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心が叫びたがってそうなんだ

 午後の昼下がり。

 太陽が天上で輝き、その存在感を惜しみなく出している。


 当番の仕事は早めに済ませた僕は、自分の時間を自室で悠々自適に過ごそうとしていた。


 いやー、いい天気だ~。こんな時は、ゆっくり本でも———————


「セイリュウく~ん♡」


 ———————このお約束パターン、ほんとに腹立つな……。

 昨日買ったばかりのラノベを読もうとしていたのに、何故いつも邪魔が入るんだ……。


 僕は手に持っている大人気ライトノベル『ナイスクールP×P』を机に置き、声のする方へ振り向く。


「ビャッコ、何か用か?」

「え、えーっと、そのぉー……」


 ビャッコよ。もじもじするな。少なくともその格好では尚更やめてくれ……。


「色々、聞きたいことがあるんだけど……」


 ビャッコが戸惑いを見せる。

 当然だ。何せ、彼女はまんまと()()()()()()のだから。


「この、絡まってるのって……何ぃ?♡」


 いつ、どこで、どんな時に問題に出くわし、モンスターにエンカウントするか分からない。

 無論、ビャッコもある意味ではモンスターだ。


 夜中の丑三つ時に、夢の中へ旅行中の僕に、抜き足差し足と夜這いしてくる猛獣だ……。

 体に重みを感じて、一度(ひとたび)瞼を開ければ、なんともえちえちな格好で、はぁはぁと興奮しているケダモノが、目の前にいる……。


 あの出来事は……、忘れられるものか……。


 あの恐怖体験のおかげで、そんなに深くはないけど、僕の心に(トラウマ)ができてしまった……。

 その為、僕の部屋の至る所に、対ビャッコ用のトラップを仕掛けている。


 今ビャッコが、そのトラップの一つ、『蜘蛛の糸』の餌食となったというわけだ。


 凄く丈夫な素材でできた糸なので、たとえビャッコの力であっても引き千切る事はできない。しかも表面には粘着性があり、お湯をかけない限り取れない仕組みになっている。


 なので、今のビャッコは———————


「はぁ……はぁ……セイリュウくぅん……♡ これって、()()()()プレイ……なのぉ……?♡」


 ネバネバな糸に、たわわなバストと股間部を強調するかのように縛り付けられている。

 僕は言ってやりたい、「モザイク入れるぞ」と。


「このまま放置しても「ほ、放置⁈ 放置プレイされるの⁈♡」」


 あ。変態スイッチがONになった。


「で、でもぉ……せめて、触ったりするくらいは……♡ 今なら、何も……抵抗できないからぁ……♡ さ、触り放題d「お断りします」」


 絶対に僕が犯罪者になっちゃう流れだろ……! あ、でも合意に基づいているのであれば……いや何普通に触ろうとしてんだよ。

 触っちゃったら絶対性的に襲われるだろ。“獣”だぞあれは。実際、獣神なんだけどさ……。


「で、用件は何だ? いつもみたいに僕を襲いに来たのか?」

「うぅ……、いつもじゃないよ~……。ちゃんと一人で抑えたりしてるんだよ……?」


 そんな情報いらない。


「はぁ……、とりあえずお湯を持ってきてやるから、そのままじっとしていろ。動くほど絡まって、身動きが取れなくなるぞ」

「そしてセイリュウ君が蜘蛛になって、糸に絡まった蝶である私を……えへへ♡」


 うるさい。



 ◇  ◇  ◇



「お湯持ってきたぞ」


 給油ならぬ“給湯”だなと、僕は熱湯を糸に注ぎながら思った。

 お湯を糸にかけるだけなのだから、容易い事———————


「アツっ! ちょっ! セイリュウ君! 熱い! 飛んじゃってるから⁈  熱い! 火傷しちゃうよ!」


 ———————……うん。『かけるだけ』なら容易い。


 糸にかけていたお湯が飛び散り、ビャッコに襲い掛かる。僕はすぐに注ぐのを止めようとしたのだが……。


「うみゃっ♡! 熱い♡! あ、熱いよぉ♡! セイリュウ君♡! セイリュウ君の(※持ってきたお湯)、熱くて……♡ ヤケドしちゃうよぉー♡!」

「やめろぉ! そんな格好でそんなセリフを吐くなぁ!!」


 絵面的に解説していいのか⁈ モザイクとか入れたら完全にヤバいやつじゃないか⁈


 糸で身動きが取れず、にゃんにゃんにゃんにゃん喘いでるビャッコに、無表情でその糸に熱湯をかけ続ける僕。

 これをカオスと言わずして、何と例えようか……。


 ていうか、とっとと溶けろやこの糸! どんだけ頑丈なんだよ⁈ 頼むからぁ、早く溶けてくれ! 客観的にこの場を見たら、阿鼻叫喚してもおかしくないんだよ‼


「にゃ、にゃあぁ♡ しぇいりゅうく~ん♡!」

「お前は黙ってろぉーー‼」


 十分後


「ふう……。やっと取れたな……」


 約十分でようやく、糸を溶かすことに成功した。


「ふにゃぁ……♡」


 ビャッコもとろけた表情をして、ピクピク動いている。

 完全に事後みたいになっているので、やめてほしい。


 ビャッコがこんな状態じゃ、まともに話すらできない。僕も少し疲れてしまったし、休憩でもするか。


「いや、待てよ……」


 僕は重要な事に気づいた。

 糸を溶かすのに夢中で、床が水浸しになってしまっていることを……。おまけにビャッコも。


「ああ……もう、最悪だ……」


 せっかく昨日、一日かけて綺麗に掃除したのに……。

 溶けて液状化した糸に、冷えてただの水になった熱湯(元)に、びちょびちょになってなんかちょっとエロいビャッコ……。


 今の僕は、発狂したくてたまらない……。

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