞いていた。


「『諦めた人は細々と暮らしてる。若い人は定期便を使ってナゴヤ方面に行くわ。危険なオールド・チュウオー・ラインに分け入ってナカツガワを目指す人は殆どいないの』」


「それで、この町でミュータントのために働こう、って思ったんだね」


「『できることをしよう、と思って動き回っていたら、あっと言う間に数年が経ってしまったわ。ことりからの手紙には、ナカツガワにいるはずの私を応援するメッセージがあって……でも、私は本当のことを言えなかったの。結局夢は叶えられなかったのだから』」


 二人は歩き続ける。人通りが減り、灯りも少なくなってきた。


「チドリ姉さんは、何も後ろめたく思うことはない。ことりだってきっと、話を聞いたらあなたをもっと尊敬したと思う」


「『ありがとう。……レンジ君、私、ことりの歌を聴いたの』」


 チドリが話を続けようとした時、インカムがピロリと音を慣らして新しい通話回線が開いた。車内から通りを監視していたメカヘッドが、グループ通話を始めたのだ。


「『想定エリアよりちょっと離れてるが、ヒギシャが来た。二人とも警戒を』」


「『はい』」


「了解」


 二人が答えて数秒後、男が反対側から道沿いに歩いてきた。日中は暑いと言ってもよい陽気が続いているというのに、冬物の長いマントを着ている。軍帽を目深に被り、俯き気味で表情は窺えなかった。男は足を軽く引きずりながら歩き、チドリと10メートルほど離れた街灯の下で立ち止まった。


