11.〜ツワモノたちの夢(2)〜
「なんだかロクな物が無いな」
魔界に一つしかないコンビニにやって来た鬼武は、陳列されている品物を見て落胆した。
ここ魔界でもコンビニはある。それに金だってあるし、食べ物もある。
いくら殺人鬼の巣窟とは言え元は普通の人間である。
バケモノでもない限り、普通の人間と同じ食料を口にするのだ。
先日パイフーによって惨殺されたLの持ち物の中に財布があり、撃破した際こっそりと頂いていた。
そのおかげで割りと巨額な金額の金が入り、こうして食料の調達に来たのである。
今頃パイフーは新しい住居で部屋の整理をしている頃だろう。
出来れば魔界初日くらい豪勢なものが食べたいのだが、陳列されている品物はどれも幸薄いものばかりだった。
「それにしても殺人鬼たちが買い物かごぶら下げて買い物するってのは滑稽な姿だよな」
鬼武殿、君も人の事は言えないと思うが・・・。
「パイフーはきっと人肉とか血液のジュースとかが良いんだろうけど、売ってるわけないし。
しょうがない、トマトジュースで誤魔化すかね」
鬼武は周囲を見ずにドリンクのコーナーへ向かった。
「どれにしようか・・・ってイテッ!!」
その時、何か硬い物が頭にぶつかった。
見るとそこにはパイフーに負けじと長身の男が立っており、鬼武と同じようにドリンクを取ろうとしていた。
「コラ、兄ちゃん!危ないでしょ、ボケっとしてんじゃねぇよ」
「ん?ああ、すまんすまん」
「まったく今頭に当たったものはなんだ」
「ああ、ジャケットのコレか。悪いな、俺のジャケットはいろいろ武装しているもんで」
「まったく、歩く凶器かい!!人の事言えないけど・・・ってちょっと兄ちゃん」
「ん?なんだ?」
「なんだよ、それ。シリアルばっかじゃねぇか」
見ると男のカゴにはシリアルばかり・・・いや、シリアルしか入っていなかった。
「これから仕事だからな。適度に食べて置かんと・・・」
「アホかっ!だったらもっと肉食え、肉!!シリアルばっかじゃ成長しないぞ」
「これ以上成長しても困るんだが」
男はパイフー同様の長身である。
「もっと栄養のあるもん食えよ。ったく長い間男娼なんてやってるから気になるんだよな、そういうの」
「まあ仕事の前の小事だ。腹八分目がちょうど良い」
「そんなもんかね〜」
ふと気になる事があった。どういうわけか他の殺人鬼たちは、この男を見るなり道を開けているのだ。
その表情には恐怖の色さえ浮かんでおり、人目で怯えているのが分かる。
コンビニの店員ですらこの男の対応にはかなり緊張しているように見えた。
「ありがとうございました」
会計を済ませて外に出ると、そこにはあの男が立っていた。
「今日は相棒はどうした?」
「ああ、あいつなら新居で部屋の整理してるよ」
「ほほう、ヴァンパイアでも掃除はするんだな」
「ったりまえだろ、意外と綺麗好きなんだぜ、俺たちは」
このとき鬼武は気付かなかった。どうして相棒がいる事をこの男が知っているのかを・・・。
そしてその相棒がヴァンパイアである事をどうして知っているのかを・・・。
「魔界へようこそ。じゃあな」
「えっ、今なんて・・・・・」
男はそれだけ言い残し、去って行った。
鬼武はようやく気付いた。
おかしいではないか、どうしてあの男が相棒の存在を知っているのか。
ましてやヴァンパイアである事を何故知っている・・・。
黒髪でスポーツ刈り、黒皮のジャケットに長身の身体。ジャケットの中には無数の凶器・・・。
「ま、まさか・・・・・あいつが・・・」
鬼武は理解した。何故他の殺人鬼たちが道を開け、その表情に恐怖が浮かんでいたのか。
あの男が「神殺しのウル」だと気付いたとき
鬼武の両手から荷物がこぼれ、ボタボタと地面に落ちて行った。
「俺は・・・殺されてもおかしくない状況だったのか・・・」
鬼武の表情から血の気が失せた。
END




