33.〜最終章2 「愛すべき黒猫へ」〜
「な、なんやあの力は・・・・」
「信じられない・・・鮫島さんってあんなに強かったのか!」
一方的に斬り付ける鮫島の攻撃は、かつて茨木童子と戦ったときの比ではなかった。
「うおおおおっ!!」
それは怒りなのだろうか?それとも憤怒か?いずれにしても凄まじい攻撃力を帯びた鮫島の猛攻がゲノムを襲った。
鮫島は息を切らしながらも斬り付ける事を止めず、とうとうゲノムの肉体を4等分に切り裂いてしまった。
しかし、何度でも再生するゲノムには一時の痛手に過ぎず、しばらくするとすぐに再生してしまった。
それでも全身から闘志を漲らせる鮫島の姿はまさに圧巻だった。「侍」とはこういう姿を言うのであろう。
「食らえぇ!!」
宙に舞った鮫島の鬼三が振りかざされると、ゲノムの後部に位置する部分が吹き飛んだ。
「やった!!」
「鮫島のヤロー、やりやがったぜ」
パイフーが叫んだ。
「はあ・・・はあ・・はあ・・・」
鮫島の体はもはや限界を突破している。極度の疲労に極度の動き。そのダメージが一身に注がれる。
そのため吐き出される呼吸の乱れも、既に常軌を逸していた。
頭部の吹き飛んだゲノムだったが、案の定再生を繰り返し、頭部が肉体に融合した。
だが完全なるノーミスではなかったらしく、動きがわずかだが乱れていた。
ゲノムとて元は人間の融合体。いくら痛みを感じないとは言え「破壊」の二文字は避けられない。
しかし、それにはゲノムの身体を残す事など吹き飛ばす事が条件となっている。
刀での攻撃しか出来ない鮫島にとって、最初から勝利は無いのである。
刀でゲノムをコナゴナにする事は不可能だからだ。
「ニンゲンニシテハ、ヨクヤッタナ・・・・」
「なにを・・・・」
「コロス」
「ぐはああっ!!」
鋭い鋭利な触手が、鮫島の腹部を完全に捉え、そして貫いた。
「あ・・あああ・・・がああ・・ぐう・・・」
「聖!!」
「鮫島さん!!」
「鮫島!」
鮫島の腹部を貫いた触手はそのまま左右に動き、痛みを倍増させる。
「があああああああっ!!ぐがああああっ」
鮫島の口から夥しい鮮血が溢れる。
「鮫島!!て、てめぇ!!」
その時、ずっと立ち往生していたパイフーがゲノム目掛けて突進した。
その勢いで鮫島から触手は抜かれ、鮫島は地面に倒れた。
「聖!!聖!しっかりしろ!」
鬼三が叫ぶ。
「鮫島さん」
ゲノムがパイフーによって吹き飛ばされたのを確認すると、等々力が鮫島に駆け寄った。
「まずい、貫かれている・・・・このままじゃ・・・」
「大丈夫か!?」
鬼武も駆けつけた。
「がふっ!!」
鮫島の吐血は止まらない。
「だ、誰か聖を・・・聖を助けてくれ」
鬼三の悲痛な叫びが響く。だがその時だった。
「これを使うのじゃ」
「だ、誰だ!」
そこには奇妙な狐がいた。だが通常の狐とは違う・・・。何とも説明しがたい雰囲気を醸し出していた。
「お前は、月読!!」
月読と呼ばれた狐の手には小さな小瓶があった。
「お前さんを助けるのもこれが最後じゃてな」
「つ・・・月読・・・か・・」
月読は小瓶の中身を鮫島に振りかけた。すると瞬く間に吐血は止まり、出血も止まった。
「これは血を止める効果があってのう。ただ貫かれた傷口までは塞がらんがね」
それでも出血の止まった鮫島の顔に生気が戻って行く。
「感謝するぞ、月読」
「これでワシの役目も終わりじゃな」
鬼三の言葉に月読が答えた。
「フン!どうやら助かったみてぇだな。鮫島」
「パ、パイフー・・・な、何をするつもりだ・・・」
息も絶え絶えな鮫島が言った。
そうしている間にもゲノムがこちらに向かってくる。
「バケモノヤロー、鮫島を殺すのは俺様なんだよ。勝手な真似されちゃ困るってもんだぜ。
今度は俺様が相手だ!!かかってこい!!」
「イワレルマデモナイ・・・・」
「パイフー、止めろ!!適いっこないぞ!」
「鬼武・・・俺様は誰だ?」
「えっ・・」
「俺様はお前を愛する白虎、パイフーなんだぜ!誰が誰に負けるって!?」
「パイフー・・・」
「俺様がこんなクソヤローに負けるはずねぇだろ・・・・」
パイフーの身体から鮫島と同様の凄まじい闘気があふれ出した。
「俺が・・・俺様がこの世で一番強いんだ!!!!」
「パイフー!!」
「うおおおおおっ!!」
まるで爆風のような風を巻き起こしながら、パイフーがゲノムに襲い掛かる。
凄まじい音を響かせ、パイフーの拳がゲノムに突き刺さる。
そう、それはまさしく「突き刺さる」だった。一突き一突きが確実にゲノムを身体を貫いた。
しかしゲノムもバカではない。パイフーが拳を繰り出すたびに鋭利な触手がパイフーを襲った。
「痛くねぇんだよ、こんなもん!!」
持ち前の強靭な巨漢と筋骨隆々の肉体。その全てをフル稼働させ、ゲノムの触手を致命傷の手前で抑えている。
極太な肉体だからこそ成し得る偉業だ。
だがダメージは回避できない。いくら痛くないと強がってみても、既にパイフーの身体は血に塗れている。
(鬼武・・・)
「パ、パイフー!?」
その時、鬼武にしか聞こえない一種のテレパシーのような声が響いた。
(お前と出会ったのは何時だったっけかな・・・長いようで短かったが、楽しかったぜ)
「パイフー、お前・・・何考えてんだ!」
鬼武の額から冷たい汗が流れる。パイフーが死ぬ気であることが分かったからだ。
その間にもパイフーの猛攻は続く、文字通り戦う白虎である。
(出来ればこの先もずっと一緒に居たかったがな・・・)
「おい、止めろ!パイフーよせ!!」
「うおおおおお!!コイツは俺が連れて行く!!」
もはやこれが最後の攻撃となるであろう動き。パイフーはゲノムの背後にしがみつき、そのまま天高く舞い上がった。
そして自らの身体を逆様にし、そのまま一気に急降下を始めた。
このまま地面に叩きつけられれば、もはやパイフーの命は無い!!
「パイフー!やめろ!!」
鬼武が叫んだ。
「バカな事を!」
鮫島も叫ぶ。
「くそったれ!!」
「そう上手い事行かすかいな!!」
「な、なに!!」
いつの間にかパイフーの背後に羅刹が居た。羅刹の聖魔刀はゲノムの触手を切り裂き
パイフーとゲノムの身体が引き離される。
「カッコ付けよう言う気持ちは分かるさかい。せやけど、誰も死なせへん!!」
間一髪のところで難を逃れたパイフーは、血塗れの身体で何とか着陸。一方のゲノムは地面に叩きつけられ見るも無惨な姿となった。
だがそれも束の間。ゲノムは再び再生する。
「今度はワイが相手や。バーサーカー羅刹、ナメとったらあかんぞ!!」
凄まじい暴風と共に、羅刹のフルパワー、バーサーカー羅刹がそこに居た。
END