「『見られてる……!』」


 チドリがそう言って立ち止まると、男は小刻みに震えはじめた。


 チドリが後ずさる。一歩、二歩、三歩。男の震えが激しさを増した。


 悲鳴を上げてチドリが走り出すと、男はがくりと前傾した。と思うと喉の奥から吐き出すような悲鳴をあげ、チドリに向かって駆け出した。


「A,aaア、アッ、アッ、ち、ちちち、ちっ、ちdoりィィィっ!」


 姿勢を変えずにチドリに追いすがる。駆けながら速度を増し、手が届こうとした時、




「やらせんよ」




 駆けつけた雷電が男の顔を殴りつけた。




 チドリは道路脇に停まったスポーツ・カーに走り込む。意識の外から一撃を喰らった男は回転しながら吹っ飛び、街灯の支柱に打ち付けられて倒れた。


「『見事だ、ヒーロー』」


「いや……」


「『ああ、これからだ』」


 男が殴られた頬をさすりながら起き上がる。


「『そいつは人間か?』」


 帽子が脱げて、つるりとした頭部とカメラアイがあらわになった。マントもはだけて手足が街灯に照らされ、金属質の光沢を放っていた。


「こいつは確かに、オートマトンだが……」


 オートマトンが口元ーースピーカーの周りを拭う。


「『この人間らしすぎる動きは何だ?』」


 よろめきながら立ち上がると、オートマトンは両手で頭を抱えた。


「アア、ア……ち、ちち、ちっ、ちっchiドり……? O,ooオれはァァぁ……? あっ、アア、こここっ、こトriりりり……!」


 激しく身震いしながら、存在しない頭皮を掻きむしる。


「錯乱してる……?」


「『今だ、捕まえろ!』」


「了解」


 雷電が駆け寄ろうとすると、オートマトンは地面を蹴った。


「跳んだ!」


 オートマトンは街灯の上に跳び乗ると、雷電を睨み付けてからビルの隙間に潜り込んだ。雷電も後を追ってよじ登るが、オートマトンは既に消え去っていた。


「やられた……」


 人の姿が消え、コンクリートの建物群をオレンジ色の街灯が照らしている。


「『まずは姫様が無事だったことをよしとしよう。“止まり木”に戻るぞ』」


 インカムからメカヘッドが呼び掛けた。


「了解」


 雷電スーツを解除すると、湿気をはらんだ重い夜風がレンジの頬を撫で、通りを吹き抜けていった。




 “止まり木”に戻ると、メカヘッドのスポーツ・カーが店の前に停められていた。


「ただいま」


 レンジが店に入ると、カウンター席に腰かけていたメカヘッドが殺気がこもっているかのようにセンサーライトを光らせたが、すぐに普段の調子に戻った。


「レンジ君、お疲れ様。チドリさんも無事で、ホシのアタリもついた。今夜の捜査はひとまず成功だ、そうだろう?」


「ええ……」


 店の奥からチドリも顔を出す。


「お疲れ様、レンジ君」


「チドリ姉さんもね。随分顔色が悪いよ」


 チドリは微笑んでいたが、顔は青ざめていた。


「ありがとうレンジ君」


 そう言いながら、手早く模造コーヒーを淹れてカウンターに置いた。


「どうぞ。……もう遅いからデカフェにしたけど、よかったかしら?」


 レンジはチドリに向かいあって腰かけた。


「いただくよ」


 カップに口をつける。軽く傾けてからコースターに戻すと、チドリが口を開いた。


「あのオートマトン、私の名前を呼んだわ。それにことりの名前も」


「うん」


「あれは、ヨシオカだったんじゃないかしら」


「それは……」


「チドリさん、ヨシオカはもう死んでる」


 レンジが否定できずにいると、黙って話を聞いていたメカヘッドが口を挟んだ。


「あれはヨシオカじゃない。どうしてあなたの名前を呼んだのかはわからんけどな。……とにかく、今日は大変なことが多すぎた。早く休んで、しっかり眠ったほうがいいよ」


 レンジも頷く。


「俺が見張ってるから」


「あっ、レンジばっかりずるいぞ! 俺も寝ずの番をするから、大船に乗ったつもりでいてくれよ!」


 チドリはくすりと笑った。


「二人ともありがとう。しっかり休ませてもらうわね」


 チドリが店の奥に引っ込むと、ホールにはレンジとメカヘッドが残った。


 メカヘッドが手元のコーヒーカップを取ると、下顎に当たる部分がぱかりと開いた。カップを傾けて、中身を流し込む。


「そうやって飲むんですか……」


 顎パーツが元の位置に戻り、メカヘッドはコップを置いた。


「うん、レンジに見せたのは初めてだったか。それならもう少しインパクトがある見せ方をしたほうが……いや、そんなことはどうでもいい」


 そう言いながらメカヘッドは席を立った。何かを見るわけでもなくホール内を歩き回ってから、レンジに向き直った。


「レンジ、君はあのオートマトンをどう思った?」


「そうですね……気になることは色々ありますけど、一つ言うなら……人間らし“すぎる”」


 メカヘッドは手近な椅子に腰かけて脚を組んだ。


「そうだよな! あまりに人間臭かった。必要のない動きまで、無理やり再現させられているような……」


「あるいは、機体そのものに人間の意識がとりついて動かしているような……」


「おいおいレンジ、君までオカルトじみたことを言い出すのか?」


「説明しにくいんですけどね、チドリさんの言ったこと、わかる気がしますよ」


 メカヘッドは自分の頭をポンポンと叩いた。


「……君が殺したんだろう?」


「ええ」


 レンジは動じず、確信を持って答えた。


「死んだ奴を蘇らせるなんて、旧文明だってできなかっただろうな」


 レンジは黙りこむ。


「だが、まあ、あのオートマトンに何か仕込みがあったのは事実だろうな。今回の捜査はいいネタになった。これで上も、重い腰を上げるだろう。……今夜は我らが歌姫が、穏やかに眠れることを願うばかりさ」


「……そうですね」



 その夜は結局、何事もなかったかのように明けた。チドリがコーヒーにバタ付きパン、そして茹で卵とフライドビーンズがついたナゴヤ・トラッド・スタイルのモーニング・プレートを持ってホールにやって来ると、三人は早目の朝食をとった。


「ママ、ごちそうさま。レンジもお疲れさん。俺はあのオートマトンのことを調べてみるよ」


 食事を済ませるとメカヘッドはそう言って、朝焼けの町に出ていった。レンジも大きく伸びをする。


「レンジ君、これからナカツガワに帰るのよね。でも、ちょっと休んでいった方がいいわ」


 勧められるまま、“止まり木”の従業員控え室を借りてベッドに寝転がる。チドリが歌の練習をしている声が遠くから聴こえてきた。簡素な作りの家具が置かれた天井の低い部屋に、タカツキでことりと暮らした従業員寮の屋根裏部屋を思い出しながらレンジは目を閉じた。




 ことりに手を出さずに眠りについた明くる朝、どこか安心したような、しかし目尻を吊り上げたバーのママにこってり絞られながら代金を支払うと、レンジはまだ目覚めぬタカツキ・サテライトの路地裏をさまよい歩いていた。そこまで広い町ではなく、すぐに一回りすると再びバーの近くに出てきた。


 これからどうしようか、まずは今夜の寝床と働き口を探さなければ。


 レンジは携帯端末を取り出した。タカツキの都市内回線に接続していると、


「……放してください!」


 聞き覚えのある少女の声が耳に入った。見回すとバーから1ブロックほど離れたごみ捨て場の前で、大小二つの人影がもみ合っていた。


 昨夜同じベッドで眠った赤毛の少女ーーことりが、大柄な中年男に腕を掴まれていたのだった。男は下腹を中心に贅肉がついてだらしなく太っているが、広い肩幅や太く締まった脚や手に、かつて鍛え上げられていた頃の面影が残っていた。胸元には保安官であることを示す、花を象った金色のバッジが留められている。たるんだ肉に埋もれた目の奥に暗い炎を燃やし、ことりを睨んでいた。


