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過去と今と

 毎週金曜の夜が楽しみだった。

 早めに課題済ませて、お風呂に入って髪の毛をドライヤーで乾かして準備は万端。

 まだかな?まだかな?ってスマホの通知チェックして寝付けないほどには、私の欠かせない楽しみの一つで。

『みなさん、こんばんは!』

 通知が来たら観に行く配信。正直、恥ずかしくってコメントはあまりできない……。

 私の推しの声が今週も聞けた……!大袈裟かもしれないけれど、挨拶一言だけでもテンションが上がるんだよなぁ。

『今日は、ペンネーム――……』

 見ている間に進んでいく司会進行。

「いつか私も投稿してみたいなぁ……」

『では、また来週お会いしましょう』

 画面越しの憧れの人はにこやかに微笑んで手を振っている。

「まぁ、そんな勇気あるわけないけどね」

 ひとつため息をついて、布団に潜る。















 ピピピッ ピピピッ

「懐かしい夢みたなぁ……準備しないとっ!」

 規則正しいアラーム音で目が覚める、月曜日の朝7時。

 パパッと手軽にできそうな目玉焼きをハムを添えて焼いて、その間に昨日買っておいた食パンをトースターにかける。

「あれから10年かぁ……私も大人になるはずだな~」

 出来上がりの頃合いを見計らって、バターを程よく塗った食パンを齧る。

 うん、最高の朝だ。

 食べ終えた料理の食器はスポンジに水を含ませて、簡単に洗う。

 そのあと、とりあえず歯磨きをする。

 当時、高校生だった自分も早10年経てば社会人になってる年齢なことに一人納得する。

 一人暮らしをしている部屋の壁掛けカレンダーには、今日の日付に丸がつけられている。

 その下には、控えめに27歳おめでとうと書いてある。

「誕生日だけど、仕事頑張ろう。誕生日だからこそ、がんばるぞー!!」

 と、自分で自分を励ますけど、職場の同僚や上司には悟られたくないという本音。

 ゆったりとしたつくりのパジャマから、スーツに着替える。

 いつもより気合を入れて、メイクに取り掛かる。

 いよいよ、出勤の時間だ。






「おはようございます」

 電車を何駅か乗り継いで、街中を少し歩くと、そこが私の通う会社。

 心なしか出勤の挨拶も臆せずできるようになってきた気がする。

「おはよう、東雲さん。実は今日、新入社員が来るんだよね~」

 くるっと回転式の椅子ごと振り返る柔和な笑顔が印象的な上司様。

「そうなんですか?!私ったら全く知らなかったです……」

「急だけどよろしくね。あ、そうそう、アドバイスやフォローは任せたよ、東雲しののめさん」

 だがしかし、大抵その表情の時には裏があるわけでして……

「……はい」

 面倒事頼まれた……と、内心悔し泣きしながら、渋々首を縦に振る私であった。



「しっかし、この時期に新入社員ねぇ……一体どんな人なんだろう?」

「ほんとそれ!私もそう思ってるんだよ~」

 始業前の、準備時間。

 ヘアゴムで動きやすいように髪を一つに括りながら、同僚の女の子に返事をする。

「まぁ、里香りかは、先輩として舐められないように注意してね」

「ガンバリマス……」

 同僚のなぎさが私の両肩に手を置いてやんわりと告げる。

 その顔が満面の笑みだから、私はもう縮こまって返事をするほかない。

 先輩風なんてどうやって吹かすのよ……。

「今日から、うちの部署で働くことになった、西川にしかわ はるか君です。わからないこと多いと思うけど、東雲さんになにかあったら聞いておけば間違いないから」

「よろしくお願いします……」

東雲しののめ 里香りかです。よろしくお願いします……」

 黒髪の青年。といえば、聞こえはいいけれど、乱雑に切りそろえられた黒髪のせいで顔色をうかがうことすら困難だ。黒縁眼鏡といえば、インテリそうなイメージだけど、もはやその前髪のせいですべてが台無しである。

 なんだ、この……もさっとした暗そうな男子は!

 これが私、東雲 里香の西川 遥に対する第一印象でした。

ありがとうございますm(__)m

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