31.〜頂上決戦、ウル vs ゲノム〜
忘れられた孤島「煉獄」の地下では大量のマグマがうねりを上げていた。
元々煉獄には火山と成る山脈があったのだが、数年前のウルとの戦いのときに山脈は消失。
今では島のあちこちに巨大な穴が開いており、その地下でマグマが煮えたぎっていた。
いつ大爆発を起こすか分からない状況の中、一台のランドクルーザーが煉獄に到着した。
ゲノムは煉獄の高台である丘の上、その丘に口を開く火口にいる。
その事を知っていたウルは誰も居ない煉獄を静かに移動した。
ランドクルーザーが高台の入り口に着くと、ウルは車を降り、後部座席から液体水素が入ったドラム缶を二つ取り出した。
そして両手でそれを持ち上げると、火口の位置口でそれを置いた。
「なんとまあ、醜い姿になったもんだな」
火口の真下でやはりウルが来る事を知っていたゲノムは静かに佇んでいる。下から上へとウルを見上げ
「グルルル」と叫び声を上げた。
今すぐに液体水素を使うわけには行かない。例え火口に流しても、避けられるのは目に見えている。
ある程度攻撃をして弱らせ、直接液体水素を掛けなければ意味が無い。
「やってくれたな、ゲノム。礼をしに来たぜ」
「カミゴロシ・・・ウル・・・ヨウヤクミツケタ・・・サイゴノテキ!!」
火口にいたゲノムは一気に飛び上がると、まるで同じ土俵に立つように、ウルと向き合った。
煉獄は相変わらず小刻みな地震が巻き起こり、地鳴りが響く。
「これで魔界も変わる。お前を始末して、それで終いだ!!」
「グワアアア!!」
両者のぶつかり合う音が響いた。
同じ頃、煉獄まで残り1時間と言う場所まで辿り着いていた羅刹たちは、眠っていたパイフーと鮫島を起こし
最後の決戦の向けて話し合いが始まっていた。
魔矢が残したメモにはある程度の戦い方が記されていた。勿論、メモ通りにやったからと言って上手く行くと言う保証はないが
羅刹たちに取っては未知の強豪だ。参考になる戦術があるならそれに沿うしかなかった。
「ええか?そんな感じで戦うんや」
「まったく、何故こうもムカつくヤツと組まなければならんのだ!!」
「それはこっちのセリフだぜ!もっとマシな戦略はねぇのかよ!」
鮫島とパイフーががなった。
「しゃーないやろ。あんさんたち個人が持ってる能力を活かすためにはこれしかないねん」
どうやら等々力と鬼武は納得しているらしい。
「チッ!」
「くっそ〜!!」
「ねぇ、ちょっと見て!!」
「どうした!」
もはや煉獄が肉眼でも確認できる場所まで来ると、前方の至るところで激しい爆発と炎が上がっているのが見えた。
「多分ウルよ。ゲノムと闘っているんだわ」
「マジかよ!!」
鬼武とパイフーは身を乗り出して前を見た。等々力と鮫島も窓を開けそれに習う。
だがまだウルとゲノムの姿は見えなかった。
「そろそろ準備しておいて。後少しで着くから」
由佳の言葉に一同は息を飲み、そして緊張感が張り詰めた。
状況はウルが劣勢だった。ゲノムの猛攻はほとんどウルには通用していない。時折放たれる刃の触手には手こずったが
一見すると誰もがウルの勝利を確信するだろう。しかしウルの攻撃が致命的になっていない点は否定出来ない事実である。
「こいつ・・・以前より厄介になりやがって」
致命的な弱点の無いゲノムだが、無数の心臓に無数の脳とあっては、どれが本体のコアなのか判断が付かない。
的確なダメージを与えなければゲノムを弱らせる事は出ないのだ。
その辺、ウルには不利だった。やはりスタミナと言う問題が生じる。
「フン、弱点がないなら、その弱点らしきもん全て潰すまで!!」
急降下したウルはその拳で無数にあるゲノムの眼球、そして心臓や脳を潰しに掛かった。
もはやそれしかない。致命的となる場所が無数にあるのなら、その全てを潰せば良い。
そうすればいずれは最後のコアに辿り着く。ウルは文字通り鬼の形相で潰しに掛かった。
しかしそう簡単にさせてくれないのがゲノムである。
打ち込まれたウルの拳に異様なまでに繁殖した触手が纏わり付く。
「くっ!!」
半永久的に再生を繰り返すゲノムに対し、人間であるウルの身体はモロい。
いくら「ある秘密」が隠されているとは言え・・・。
「ぐおおお!!」
ゲノムは巨漢のウルを軽々と持ち上げ、今にも噴火しようとしている火口に頬リ投げた。
「ぐっはっ!」
叩きつけられた衝撃で岩石が背中に刺さる。流れ出す鮮血。形勢逆転とはこの事である。
「コレデオワル・・・ナニモカモガ・・・」
ゲノムはウルの手を踏み付けた。
「クソッ!」
万事休す・・・、これでは何のために液体水素を用意したのか分からない。
使い暇も無く終わってしまうのか・・・。
「そうは行くかいな!!」
その時、凄まじいスピードで影が移動すると、ウルの手を踏み付けていたゲノムが後方へと吹っ飛んだ。
「ら、羅刹!!」
「危ないとこやったのう〜」
そこには羅刹がいた。いや、羅刹だけではなかった。すぐそばに由佳がおり、パイフー、鬼武、鮫島、等々力がいた。
「あ、あれが、神殺し・・・ウル・・・」
「ああ、アイツだよ。コンビニであった男・・・」
パイフーと鬼武が驚愕したように言った。
「あわわわわ・・・やっぱり来るんじゃなかった!!」
等々力はもはや半ベソ状態である。
「あれが神殺し・・・・」
「噂通りの男だな。凄まじい威圧感を感じる」
鮫島に続き、鬼三が叫んだ。
「お前たち、何しに来た」
「何しにって決っとるやないか。ゲノムを始末しに来たんや」
「バカな!!お前たちの手に負える相手ではない」
「せやかて、あんさん一人でも勝てそうに無いやんけ」
「・・・・・」
「ウル、無理だよ。一人で戦おうなんて」
「由佳」
「おいおい!どうでも良いけど、あのヤロー来るぞ!!」
パイフーが叫んだ。
視線の先には案の定無傷のゲノムがいた。こちらへ向かってくる。
「ジャマナレンチュウバカリ・・・ゼンインマッサツ!!」
「由佳ちゃん、ウルの傷見たってや」
「分かった」
「準備はええな?あんさんたち」
「おうよ!!」
「覚悟は出来ている」
「やっぱり帰ろうかな・・・」
「今さら嘆くな、等々力。いつでも良いぜ!!」
「マッサツ!!」
「行くぞ!!」
最終章、第一局面の幕が開かれた・・・。