「お前は酒場の娘だろう。チドリはどこへ行った!」


「言いません! ……放して! 人を呼びますよ!」


 悪徳保安官がせせら笑い、少女を掴む手に力を込めた。


「嫌!」


「誰を呼ぶってんだ、この町で! 腰抜けの副保安官が来たところで、怖くも何ともないわ!」


 デッカーが吼える。血の気が失せた顔でことりがうなだれた時、レンジは携帯端末をかざして近付いていた。数メートルの距離まで近づくと、端末に向かって叫ぶ。


「オーサカ・セントラル保安部ですか? 保安官が市民に暴力を振るってます! 場所は、タカツキ・コロニーです!」


「『はい、こちらセントラル保安部です。通報ありがとうございます。音声と映像は鮮明に届いています』」


 携帯端末のスピーカー越しに、セントラル保安部が答えた。悪徳保安官は青ざめ、ことりは一筋の希望に力を得て顔を上げた。


 デッカーのポケットから鋭い電子音が鳴り響く。保安官は少女の腕を放すと、慌てて連絡端末を取り出した。


「『ヨシオカ正保安官、応答してください。こちらオーサカ・セントラル保安部管制室です』」


 起動ボタンを押すと、大音声のスピーカー通話が始まった。ヨシオカは慌てて端末を操作するが、スピーカー通話は解除できなかった。これは命令であり、警告でもあったのだった。


「『……ヨシオカ正保安官?』」


「はい! 管制官、応答が遅れ、申し訳ないです!」


 ヨシオカが慇懃に謝る。解放されたことりは、レンジに走り寄った。


「『ヨシオカ正保安官、タカツキ・コロニーで6時32分40秒に緊急通報が入っています。管制室は貴官を、本件の重要参考人として手配しました。ついては当該通報より24時間以内に、報告書を提出しなさい。証拠として提供を受けている映像の閲覧を希望する場合は、タカツキ保安官事務所の通信端末から、資料請求書式のメールで12時間以内に申請しなさい。命令違反あるいは、報告書の内容に疑わしい点があった場合、貴官の保安官資格は剥奪されます。尚、報告書を受理した後オーサカ・セントラル保安部への出頭辞令を通告します。これは“保安官並びに巡回判事に係わるセントラル・サイト間協定”に基づいた正式な通告です。また、通話内容はオーサカ・セントラル保安部が録音し、証言として利用できるものとし

ます。何か疑問点はありますか?」


 ヨシオカの顔は通信端末からの通告を聞きながら赤くなったり、青くなったりしていたが、ついにはくすんだ紫色になり、両手を握りしめて震えだした。


「ヨシオカ正保安官?」


「はい! 委細承知致しました!」


 即座の返答を要求する管制室からの呼びかけに慌てて答えると、保安官の端末はぶつりと音をたて、通信を終えた。


 ヨシオカは携帯端末をポケットにしまい込み、録画を続けるレンジとその背中に隠れて様子を伺うことりを睨んでから足早に立ち去った。


 デッカーの姿が見えなくなると、レンジも録画をやめて大きなため息をついた。


「レンジ君!」


 背中にくっついていたことりが声を震わせて、そのまま抱きついてきた。


「ありがとう……怖かった……」


 レンジはそう言って泣くことりの頭を、優しく撫でたのだった。




 レンジはことりに連れられて、バー“宿り木”に戻った。ことりはレンジを自分の部屋に住まわせることを提案し、二度寝しかけたママとレンジを仰天させた。ママは激怒したが、ことりは引かなかった。ヨシオカとの一幕を話すと、ママも渋々折れた。


「ことりや他の子にも、ボディーガードが必要だろうね。だが、犬猫を拾ってくるんじゃないんだ。一緒の部屋なんて許可できないよ!」


 そうしてレンジは“宿り木”の屋根裏部屋に住まいを得て、ミュータント・バーの雑用兼、女給たちのボディーガードとしての仕事にありついた。


 ことりはその頃、夜の“宿泊”客を取らずに、昼の女給仕事を続けながらバーの歌姫として生計をたてることを決心していた。夜毎、女給の尻を目で追う客たちの前に立って歌った。はじめは気にも留められなかったが、ことりはめげなかった。


 数週間たち、何ヵ月も歌い続けるうちに、歌を目当てにする客たちがやって来るようになった。ことりに言い寄る不埒者はいたが、レンジが間に入って引き下がらせた。


 ことりはレンジの部屋に入り浸るようになり、とうとうママも一緒に暮らすことを認めた。


 二人で過ごした日々が、色鮮やかな走馬灯となって、現れては通りすぎていく。そして、


 満月が雲の割れ目から覗き、タカツキ・サテライトの裏路地を照らす。横たわることりは胸を撃たれ、息も絶え絶えだったが尚、白磁の人形のように美しかった。


 近くのごみ捨て場には胸と頭を撃たれて絶命したヨシオカが突っ伏している。レンジはヨシオカの銃を手にしていた。この銃から放たれた弾丸が、二人を撃ち抜いたのだった。


 焦点の定まらなくなった瞳で、ことりがレンジを見上げる。唇が震えながら動いた。




 レンジは昼前まで眠り、チドリのノックで目を覚ました。胸のポケットに手を当て、指輪の感触を確かめてから起き上がる。


 ホールに降りてまかないの昼食までいただいてから、開店前の“止まり木”を後にした。店の外に出て笑顔で手を振るママを見て、従業員たちは「あれがママの連れ合いか……」等と、ヒソヒソと話し合った。


