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神殺し  作者: 雷禅 神衣
20/41

20.〜紅が真紅に染まった日〜

紅の天叢雲剣は確実にゲノムを斬り付けている。おまけに状況は明らかに紅の劣勢。

だが人間である紅の身体にはスタミナと言うものがある。

人間ではないゲノムにはそれがない。

「明らかに僕の方が勝っているはずなのに」

紅の動きはもはや神業とも言える。あまりにも素早い動きに、その姿を視界に捉えることすらできないのだ。

だがそれでもゲノムの猛攻は留まる事を知らず、致命的なダメージとは言えないものの、ヒットしているのは事実だった。

素早い動き・・・逆に言えば「捕らわれたら最後」を意味する。ゲノムはそれを狙っているのだ。

「このままじゃキリがない。一気に決めるか」

攻撃を止めた紅はまっすぐにゲノムを見据え、こう言った。

「戦う場所を変える。僕を殺したいのなら付いて来い!」

紅はアジトの北西にあるプレハブへと走った。無論、ゲノムも追ってくる。

とても綺麗とは言えない建物だが、紅に取っては慣れ親しんだ遊技場。

別名「処刑場」である。

プレハブの扉を開くと、紅は特殊なルートで奥へと移動し、正面を見据えた。

それとほぼ同時にゲノムが扉の前に現れ、紅を視界に捕らえた。

「ようこそ、僕の処刑場へ」

そこには世界中から集められた処刑の道具が納まっており、その一つ一つがトラップとなっている。

つまり紅が通った特殊なルートを進まない限り、処刑のトラップが始動し、文字通り処刑されるという部屋である。

無論、紅としてはこれだけでゲノムを始末できるとは思っていない。単純に自分の下へ来るまでの間

少しでもダメージを与えようという作戦だった。

「数年前、お前と戦ったときは煉獄だったからね。僕の本当の強さを出せなかったけど、今回は違う。

今はこの部屋がある、そしてこの剣もね」

「グルルルルル・・・・」

「来れるものなら来てみろ、お前がここまで来た時が最後だ」

ゲノムに反応は無い。あるのは強烈な殺意。ゲノムはそのまま直進で紅に迫った。



同じ頃、人間の世界で一仕事終えたウルは紅の伝言を耳にし、さすがに驚愕した。

「バカなっ!ゲノムが動くには速すぎる」

いくら数年経っているとは言え、ゲノムが本格的に動き出す時期ではない。

だが魔矢が言っていたように、前回よりも強くなっているのなら、その可能性もあるのかも知れない。

「さて、仕事も無事終わったわけだし、どうかね鉄君、宴会でも」

「いや、俺はこれで失礼する」

ウルは焦った。もはや一刻の猶予も無い。

「そうかね?せっかく一流のディナーを用意していたんだが」

「すまないが、もう行く」

そう言い残すとウルは大急ぎで魔界へと向かった。

今回の仕事は都心から離れた場所で行なわれたため、魔界へ戻るまで時間が掛かる。

ゲノムが紅の前に現れたと言う事は、魔矢はどうなったのか・・・。そして同行しているはずの羅刹は・・・。

「まさか・・・・・」

ウルの脳裏に最悪のシナリオが浮かぶ。いずれにしても時間が無い。紅に死が迫っている。

「くそっ!」

ウルの悪い予感は、この後見事に的中する・・・。



「そんなバカな・・・・」

もう4つの処刑道具によってダメージを受けているはずのゲノムだったが、その勢いは衰えと言う言葉を知らない。

身体の至る部分が切断されても、ゲノムはその度に再生し元に戻ってしまう。この辺はヴァンパイアと同じようだ。

姿形こそ変化しても、その殺意に変化は無く、より一層禍々しいものに変化している有様だ。

やはり処刑道具で始末できるほど生易しい相手ではなかった。

これが通常の殺人鬼だったら、トラップを抜け出せないままあの世行きだが、ゲノムは例外だった。

「やっぱりこれに頼るしかないのか」

紅は天叢雲剣を構えた。ゲノムはもはや目の前である。

天高く跳躍すると、天井に仕掛けてあった岩石をゲノム目掛けて突き落とす。

だが俊敏な動きを見せるゲノムはそれを避けると、落下してくる紅に触手を伸ばした。

「うわっ!」

両足を掴まれた紅はそのまま大きく揺さぶられ、壁や地面に激しく叩きつけられる。

「ぐうう・・・」

しかしそれで終わる紅ではない。天叢雲剣で触手を切断すると、反撃に出た。

鋭い刃はゲノムの両腕と、軸になっている足を切り裁き転倒した。

「一気に行くよ!!」

紅は再び跳躍すると、高い地点から一気に落下し、天叢雲剣をゲノムに突き立てた。

「ギュオオオオオオッ!!」

まるで悲鳴のような雄叫びが響く。突き刺さった場所から大量の血が流れ、紅に大量の返り血が舞う。

「お前さえ居なくなれば・・・お前さえ消えれば僕たちは!」

鬼の形相と化した紅は我を忘れ一心不乱に天叢雲剣で切り刻む。

それは魔界へ来る前、ウルに殺人を依頼したときの表情とソックリであった。

「お前は魔矢を・・・・羅刹も・・・死んじまえ!!」

紅の頭のネジが飛んだ瞬間に味わったもの、それは呆気なく訪れた敗北であった。

「なっ!・・・・こ、これ・・・は・・・・」

あまりにも突然の事で何が起こったのか分からない。だが紅の身体はその名前の如く真っ赤に染まってしまった。

「か・・かああ・・・」

まさに一瞬だった。ゲノムの身体から無数の触手が鋭い刃と化し、紅の身体を貫いたのだ。

それも一本や二本ではない。合計18本もの触手が紅の肉体の至る箇所を完全に貫いた。

首、両腕、両足、腹、胸、腰・・・・18本の触手は全て紅の身体を貫通した。

「ウ・・・ウル・・・・ご、ごめ・・・・ん・・・」


紅の口から大量の血が吐き出されると、紅の視界に闇が訪れた・・・。



「フタリメ・・・・カンリョウ・・・・」


紅の身体から触手を突き放すと、ゲノムはピクリとも動かない紅に向かってそう言った。



END



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