29.〜異色のタッグ?パイフー・鮫島 vs 羅 刹
「チッ!」
「ゼェ・・・ゼェ・・・クソッ!、なんだよこの展開は!?」
異色のタッグによる戦いはまだ始まって数分である。にも関わらずパイフー、鮫島の息は大きく上がっていた。
特にパイフーは既に肩で息をしており、疲労が大きい。
一方の鮫島もまさかこのような事になるとは想像もしていなかったような表情になっている。
しかし、同じ剣客として一番驚いていたのは、やはり鬼三だった。
羅刹から繰り出される聖魔刀の威力は、否応無しに鬼三の嫌な部分を攻撃してくる。
聖魔刀から放たれる邪気は、鬼三にかなり大きなダメージを与えていたのだ。
同じ刀でも相性と言うものがある。何が理由だか分からないが、羅刹の聖魔刀と鬼三は相性が悪いようだ。
「強い・・・・」
開いた口が塞がらない。そんな感じで鬼武が呟いた。
「これが、魔界No,4の実力ですか・・・」
等々力の額から冷たい汗が流れる。
「アイツ、また強くなった。今となってはもう魔矢より上かも知れないわ」
いつも茶化す相手である羅刹を見て、由佳は思わず息を飲んだ。
「なんや、二人掛かりでこんなもんかいな。話にならんのう」
「な、なにっ!!」
先ほどから羅刹は一切攻撃をしていない。ただ縦横無尽に注がれる鮫島とパイフーの攻撃を受け流しているだけだった。
鮫島の攻撃も、パイフーの攻撃も、一度たりともヒットしてないのだ。
「それにしても気にいらねぇ・・・なんでてめぇと一緒なんだ」
「バカ言うな、俺だって死ぬほど嫌なんだ」
相変わらず仲の悪い二人である。
「これでNo,4なのか・・・その上にいるあの三人はどんだけ強いってんだよ」
鬼武が言った。
「そう思うでしょ。だけどそのうち二人はゲノムにやられてしまった。ゲノムはこんなもんじゃないって事ね」
「やっぱり来るべきじゃなかったな、魔界なんて」
等々力の後悔はまさに先に立たずである。
「鬼三、行けるか?」
「なんとか・・・ただあの刀はどうも苦手だ。長期戦は致命的になる」
「大丈夫。ここから本気で行く」
「出来れば短時間で済ませてくれ」
「ああ、任せろ」
鮫島の目付きが変わった。
それと同時に鮫島の変化に気付いた羅刹は同じように構えた。
「ケケ、どうやら火ぃ点けちまったようやな」
「行くぞ」
「上等や」
羅刹が言い終える前に、鮫島の姿は消えた。
「き、消えた!!」
鬼武が叫んだ。
既に鮫島と羅刹は遥か上空まで舞い上がっていた。
剣と剣がぶつかり合う金属音が響く。凄まじいぶつかり合いが始まった。
「鮫島さん、ありゃマジだな」
普通の人間である由佳には何が起こっているのか見えなかった。それほど凄まじいスピードで互いに攻撃し合っている。
「俺様を無視するな!!!」
無性に腹が立ったパイフーも飛び上がり鮫島と一緒に羅刹に襲い掛かった。
「およ?パイちゃんもマジやんか」
「ったり前よ!!鮫島だけ良いカッコさせねぇぞ!!」
鮫島の鬼三、パイフーの豪腕。本気と化した二人の攻撃は猛攻へと変わる。
「おろろろ、さすがに本気になられるとワイもしんどいな」
地上へと降り、羅刹と距離を取った鮫島は、もはや息切れなどと言うレベルではなかった。
「はあ・・・はああ・・・な、何故攻撃が当たらん!」
「ふう・・ふう・・一発でも入れば・・・こっちのもんなのによ!!」
方や羅刹はと言うと、息一つ切れていない。