「あなた達?」


 レンジが角を曲がり、姿が見えなくなると、チドリは笑顔のまま振り返った。


「とても元気なようだから、今日は開店前までみっちり店の大掃除をやってもらいますからね」



 黒い雲が空を覆い、風が粘り気を増す中、レンジはバイクを走らせた。


 ナカツガワ・コロニーの門をくぐる頃までは持ちこたえていた天気も、ヘルメットをトランクに入れ、バイクを押して町中を歩き始めた途端に崩れた。激しい土砂降りを背中で受けとめながら、レンジは酒場に向かった。


 バイクを軒下に停め、“白峰酒造”の扉を開ける。


「只今帰りました」


 カウンターではタチバナがグラスを磨き、ホールでは酒場で引き取られて暮らすアキとリンが模造麦茶のピッチャーを脇に置いて、大きな紙に覆い被さるようにして何かを描いていた。


「おう、おかえり」


 タチバナが入り口を見て言うと、子ども達も顔を上げた。


「レンジ、おかえり!」


 犬耳のアキが返す。鱗肌のリンは「おかえり!」と言うなり立ち上がって、店の奥に顔を突っ込んだ。


「アオ姉、レンジ兄ちゃん帰ってきたよ! すっごく濡れてる!」


 店の奥から、パタパタとスリッパの走る音が響く。


「レンジさん、おかえりなさい!」


 アオは頬をうっすら染めて、手に持っていたバスタオルを差し出した。


「ずぶ濡れになっちゃいましたね! シャワー使いますか?」


「ありがとう、使わせてもらうよ」


 頭をごしごしと拭いているうちに、マダラも顔を出す。


「レンジおかえり。ひどい雨だな。サンダーイーグルは無事かい?」


「今は普通のバイクだろ」


 レンジは笑った。


「今回はそんなに無茶をしてないはずだ。軒下に停めてるよ」


「裏に回して、診せてもらっていいか?」


「助かるよ」


 マダラはすぐに動き始めていた。扉の前で振り返る。


「これもメカニックの仕事だ。レンジはシャワー浴びて、さっぱりしてきなよ」


「ありがとう。……おやっさん、マダラ、後でちょっと、見てもらいたいものがあるんだ」




 酒場の暖簾をかけると、馴染みの客たちが次々とやって来た。ホールでは注文と料理が行き交い、バックヤードでは食器が右往左往して、新しい料理が盛り付けられるや、ホールに戻っていった。レンジはホールに出ると、客たちから昨夜は何をしていたのかと尋ねられた。皆話題と娯楽に飢えているのだ。レンジは曖昧に笑って、バックヤードに食器を片付けた。


 住民たちの半数以上がやって来ては、胃袋を満たして帰っていくと、アオは店の暖簾を下ろした。


「それでレンジ、見せたい物って何なんだ?」


 壁には工具が掛けられ、そこかしこにジャンクパーツが転がるマダラの地下工房。ライトニングドライバーとタブレット端末を載せた作業机を囲み、男三人が顔をつき合わせていた。アオは先に部屋に帰っていた子ども達の様子を見に、従業員寮に戻っている。


「マダラに頼んで、雷電スーツのカメラから映像をサルベージしてもらったんです」


 レンジが映像データを立ち上げる。白いドレス姿のチドリが、こちらに走り込んでくる姿勢のまま静止画となって映された。


「誰だ、この美人」


「そこじゃないですよ。再生しますね」


 レンジが画面に触れると、チドリは瞬く間に画面の向こうに消えていった。奥からマント姿の人影が、おぞましい叫び声をあげて突っ込んでくる。画面の中に鈍い銀色の腕が伸び、走ってきたマント男を殴り飛ばすと、男は勢いよく吹っ飛んで街灯に直撃した。


「おい、これ……」


 問いただそうとするタチバナを、レンジが制した。


「説明は後でします。見せたいのは、もう少し先です」


 倒れ伏せた男は、すぐさま口元をぬぐいながら起き上がった。カメラがゆっくり近付いていく。


 帽子を失い、マントがはだけて、オートマトンの素体が街灯に照らし出される。オートマトンは立ち上がり、両手の指で頭部装甲を削るように掻いた。カメラがさらに近づこうとすると手を止めて睨みつけるようにアイカメラを向け、跳び上がって建物の陰に消え去った。


