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KONOYO NO OWARI

「外で遊ぶより、ずっと楽しい事があるよ~」


 あんまり聞きたくないなー……。


 と思いつつも、ゲンブの意見に耳を傾ける。


「? どんな事よ?」

「それはね~……」


 いや、待てよ? もしかしたら外遊びより酷い遊びを提案してくるのではないか?

 ……彼女に限ってそんな事は無いか。でもゲンブって、時々予測不可能な言動をするからなぁ……。


 若干、疑心暗鬼な心境でゲンブを見つめる僕。もうスザクが幼稚園児みたいだの笑っている場合ではない。

 話の内容によっては、速やかに自室に避難しなければならない。面倒事は嫌だからな。


 と、その時。


「ふん~♪ ふんふふ~♪」


 鼻歌を口ずさみながら、ビャッコが当番の仕事を終え、リビングに戻ってきた。


 外が思いの外暑いのか、彼女の額には玉のような汗をかいている。

 顔も普段より赤くて、何というか……少しセクシーさが感じられる。


「あれ? みんな集まってどうしたの?」

「ビャッコー! セイリュウがあたしと()()()くれないの!」


 ほんとすぐにチクるなこいつ。知能年齢は本当に幼稚園児のレベルかもしれないな……。


 スザクを見ながらそう思っていると、不穏なオーラが近くで感じられるのは、気のせいなのだろうか?


「せ、せ? セイリュ、リュリュリュウ君んんんと? スザザザザザクkkkk、ちゃんがガガガガガガ? 二人、きりで、……?」


 オーラを放っているのはビャッコか? それとも、ビャッコの見た目をしたバグった機械か?

 見分けがつかないなー、とボケている場合……じゃない!


 スザクが誤解を招くような言い方をするから、ビャッコがなんか勘違いをしてしまっているじゃないか!


「びゃ、ビャッコ? スザクが言いたいのは、外で無邪気にスポーツして一日を楽しみたい、とほざいているだけだから⁈ それ以外の目的や心意は無いからな⁈」

「『ほざいている』って何よ⁈ もっと他に言い方ってもんが「お前は黙ってようか⁈」」


 お前のせいで今、僕は命の危機に瀕しているのだぞ⁈

 って、あー! ビャッコが包丁を手に取ろうとしているー⁈


  ◇ ◇ ◇


 その後、何とかゲンブの助け舟もあり、無事に誤解が解けた。


「ほんとに、ごめんなさい……私、早とちりして……」


 もう少し遅かったら、危うく『青い龍の三枚おろし』が完成するところだった……。

 ホラーゲームの世界もこんな感じなのかな……? と思いながら、未だに震え続ける足を抑える。


「もうほんと、一時はどうなる事かと思ったわよ」

「うぅ……」

「まあまあ、結局誰も傷付かなかったんだからいいじゃな~い」


 僕の心には恐怖というダメージが襲ってきたがな。ほんとヤンデレって怖い。

 できればもう少し僕のことを心配してほしい……。


「ところでゲンブ、外で遊ぶよりも面白い事って何よ?」

「それはねぇ~……」

「それは……?」


 僕は手を合わせ、真摯に願う。

 どうか充実性と安全性の両者が考慮されている遊びであってください! いい子にしますから!、と。


「しりとりだよ」

「「「しりとり?」」」


 その言葉を聴いた時、僕は心の中で歓喜した。同時に疑問も浮上してきたが、喜びの感情の方が強かった。


 なにせしりとりは言葉遊び。単語を口にするだけでいい娯楽なのだから、きっと何の問題も起きないだろう。


「しりとりって、『ん』が最後に付いたら負けのやつでしょ? 外で遊ぶ方が断然面白いじゃない!」

「まあまあ、とりあえずやってみようよ~。セイリュウとビャッコもどう~?」


 何か裏がありそうな予感はしなくもないが、外でスタミナと体力を消費するよりは遥かにマシだ。

 それに、これに参加しなかったらスザクが無理矢理にでも外に連れて行こうとするかもしれないからな。


 ここはゲームに参加するとしよう。


「僕はやっても構わないが」

「私もー!」

「スザクはどうする~?」

「分かったわよ、私もやるわ。一回やってみてから文句を言うわよ」


 文句を言う前提かよ。

 だがこれで、今日一日の平和が確約されたも同然———————


「じゃあ()()するから、少し待っててね~」


 ———————へ? ()()……?


  ◇ ◇ ◇


「よいしょっとぉ……、これでオ~ケ~」

「ゲンブちゃん、それなぁに?」

「これは『言語実現機 ワーディング』って言って、次のコンテストに出場する為の作品の試作品だよ~」

「それをどうするのよ?」

「これを使ってしりとりをすれば~、発言した言葉が、実現するんだよ~」

「面白そうじゃない!」

「ところで……セイリュ~? そんなこの世の終わりみたいな顔してどしたの?」


 —————迂闊だった……。

 安易に彼女の言葉を信じた僕が馬鹿だった。

 

 『発言した言葉が実現する』だと……? 絶対なんか起こる気しかしない! しかも『試作品』って、問題の危険性を上乗せしてどうする⁈ 変な不具合とか絶対に起こるだろ⁈


 ていうか、それ使ってしりとりするんだったらせめて完成品でしてくれ! その方がリスクが減るだろ!


 ……もう駄目だ……おしまいだぁ……、とベジ〇タ並みに僕の気力が減っていく。


「……この世に、神なんていないんだ……」

「セイリュウ君⁈ 急にどうしたの⁈」

「セイリュウ、あんた自分が何者か分かってるの?」

「『獣神』……」

「全身隅々まで一応は神様なんだよ~」


 『一応』って何だよ、『一応』って。

 もう諦めるしかないな……。もう既に参加すると言ってしまったし……。


 理解はするが、納得はしない。そう心に抱きながらも、僕は現実を見なければならない。


「はぁ……、世知辛い世の中だ」

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