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ギュエリストキングダム

 結局、しりとりに付き合わされる運命なのか僕は……。

 ただただ先が思いやられる……。


 僕はその言語実現機とやらに目を向けながらため息を吐く。


 見た目としては、円盤に水晶玉を乗せただけのものに見えるが、何か小さいボタンやスイッチみたいなのが付いている。

 パッと見て、胡散臭い占い師が使いそうにしか見えない……。


「まあ、とりあえず電源を入れてっと……ポチッとな」


 すると、水晶玉が淡い紫色に光り、部屋一面をその色に染めた。


 スザクとビャッコは二人揃って「きれーい」と見惚れているが僕としては完全に、いかがわしいお店の風貌にしか見えない。


「どうしたのセイリュウ君? 具合でも悪いの?」

「大丈夫……大丈夫です」

「なんで急に敬語⁈」


 一応言っておくが、僕はそういう事には興味は無い。何なら恋愛にも無関心だ。

 好きな存在や可愛いと思った存在、それら以外に興奮したりしない。


 “可愛い”というのは普通に感じるが、好きな神なんていない。いても何だって話だ。


 ———————……自分で自分を滑稽と思ったのは久しぶりだよ。


 ……うん、もういい。 未経験=ドーテーだからって何の問題もない。気にしたら負けだ。

 よし、しりとりしよう。


 なんか、キャラがぶれぶれで壊れている感じかもしれないけど……気にしたら負けだ! うん!


 どこの誰に言い訳をしているのか自分でも分からないが……気にしたら負けだ!


「早く始めましょうよ!」


 終わりの始まりを要求するスザクを見て僕は思った。こいつ、さては俗に言う“トラブルメーカー”っていうやつだな、と。


「それじゃあ始めよっか。順番は東西南北だから、セイリューからだよ~」


 よりによってトップバッターが僕か……。まあ、先手必勝とも言うし、ここは安定の———————


「————リンゴ……飴」


 夏祭りや花火大会におけるなくてはならない食べ物(あくまで個人の感想です)の名を口にしたその時———————


 コトンッ———————と何か赤いものがテーブルに置かれているのに僕は気づく。

 テーブルのそれは、雑にも皿に乗せられており、とても綺麗な赤色の光沢をしている。


 この串に刺され、ツボのような形をした赤く、飴でコーティングされたもの———————

 ————正しく、りんご飴だ……!


「で、でた……」


 一瞬の出来事だった。いきなり目の前に、()()皿に置かれているものが現れたのだから。


 これは、どういう召喚法だ? 儀式召喚か? それとも融合召喚? シンクロ? エクシ〇ズ? いや、そもそも素材と生贄がないからどれも当てはまらない。


「すごーい! ほんとに出てきた!」

「まだまだ序の口だよ~」

「これは確かに楽しめそうね」

「これはもしや……」


 分かってしまったかもしれない……!


「ん~? セイリュー、何が分かったのかい?」

「この機械の原理とか?」

「場にモンスターが存在しないから特殊召喚できる、とかそんな感じじゃないのか?」

「あんたそれ、カードゲームの話でしょ……」


 ゲームの知識は、時に役立つものなのだな。

 りんご飴を頬張りながら、視線を感じることに気づく。


「(あのりんご飴が羨ましい……! あんなにペロペロされて……♡ 私もあれみたいに飴でコーティングすれば、セイリュウ君は……えへ♡ えへへへへ♡)」


 ビャッコのあのデレデレした表情———————高確率で変態的思考を働かせているに違いない。

 彼女の頭の中の僕は一体何をしているのだろうか? 


 知りたくないし、放っておこう。


「次はビャッコの番よ!」

「———え? あ! うん、ごめんごめん」


 美女で交際未経験でありながら、変質者レベルの想像力を持つビャッコが妄想から帰ってくる。


「んーっと、め……『メンヘラ』!」


 思わぬ回答が飛んできた。何だその変化球は!?


「なあビャッコ。数ある『め』から始まるモノの中で、なぜ『メンヘラ』をピンポイントで狙った?」

「なんか……自然と頭から出てきた」


 君は日頃何を考えてるのかな? 僕なんだか怖いよ。


 ていうか“メンヘラ”なんて言葉、日常でそんなに使わないだろ。


「どうかしたの?」

「いや、別に。久しぶりに聞いたから、思わず……」


 と、その時。


『ピンポーン。メンヘラ、とは———————』

「わっ⁈ なんか喋ったわよ⁈」


 突然ワーディングが、ゲンブに似た声でメンヘラについて解説をし始めた。


「物体で表現できない言葉は、解説するようになっているんだよ~」

「この声って、ゲンブちゃんだよね?」

「そだよ~」


 学習に役立つ機能があるのか。それはいいな。


 教育システムに感心する僕も含めビャッコとスザクも黙ってメンヘラについての説明を聴く。


『————精神衛生(メンタルヘルス)を略した呼び方をメンヘラと言い、心に何かしらの———————』


 十分後


『———————という解釈もされる。いじょーでメンヘラについての解説を終了いたします。ご静聴ありがとうございました~』


 ピンポンパンポン、とチャイムが鳴り、メンヘラ説明会が終わった。


「「「「……」」」」


 既に説明会が終了したにもかかわらず、僕を含め全員が今も尚黙っていた。


 おそらく全員僕と同じ事を思っている筈だろう。“メンヘラ怖えー”と。


「(んー……。セイリュウ君、メンヘラ嫌いそう)」

「(ワカラナイヤー)」

「zzz……むにゃむにゃ……」


 すまない、言い間違えた。

 おそらく僕だけが思っているだろう。“メンヘラ怖えー、あともうこれしりとりのテンションじゃねぇだろ”と。


 ビャッコはなんか怖いくらい真顔になってるわ、スザクは埴輪みたいな顔して理解してないわ、ゲンブは夢の中でノーレル科学賞を受賞してるわ。


 もう早く……しりとりしようよ……。

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