 レンジが映像を停める。


「どうです?」


 タチバナは「うーん」と声を出して唸った。


「メカヘッドとこんなことやってたんだな、お前……」


「すいません、事後報告になっちゃって」


「いや、それはいいんだ。何かワケありだとは思ってたし、あいつはふざけたやつだが、ふざけたことはしないからな」


 そう言った後、タチバナは「さて」と言ってレンジに尋ねた。


「こいつは一体、何なんだ?」




 レンジがカガミハラのミュータント襲撃事件と、その犯人だと思われるオートマトンについて説明すると、二人は更に難しい顔になった。


「こいつがオートマトン……?」


 タチバナが画面をコマ戻しにしながら言う。


「この前の撮影みたく、着ぐるみなんじゃないか?」


 マダラが画面を停止させた。


「いや、この手足や首の関節を見てくれよ。こんな細い中に、人間の体は入らない」


「だがなあ、お前さんがこしらえたみたいな、パワーアシストのついた着ぐるみに人間が入らなきゃできないだろう、この動き」


「この前の着ぐるみ、パワーアシストはついてないよ」


「はあ?」


 口をあんぐりと開けたタチバナを気にせず、マダラは話を続けた。


「メカニックから言わせてもらうと、こいつはオートマトン、あるいは全身義体化したサイバネ者だろう。そうとしか言えない」


「けど、サイバネ手術を受けた人じゃないらしい」


「メカヘッドが言ったのなら、確かだろうな。じゃあ、これはオートマトンか」


「認めたくないけど。ここまで人間らしい動きをさせるために、どれだけ複雑なプログラミングが必要になるか……俺は専門外だけど、すごく手間がかかるのはわかるよ。できなくない、と思うけど。でも、わざわざするかな、こんなこと……」


 そう言ってマダラが黙り込む。タチバナは手を叩いた。


「とにかく、こいつがあの工場から出てきたオートマトンだってことは、メカヘッドも俺たちも合意したわけだ。そこから先は、一旦現場の奴に任せよう。また何か動きがあれば、向こうから連絡を取ってくるだろうからな」


 タチバナの言葉で会議は終わった。階段を上がろうとするレンジに、マダラが声をかける。


「レンジ、アオと話をしてやってくれないか。昨日から心配してたみたいなんだ」


「わかった。ありがとう」


「まあ、男友達との仲を取り持つなんて、俺だってあまりやりたくないけどな」




 従業員寮の3階にある子ども部屋では、子ども達がようやくそれぞれのベッドに入り、すやすやと寝息をたてはじめたところだった。窓には激しい雨が打ち付けているが、遊び疲れた二人はもはや気にならないようで、安らかな表情で瞳を閉じている。


 アオは椅子に腰かけてアキとリンを見守っていた。二人が寝ついたのを確かめると立ち上がりかけたが、床に落ちていた画用紙を見つけて手に取った。


 オニクマやダガーリンクス、その他よくわからない怪物をやっつける“ストライカー雷電”が紙いっぱいに描かれている。画用紙を文机の上に置くと、アオは眠る子ども達を見て微笑んだ。



 カガミハラのメカヘッドから連絡があったのは、翌日の夜だった。タチバナはその日のうちに方々に連絡を取り、翌日の昼過ぎには自治会の寄合に出かけていった。


 残った三人が酒場の開店準備を済ませてホールに集まっていると、タチバナが帰ってきた。


「ただいま。皆、準備ありがとう」


 そう言うと軽く咳払いする。


「今週末のカガミハラ買い出しも、うちが担当する事になった。レンジとマダラ、それと俺で行くから、よろしく頼むぞ」




「この前も行ったのに、またカガミハラに行くの?」


「大人ばっかりずるいよ!」


 翌朝、カガミハラに運ぶ作物を満載したトラックとレンジのバイクが“白峰酒造”の前に停まっていた。見送る子ども達が口を尖らせる。


「どうしても、俺が顔を出さなきゃいけない要件ができてなあ。すまんな。お前達のことは、アオに頼んでるから」


 運転席のタチバナが謝ると、助手席のマダラが顔を出す。


「ごめんよ、お土産買ってくるよ」


「ごめん、行ってくる」


 レンジも謝り、トラックとバイクは正門に向かっていった。


 不満タラタラの子ども達は、アオに肩を抱かれて仕方なく二台を見送った。トラックの姿が見えなくなると、アオの大きな両手が二人を包んだ。


「わっ」


「アオ姉……?」


 アキとリンが見上げると、アオはニコニコして言った。


「私たちも、行っちゃおうか……!」


 二人の返事は決まっていた。


「うん!」




 前回は撮影機材を積んでいた“白峰酒造”のバンに、アオとアキ、リンの三人が乗り込んで走り出した。正門前に着くと、守衛のゲンが岩のような顔を出した。後部座席のアキとリンは、急いで身を隠す。


