ロープライス☆ヘルウマ
よろしくお願いいたします。
この作品は第6回おおくま杯・戦慄杯の投稿作品です。
主旨はお手数ですがおおくま杯ページをご覧いただくとして、自分でも納得のいく当て馬作品として機能しました。
オフィス内に怒号が飛ぶ。
絵に描いたようなバーコード頭が光を放つ。
怒号の発信源はその男だった。
「このハゲェ!!違うだろォ!?」
ハゲはお前だろとその場にいた誰もが思った。
怒鳴られている男、木幡 久もそう思っていた。
しかし目の前のハゲ、前田 梅蔵は課長、木幡の上司であったので逆らえるはずもない。
うんざりする説教に木幡が目を逸らすと窓の外に異形の怪物が見えた。
「あぁ!?『ノミテェーナー!?』」
「何ィ!?貴様、説教中に酒を飲みたいだと!?」
「課長、違います!窓の外!」
やがてサイレンが響き渡る。
街の人々は逃げまどい、建造物は怪物の一撃で崩れていく。
オフィス内でも社員は一目散に逃げ出していった。
「チッ、おい木幡!テメェあとで説教の続きだからな!」
それだけ言い残して前田も非常口に駆けていった。
「ふぅ、こんな時でも何なんだあの人は……まぁいい」
誰もいなくなったオフィスで木幡は白い割り箸(のように見える魔法のステッキ)を取り出した。
片方を口で咥え、もう片方を右手で掴み、割る。
すると、木幡は淡い光に包まれた。
光が消えた頃にはそこにはくたびれたスーツの男はなく、純白のフリフリ衣装に身を包んだ美少女がいた。
「ツンとしびれるわさびの刺激、旨っ!たこわさ!」
彼はヘルシーでウマウマな美少女戦士、ヘルウマとして地球を守っていた。
「ノミテェーナー!そこまでよ!ピリリ光線!」
十字に組んだ腕から緑の光線が怪物に飛ぶ。
しかし、あっさりと弾かれた。
怪物はその巨大な腕をたこわさごと壁に叩きつけた。
「かはっ!わたし、ここで死んじゃうの……?」
その時だった。
緑色のボーリング大の玉が幾重にも重なって去来し、怪物に着弾、吹き飛ばした。
「なに!?」
「みてらんないわぁ、たこわさ」
上を見ると、少しおでこの広めの美少女が緑のゴスロリ衣装に身を包んで信号機の上に足を組んで座っていた。
「えだまめ!」
組んだ足を解き、ふわっと信号機から飛び降りた。
軽やかに着地し、えだまめはたこわさの隣に並んだ。
「さっさと終わらせるわよ」
「うん!」
二人の美少女は片手でお互いの手を握り、もう片方の手を怪物に向ける。
『コレステロール!コントロール!』
掛け声の直後、全ての脂肪を燃やすかのごとく核融合の炎が怪物に放たれた。
オカンジョウオネガイシマスゥ。
か細い断末魔と共に、怪物は消滅していった。
『お酒はほどほどに☆』
激しい死闘の後、たこわさは急いでまだ誰もいないオフィスに戻って変身を解いた。
「ほっ、あのハゲはまだか」
「誰がハゲだと?」
木幡の後ろには音もなく前田が立っていた。
「か、課長!いらしたんですか!すいません、口が滑って、いや、それよりもお説教の続きを……」
「今日はもういい。私も疲れたから帰る」
「そ、そうですか!お疲れ様です!」
胸をなでおろし、木幡は疲れたので自分も帰る事にした。
それにしてもえだまめにはお世話になりっぱなしだ。
どこの誰かは知らないが、毎回助けてくれるし、可愛いし、あんな子と付き合えたらな、と木幡は思った。
自分と同じヘルウマなら何らかの割り箸を持っているはずだが……。
そんな木幡をよそに、去り行く前田の背広の内ポケットから緑の割り箸がちらりと顔を覗かせていた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
筆者コメント①
頑張って書きました。
ちょっとレギュレーション違反ではないかとも思いましたが最後にとんでもない恐怖が置けたのでまぁいいかなと。
まぁ今は男性もプリキ〇アになれる時代なのでオールオッケーです。
しかしまさか企業戦士が美少女戦士になってると誰が予想できるでしょうか。
そういう意表もうまくつけた傑作に仕上がったと思います。
感想1
コレステロール!コントロール!
感想2
「ある意味で一番こわい!」って作品はいろいろあるけど、こんな意味でひねり出してくるの凄すぎますね。あとの展開を想像すると怖いっていうのは理想的なホラーの終わり方の一つですが、まさにこの作品も当てはまってて侮れない。
筆者コメント②
頑張ったと言えば頑張りましたがどちらかと言えば息抜きで書きました。頑張ったのは字数削るくらい。
ふざけたやつ書きて~、でも前回の朗読杯の手はもう使えないしな~、じゃあ思いっきり見えてる地雷で罠として使うか!
最近核融合も書いてないし!いえーい、久しぶりの二重水素と三重水素の化学反応だー!と生まれたのがこれです。
名前も超適当、アナグラムで順番入れ替えていらないもの捨てればたこわさとえだまめになります。おいしいよね。
燃やすぜ脂肪。要らないブラック企業。