2.〜矢吹 紅編〜
今日はウルも魔矢も出掛けている。
外出の理由は最近魔界に入ってきたパイフー、鬼武両名の動向を探るため。
だが「神殺しのウル」の異名を取るウルが重い腰を上げ、この二人の動向を探る気になったのには訳があった。
「魔界へ侵入してくるのはパイフーと鬼武の二人だけではなさそうだ」
この情報を持ってきたのは魔矢だった。
魔矢の話によると、パイフー、鬼武の両名の他に、「等々力 薫」、「鮫島 聖」と名乗る二人の人間が
パイフー、鬼武サイドには存在し、連中が徒党を組む可能性が強いらしい。
別に連中が仕掛けてこない限り何をするわけでもないのだが、慎重派の魔矢はこの四名に神経を尖らせている。
事実上、この話が真実ならまた厄介な殺人鬼たちが増え、さらに数を増やし徒党を組みかねない。
そうなるとその分だけ「神殺し」の地位を狙う殺人鬼たちが増えるという事だ。
最も、紅からすればウルを倒せる人間など存在しないと思っている。
何故ならNo,1が存在するという事は、当然No,2、No,3と続く存在があるからだ。
その存在を撃破し、ウルまで辿り着く可能性は極めて低い。
ましてやNo,2とNo,3を殺すのは不可能だと断言できる。
何故ならNo,2とNo,3は・・・・。
「あれぇ〜ま〜た奇妙な連中がやって来たな」
ヘッドフォンを耳に当てたままの紅が一人呟いた。
ヘッドフォンはこの建物の周辺に設置している盗聴器から流れてくる音声で
紅たちの居るビルから半径200メートル四方の会話を盗聴できる。
ヘッドフォンから流れてきた声は以下のような会話だった。
「ここがウルのいるビルだな」
「ああ、そうだ。でも本当に殺るのか?」
「当然だろ?ウルを殺れば神殺しの異名は俺のものだからな」
「自信はあるのかい?」
「勿論さ。俺を誰だと思ってんだ?元陸軍軍曹だぜ」
「さて、じゃあ突入とするか」
会話はそこで途切れた。どうやらウルが不在だと言う事を知らないらしい。
今現在このビルにいるのは紅ただ一人だ。
「しょうがないな〜ウルも魔矢もいないし、暇潰しで遊んであげようかな」
紅は満面の笑みを浮かべてモニターをオンにした。
そこには完全武装を施した機動隊のような男たち、合計8人がビルへと近づいている姿が映し出された。
その8人の中に一際背の大きな男が映っている。どうやらこの男が先ほど喋っていた軍曹らしい。
「うへへ、なんだか楽しくなってきたぞ!!」
紅は「トラップ」と書かれたボタンを押した。
「さあ、ここまで辿り着けるかな?」
武装した集団はビルの中に入り、エレベーターのスイッチを押した。
ウルの居る階はこのビルの地下4階。そこに神殺しのウルがいる。
男たちはエレベーターが下りてくるのを持った。
やがてエレベーターのドアが開くと、突然ビル内に不気味な声が響いた。
「勇敢な戦士たちよ、今日は諸君とゲームがしたい。俺は地下4階で君たちを待っている。
来れるものなら来てみるが良い」
その音声は機械によって変えられ、誰が喋っているのか分からなかった。
「今のはウルか!?」
「だろうな、ふざけやがって。まあいい、乗るぞ」
武装集団は銃を構えながらエレベーターに乗った。
「へへへ、第一トラップ始動だ!?」
地下4階でモニターを見ながら紅は呟いた。
男たちの乗ったエレベーターは静かに下へと下がっていく。それでも常に何が起こるか分からないため隊員は緊張している。
そして地下2階へ辿り着いた時だった。
突然エレベーターの天井部が開き、開かれた穴から五匹のドーベルマンが落ちてきた。
「な、なんだ!!!」
「うぎゃああああ!!」
「くそったれ!!」
ドーベルマンたちは狂犬と化しており、目に付く全ての男たちに噛み付いた。
慌てた男たちは咄嗟に発砲するが、エレベーターと言う狭い個室の中でターゲットが定まらず、銃弾は仲間に命中した。
「くそ!!」
軍曹は身を屈め、持っていた銃で応戦する。だが他の仲間たちは噛み殺されたり、仲間同士で撃ち合ったりと無惨な姿を晒した。
エレベーターの個室は血塗れになり、人間の死体と犬の死体が無数に転がった。
地下3階へ辿り着いたときには、8人中5名が死亡した。
「なんてこった・・・」
「やっぱり無謀だったんだよ、ウルに喧嘩を仕掛けるなんて・・・」
「俺たち殺される・・・」
「泣き言を抜かすな!ウルは俺が殺す」
軍曹のみが平常心を保っているようだった。
やがてエレベーターは地下4階へ辿り着き、ドアが開いた。目の前の壁には紙が貼り付けており、こんな事が書かれていた。
「火の用心」
軍曹がそれを目にした次の瞬間、天井に開いていた小さな穴から凄まじい勢いで火炎が放射された。