「あれ? アオちゃん、タチバナさんたちはついさっき出たけど……どうかしたの?」


「大急ぎで届けなきゃいけないものがあるんです」


 アオは昨夜から練習していた通りに言い訳した。


「そっか。気をつけてな」


 ゲンに見送られて正門を抜けると、アオは大きなため息をついた。子ども達が顔を出す。


「アオ姉、大丈夫?」


「ありがとうリン。大丈夫、慣れないことをして緊張しただけだから」


 アキは首を伸ばしてあちこちを見回し、初めての冒険に目を輝かせている。


「ナカツガワを出ちゃったあ……!」


 アオは背筋を伸ばし、しっかりとハンドルを握り直した。


「さあ、カガミハラに行くよ! 私、一人で運転するのは初めてだけど、頑張るから!」




 アオは幸い、カガミハラへの道をよく覚えていた。しかし藪の中に隠れた轍をたどり、わずかな目印を頼りに荒野を行き、断崖の道や遺跡の橋を渡るのは、子ども達にとってはそれだけでスリルに満ちた大冒険だった。


 獣道から飛び出して瓦礫のオールド・チュウオー・ラインに乗り上げる。車が目指す先に、木々の間から灰色のカガミハラ城塞が見えてきた。疲れの色が見えてきた子ども達が、顔を真っ赤にして歓声をあげる。


「よかった、何とかついた……」


 城門に向けて車を走らせながら、アオは小さい声で独りごちた。




 “白峰酒造”の社員IDを見せると、あっさり入城許可が下りた。車を駐車場に停め、三人は“会津商店”の前に張り込んだ。店の前には、ナカツガワ・コロニーのトラックが停まっている。黒服達が店からぞろぞろと出てきて、トラックの積み荷を運びはじめた。


「そろそろ出て来るはず……」


「来たっ!」


 黒服の列にまぎれるようにして、店からレンジが出てくる。


「後を追うよ……!」


 アオが声を忍ばせ、身を屈めて尾行を始めた。


「おっちゃんとマダラはいいの?」


「いいの!」


「待ってよ、アオ姉!」


 アキとリンも、慌ててアオを追う。


「絶対、何をしてるのか突き止めるんだから……!」




 レンジは人のまばらな大通りを歩いて先週と同じ店を見て回り、ナカツガワに持ち帰る物を買い集めていた。少し離れた物陰にアオが潜み、更に後ろに子ども達が、買い与えられた棒つきキャンディを咥えながらくっついていた。


「ここまでは、いつも通り……」


「普通に『来ちゃった!』って言ってさ、一緒に買い物したらいいじゃん」


 隠れるのに疲れたアキが言う。


「まだだめ。きっと何かあるから……!」


 アオは確信を持って返した。


「あっ!」


 リンが小さな声で叫ぶ。


「誰か来た!」


 指をさした先には、黒いドレスの女性がレンジに手を振っていた。レンジも手を上げて返す。


「きれいな人……」


 リンはうっとりして言った。両手首から翼が生えたミュータントの美女はレンジに歩き寄る。短く言葉を交わすと、レンジは女性が持っていた買い物袋を受け取った。二人は並んで大通りを歩いていく。


「レンジ兄ちゃんの彼女かな?」


 少し興味が出てきたアキが言うと、アオを気にするリンがたしなめた。


「アキちゃん!」


「うふ、ふふふふ……」


 アオが笑いはじめる。


「アオ姉?」


 満面の笑みを浮かべながら、アキとリンを左右の手でつまみ上げた。


「わっ!」


「後をつけるよ……逃がさない……!」


「ひええ……」


 長い髪を逆立てんばかりの気迫に、子ども達は震えながら運ばれていった。




 くたびれたライダースーツ姿の男と艶やかなドレス姿の女は親しげに語り合いながら、徐々にうらぶれた通りに入っていった。


 アオはアキとリンを抱えたまま二人を追う。相変わらず人通りは少なく、長身の女性ミュータントの奇行が注目を集めることはなかった。




 やがて男女は、飴色のレンガで飾られた店の前に入っていった。扉が閉まるのを確めてから、アオは店の前に立つ。


 リンがもぞもぞ動いて顔を上げた。


「アオ姉、ここなんの店?」


 ミュータント・バーだと気づいてアオは固まった。


「アオ姉……?」


「こっ、こんな店に昼間から? ででで、でも昼間からそんなことはないだろうし……いや、同伴ってことは、やっぱりそんな……だめ、こんなところに二人を連れていくわけには……でも……」