「あんさんたちの攻撃はよう分かったさかい、その礼や。今度はワイから行くで」
と言った羅刹は何故か聖魔刀を鞘に納めてしまった。
「来る!」
「へ?何がですか?」
突然来ると言った由佳に等々力が聞いた。
「羅刹の本当の強さが・・・」
「強さ?」
「ケケケ、あんさんたちようやったで。けど、相手が悪かったな、結局ワイの勝ちや!!!」
「おわっ!なんだ!!」
羅刹の身体から鋭い風が吹き荒れると、その身体は褐色を帯び、両目が赤く染まっていく。
更に肉体が変化を始め、元の身体よりも一回り大きくなった。
異常なほど発達した筋肉。それと同時に巻き起こる夥しい邪気。
「こ、これは!!」
「な、なんだ、一体!」
鮫島とパイフーが共に叫ぶ。
爆風が止むと、そこに変化した羅刹の姿が明らかとなる。
「あれは・・な、なんなんだ、アイツは!!」
「バーサーカー・・・・羅刹の真の姿よ」
三つ巴の戦いの最中に一度だけ見せた羅刹のフルパワー。バーサーカー羅刹がそこにいた。
「こ、こんな事が!!」
「いかん、聖!あれは我々の手に負える相手ではないぞ」
「パイフー!ヤバイぞ!!」
「そ、そんなこと言われてもよ」
鬼三、パイフーが叫ぶ。
「良かった、僕戦わなくて」
等々力が胸を撫で下ろした。
「これがワイのフルパワーや。行くぞ!!」
魔物のように姿を変えた羅刹は凄まじい速さで突進し、両腕を広げた。
「がああああっ!!」
「うがああ!!」
右腕に鮫島の顎が、左腕にパイフーの顎がヒットし、二人は瓦礫に突っ込んだ。
「くそ!!」
いち早く起き上がったのは鮫島だった。そこに再び羅刹が突進する。
「ぐうう・・・!!」
羅刹の拳が顔の前で止まる。身構えた鬼三が羅刹の拳を止めたのである。
「さぁて、いつまで持つかな?」
「ヤロー!!」
なんとか起き上がったパイフーも羅刹に飛び掛る。渾身の一撃が羅刹の腹に食い込むが、羅刹は動じていない。
「あかんで、邪魔しちゃ」
「ぐわっ!!」
羅刹は左手でパイフーの頭を掴むと、そのまま地面に叩きつけた。
「さて、鮫島はん。あんさんはどうかな?」
「せ、聖・・・・も、もう・・・・」
羅刹の攻撃は凄まじく、鬼三はもはや限界だった。これ以上は鬼三が死に兼ねない。
「わ、分かった、手を貸そう」
とうとう鮫島が降参した。
「そか!!なら安心や」
羅刹はすぐに拳を離すと、バーサーカーから元の羅刹に戻った。
「すまんかったな、鬼三はん。大丈夫かいな?」
「誤るならやるな!!」
「ハハハ!!それもそうやな」
「パイちゃんも悪かったのう」
「パイちゃんって言うんじゃねぇ!!クソ!思いっきり叩き付けやがって」
パイフーは鼻を押さえている。どうやらかなり痛かったらしい。
「ゲノムを倒したら、俺、リアル世界に帰るかもしんない」
鬼武がポツリと呟いた。
「そ、その方が賢明かもしれないな・・・」
等々力が続く。
「まあ、長生きしたければ魔界は止めた方が良いよ」
由佳も苦笑いである。
「大丈夫か?鬼三」
「まったく、危うく折れるとこだったぞ。茨木童子が子供に思えてくる」
「同感だな。やれやれ、これ以上強いのか、紅とゲノム、そしてウルは」
あの時紅と競り合ったときの事を鮫島は思い出した。
進むべき方向へ進む。それが自然の摂理であり運命でもある。
だがその運命は人の力によって変えられる。
ゲノムとの決戦はすぐそこまで迫っていた。
END