「ぎゃあああ!!!」
「ぐうわあああ!!」
軍曹だけが床に腹ばいになり難を逃れたが、他の二人は炎に包まれてしまった。
「くっ!これも罠か!!」
火炎の熱に耐えられなくなった軍曹は、たまらず緑色のドアを開け、中に入った。
「やあ、よくここまで辿り着けたね」
「お前はっ!!」
そこにいたのはあまりにも清楚な美少年だった。これが神殺しのウルなのだろうか・・・。
「お前がウルか?」
「違うよ。ウルは出掛けているんだ。僕は単なるお留守番♪」
「こんなことしやがったのはお前か」
「そうだよん。楽しかったでしょ?」
「ふざけるな!!」
「あれぇ〜良いのかな〜僕にそんな口の利き方して〜死んじゃうよ〜ん」
「クソガキが!!」
軍曹が銃を構えた時だった。紅は一瞬ニヤリと笑みを浮かべ、右手に持っていた遠隔装置のボタンを押した。
「ぐはあああああああっ!!!」
紅がボタンを押した瞬間、軍曹の両側にあった壁から夥しい数の槍が飛び出し、軍曹の身体に突き刺さった。
「うはあ〜痛そう♪」
「ぐううう・・・」
軍曹に刺さった槍の数は計8本。その全てが致命傷裂けているが、もはや軍曹は立ち上がれないほどのダメージを追っていた。
「ウルを殺すために来たみたいだけど、無駄だったね。君たちがウルに挑もうなんて100年早いよ」
「ううう・・・」
「僕を倒せないんじゃウルは程遠いな。あ、そうそう知ってる?No,1はウルだけど
その下にはNo,2、No,3って続く人が居るんだけど、誰だか知ってる?」
紅の言葉に軍曹は首を捻った。そんな人間が居るなんて初耳だった。
「No,3は僕たちの仲間の魔矢。そしてNo,2は・・・・・」
まさか・・・軍曹の目にニヤリを笑う紅が映る。だがもはや軍曹に抵抗する力など残っていない。
「魔界No,2の殺人鬼は、僕なんだよ。神殺しのウル・・・そして僕の名前は・・・処刑の紅だ。相手が悪かったね」
「処刑の紅」・・・・軍曹には聞き覚えがあった。
覚えている限りの記憶では、処刑の紅が人を殺す際は必ず処刑の道具を使うという。
その道具は全て現実世界で使われた品々で、中世ヨーロッパの物から東南アジア系の物まであると言う。
「さあ、処刑の始まりだ!!!アハハハ!!」
一体いつ持ったのか、紅の手には巨大なノコギリが握られていた。この小さな身体でこんな巨大なノコギリを持つとは尋常ではない。
紅は蹲っている軍曹の身体から服を脱がせ、全裸にすると、別の部屋から両脇を横に固定された鉄棒を持ってきた。
そして軍曹を軽々と持ち上げると、身体を逆様にし、両足を紐で括りつけ、軍曹を逆さ吊りにした。
「これから何をするか分かるかな?」
軍曹はゾッとした。もはや全裸になっている上に逆様に吊り下げられている。抵抗も出来ないが
この場合、どのようにノコギリを使うかは容易に想像が付いたからだ。
「このノコギリを君の股間に当てて、ギコギコしたらどうなるだろうね〜」
「や、やめろ・・・・やめてくれ・・・」
「君の身体は縦に真っ二つ〜♪最高だよね!嗚呼、たまらないな〜♪」
頭から鋸引きするほうが、刑として苛烈のように思われるが、実はそれは相手への思いやりとも言えた。
というのも、頭から引き始めれば、囚人はすぐに絶命することが出来たが、股間から引き始めた場合はそうではなかったからである。
1)犠牲者の両足を開き、胸部を下方に位置させることで、出血の速度を緩めることができる。
2)頭が下方になる事で、血液が脳に流れ込み、脳への酸素の供給を活発にする。
3)以上により、痛みを鋭敏に感じさせる一方で、来るべき死を引き延すことができる。
以上のような理由からその苦痛は極限とされるのが、このノコギリ刑なのである。
「じゃあ行くよ。イッツ、ショータイム!!イエ〜イ!!」
「やめろ!!!!があああああああああっ!!!」
軍曹の股間にノコギリが突き刺さり、それが左右に揺さぶられる。
「があああっ・・・ぐががああああああっ!!!」
凄まじい血しぶきが上がる中、ノコギリは更に加速し、股間から下腹部へと移動する。
「うはあ〜痛い?痛いよね?ゴメンネ〜痛くして♪だけど僕に喧嘩を売るからこうなるのさ」
「ああああ・・・ぐうがあはあ・・・」
「そぉら、もう一息だよ♪」
ノコギリが軍曹の首まで到達したとき、既に軍曹は息絶えていた。
やがてノコギリが頭部を切断すると、軍曹の身体は真っ二つに切断された。
異臭を放ちながら血や内臓がこぼれる。
「アハハ、楽しかった。やっぱり殺しは良いよね」
紅は頬に飛んだ血を一舐めすると、口元を大きく歪ませニッコリと微笑んだ。