 アオがブツブツ言いながら顔を真っ赤にして悶えていると、すっかり落ち着いたアキがするすると地上に降りた。


「中にレンジ兄ちゃんがいるんだろ、とっとと入っちゃおうよ」


 そう言って勢いよく扉を開ける。


「こんにちはー!」


「あっ、ちょっと、アキ!」


 元気な声であいさつするや飛び込んでいくアキを追いかけて、アオもリンを抱えたまま、ミュータント・バー“止まり木”の中に入っていった。



 アキが店の中に入ると、女給と話し込んでいた機械頭の男が振り返った。


「ん?」


「わっ」


 頭についたセンサーライトの光が、アキの顔を捉える。


「ママかパパはどうした? 子どもが一人で入る店じゃないぞ」


「えっ、えっと……」


 アキがまごついていると、アオが追いついてきた。さっとアキが後ろに隠れる。


「ごめんなさい、何かやっちゃいましたか、この子?」


 メカヘッドは自分の頭をポンポンと叩いた。


「ああいや、子どもが来るなんて珍しいな、と思いましてね」


「あら、うちはちっちゃい子も歓迎よ」


「メカヘッド、設営終わったぞ」


 店の奥からチドリが出てきた。後ろからタチバナも続く。


「ママ!」


「マスター!」


 タチバナが驚いて固まると、その後ろを歩いてきたマダラとレンジが背中にぶつかった。


「ぐえっ」


 タチバナとレンジの間に挟まれて、マダラが声をあげる。


「アオ、お前さんなんで来た?」


「ごめんなさい、私……」


 店に入るまでの勢いを失っていたアオがタチバナに謝ると、後ろに隠れていたアキが顔を出した。


「おっちゃん達ばっかりずるいぞ! いつも僕たちを置いていってさ!」


 リンもアオの腕からするすると降りる。


「アオ姉は、私たちを連れてきてくれたんだから!」


 アオも顔を上げた。


「私に何も知らさないで、何か大事なことを勝手に進めているのが嫌なの!」


「お前達……」


 タチバナが答えに困っていると、チドリがぽん、と手を叩いた。


「まずはお昼にしましょう! これからの事は、ご飯を食べながらゆっくり話をすればいいわ」




 気が立っていた子ども達も、初めて見る「お子さまランチ」を前にすると目を輝かせた。アオも皆と一緒にカレーライスを食べると、随分落ち着いたようだった。


 食事を済ませるとアオを含めたナカツガワの面々とメカヘッド、チドリは店に残り、アキとリンは女給達に連れられてカガミハラ観光に出ることになった。


子ども達は「また大人達だけで話をする!」と不満気だったが、メカヘッドが「関わったらお前達が危険に曝されるだけじゃない。もしお前達が人質に取られたり、悪い奴等に教われたら、アオさんや雷電はお前達を守ろうとして、もっと危険な目に遭うかもしれん。それでいいのか?」と尋ねると、二人は黙って考えてから、女給たちと一緒に出かけることにした。


「メカヘッドさん、ありがとうございます」


 メカヘッドは「まあまあ」と言ってアオに頭を上げさせた。


「危ないことをしようとする子どもをとめるのも、おまわりさんの仕事ですからね。……それじゃ、あの子達が帰ってくる前に話を終わらせましょう」


「はい、では皆さんをVIPルームにご案内しますね」


 そう言ってチドリが店の奥に入っていく。レンジ達も続いた。




 一団は店の奥の、廊下の先にある大きな部屋に通された。


「普段はあまり使っていないから、埃っぽかったらごめんなさいね」


 チドリが部屋の照明スイッチを入れると、渋みのある年代物の木材でしつらえた内装が、艶やかな光沢を放った。ところどころに蔦草や花の浮き彫りが施され、シャンデリアに照らされている。


 テーブルや椅子、棚にライトスタンドといった家具類も調度が統一され、上品にまとめ上げられていた。部屋の中央に置かれた大きなテーブルにはノート型、タブレット型を取り混ぜて、数台の端末機が並べられていた。


「ここが、今回の操作本部だ」


 メカヘッドが皆に向けて言った。


「それぞれのメンバーでは、把握している情報が違っているだろう。新しく分かった情報もある。事のあらましから、順を追って話そう」


 メカヘッドは資料のファイルを片手に話し始めた。




 約一週間前、ナカツガワ・コロニーからやってきた撮影グループが、カガミハラ市街の第6地区で動画撮影をおこなった。この撮影が同地区内に潜伏していた闇取引シンジケートのアジトを刺激した。10名からなる構成員が撮影班を襲撃するも、返り討ちに遭うという事件が起きた。襲撃犯は全員逮捕され、装備品とアジト内の資材や薬物はカガミハラ署の倉庫に収容された。


 しかし収容物の一つ、大型コンテナには特殊なセキュリティがかけられていた。アジト内の電気機器回線から発生する信号を受信し“続けなければ”、ロックが解除される、というものだ。果たしてコンテナのロックは外れ、中に入っていたオートマトンの素体が起動し、マントと帽子を盗んで脱走した。ここまでが最初の事件が起きた日の夜に起こった出来事だ。


 翌日、二日目の深夜に次の事件が起きた。第6地区と第7地区の境界に当たる区画で、夜遊び帰りの若いミュータント女性がオートマトンに襲われた。被害者は腕を掴まれ、もがいて軽い怪我を負った。ミュータントは抵抗されると女性を解放し、「違う」と言い残して道沿いの建物をよじ登って脱走した。


 三日目には午後11時頃、このミュータント・バー、“止まり木”で働く女性が第6地区で襲われた。オートマトンは被害者を押し倒して怪我を追わせるも、すぐさま逃走。この時に不明瞭なうめき声をあげていたという詳言がある。


 四日目の夜、おとり捜査をしていたチドリがオートマトンに襲われる。オートマトンは錯乱した様子でチドリの名前を叫びながら迫るが、雷電に殴り飛ばされると逃げ去った。これが午後10時頃のことだ。




「少しずつ、事件が起こる時間が早まってきている?」


 レンジが言うと、メカヘッドは頷いた。


「一昨日にはオートマトンは現れなかった。大きく変化したのは昨日……最初の事件から六日目の夜だ。午後8時30分頃、第5地区の大通りにオートマトンが現れた。マントも帽子も身に付けず、素体をむき出しにしていた。オートマトンはぎこちない動きで、通りすがった二十代の非ミュータント女性を追い回した。数人の男性が制止しようとしたが振りほどき、両手も使って四つん這いの姿勢で追いすがった。通報を受けて軍警察が駆けつけるとオートマトンは逃げ出して下水道に身を隠した。女性は無事だが、数人の男性が骨折などの大きな怪我を負っている」


 タチバナが人さし指を立てると、メカヘッドは手でさして発言を促した。


「昨日襲われたのは真人間の女性と言ったか? ターゲットに変化があるな」


「先輩が言う通り、確かにミュータントではなかったんですけどね。……オートマトンはやっぱり『チドリ』と口走っていたそうです。相変わらず錯乱しているような素振りもあったそうなので、ターゲット自体は変わってないんでしょう」


「狙いのブレがひどくなってるだけかぁ」


 メカヘッドの話に、マダラが返した。


「そういうことになるね。ところが人通りの多い中、非ミュータントに襲いかかったということで大変な話題になった。町を見たらわかるだろうが、住人たちの多くはすっかり怯えて家にこもっている」


「アキとリンは、大丈夫なんですか?」


「出没時間が早まってきているとはいえ、オートマトンは日が沈んでからにしか現れなかった。だから、多分大丈夫だ、としか言いようがない」


 アオの問いに、メカヘッドは断言を避けた。


「そうですか……」


「店の女給さんたちには気を付けるように頼んでいるし、非常通報装置も持たせている。何かあったら、すぐ駆けつけることができるようにしているよ」


 メカヘッドが慰めるように答えると、アオは「わかりました」と返した。


「大変な状況になっていることはわかったが、なぜお前は軍警察を指揮しないで、こんなところにいるんだ?」


 タチバナが尋ねると、我が意を得たとばかりに「そこですよ!」とメカヘッドが言った。


「チドリさんが襲われかけてから色々調べたんですけど、実は今回の事件、なかなかの厄ネタが絡んでましてね」


 メカヘッドは思わせ振りに言葉を切った。


「……旧文明の技術でもできなかったことって、わかりますか?」


 タチバナを除く一同はあっけにとられていたが、付き合いの長いナカツガワ・コロニーの保安官は、後輩の悪癖にため息をつく。


「お前、悪い癖も変わらんな……だが、そうだなあ、不老長寿とか、か?」


「お付き合いくださり、ありがとうございます先輩。ですがそれは遺伝子治療とサイバネティクス手術で、ある程度達成されていたと言えましょう」


 アオが手を上げる。


「ミュータントをふつうの人間にする、とか?」


「それは確かに達成できませんでしたね! ですが例えば、通常の生活を送るのが困難なほどの変異を旧文明の遺伝子治療や外科手術で緩和させるということが行われてきましたし、ミュータント同士、あるいはミュータントと非ミュータントの間に子どもを作ることが難しい場合には、旧文明の技術で否妊治療を成功させる例もあります。これらも、広い意味では当てはまるでしょうね」


「えーっ? ……でも、そうかあ」


 アオが半ば丸め込まれるようにして納得させられると、「よーし!」と言ってマダラが手を上げた。


「完全自律思考が可能なAI、これはどうだ?」


「なるほど、さすがに技術者は違いますね。確かに旧文明ではデータ蓄積型の第一世代AIが主流で、自律思考を目指した第二世代AIは、結局うまくいきませんでした。……ですが、今回はハズレです」


「ええー?」


 マダラはテーブルに突っ伏した。


「レンジ、君はどう思う?」


 メカヘッドに尋ねられて、レンジは頭を掻いた。


「永久機関……?」


 メカヘッドは“お手上げ”と言わんばかりに両手を上げる。


「それは反則だろう!」


 レンジは肩をすくめ、他の回答者達は不満そうにメカヘッドを見た。チドリは皆のやり取りを見守りながら微笑んでいる。メカヘッドは「さて!」と仕切り直して、トークショーを再開した。


「今回の事件に関わる、旧文明の見果てぬ夢、それは……死者の再生です」


(続)

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