only my beam gun(オンリー マイ ビームガン)
◇ ◇ ◇
散々な時間だったな……。
何とかあの地獄のようなひと時から解放され、心も解放感に満ち溢れているはいるが———————
「——————つ、疲れた……」
こんな疲労感を日常茶飯事で感じている僕を、誰か褒めてほしいものだ。
自室で黙々とジグソーパズルを堪能しながら僕は思う。
この静かな空間。誰にも邪魔されないひと時。
これこそが僕の求め———————
コンコンッ
———————その絶好のひと時も、部屋の扉をノックする音一つで、崩壊する。
非常に迷惑だな……。
一体どこのどいつだ。僕の時間をぶち壊す愚か者は。
僕がスザクみたいな性格だったら、確認する前に貴様を消し飛ばしているぞ。
物騒なことを考えながら、扉を開ける。
「セーリュー、遊b「さよなら」」
ゲンブが要件を口にする前に扉を素早く閉める。
さぁーてと、パズルの続きでもしようかな、と振り向いた次の瞬間———————
ビュゥンッ
光の線が僕の真横を過る。やがてその光線は部屋の壁を貫き、約5㎜程の穴を開けた。
咄嗟の事に、僕は数秒固まってしまった。
光線が来たであろう方向に振り向くと、扉にも同じ大きさの穴が開いていた。
まさかと思い、扉を開けると、そこには先程と同じ佇まいでゲンブがいた。
「……」
「セーリュー、いきなり閉めるなんて酷いよ~」
「ああ、すまない。……ところでゲンブ」
「どったの~?」
「その手に持っているの何?」
凄くメカメカしいのですけど……。
「……」
「……」
「撃っちゃった~」
「『撃っちゃった~』じゃねぇーよ! 殺す気かよ⁈」
「だいじょ~ぶだよ~。ちゃんとサーモグラフィで確認して撃ったから~」
「そういう問題じゃない!」
油断も隙も無いな……。
また面倒事に巻き込まれる。そんな気がしてならない。
「で、僕に何か「あそぼ~」」
子どもか。
「僕じゃなくても、ビャッコかスザクのとこへ行けばいいじゃないか」
「なんか~、『そーだセーリューのとこ行こ~』って」
「そんな京都に行くようなノリで来て、ビームをぶっ放すのは止めてもらえないかな?」
迷惑を通り越して、怖い。彼女の笑顔が薄気味悪く感じてしまう。
こんな平気で、他人の部屋に向かって武器の引き金を引ける奴と一緒にいたくないのだが……。
「遊ぼ~」
「遊ぶかどうかは、内容による」
「色々」
雑ー……。もうちょっと事細かく説明してほしかった……。
「もうちょっと具体的に頼む」
「ガチャ(光線銃を構える音)」
「分かった! 分かったから! 武器を構えるのやめろ!」
『チャージ完了。内部エネルギー70%。スコープを放射赤外線認識型から高性能型に変更。標準レーザーモードによる自動照準システム起動。射撃権限を使用者に移行します』
ちょっと待てそれかっこいい!
いや違う! 確かにかっこいいけどそういう事言ってる場合じゃない!
「げ、ゲンブ? もし断ったら?」
「I have weapon.」
「分かったから銃口をこっちに向けるな! これ以上僕の部屋を攻撃しないでくれぇ!!」
◇ ◇ ◇
「お邪魔しま~す」
結局、ゲンブの脅しに負けてしまった……。
まあ、部屋が破壊されるよりは最善の判断か………。
僕はため息を吐き、ゲンブを部屋に入れる。
別におかしな物も無いし、問題はない。それに相手はゲンブだ。盗人のような真似はしないだろうし、ビャッコのように性的に襲いに来るわけもあるまい。
でも、ここで浮かぶ素朴な疑問。
なぜ、ゲンブは突然、僕と遊びたくなったのか?
「セーリュ~」
何がしたいのか。何をしに来たのか。ゲンブの事だから何か考えて来たのか? それともただ、純粋に僕に会いに来たのか?
僕は考えたが、ゲンブのマイペースな性格から考えると、後者が懸念されると思って正解であろうと判断———————
「セーリュー、トランプしよ~」
「ねぇ、ほんとに何しに来たの⁈」
何が目的なのかは知らないが、それは彼女とトランプしながら模索するとしよう。
ノリ気ではないが、僕はゲンブの要望に応える。
「で、トランプで何をするんだ?」
「ん~、ババ抜き~」
「二人だけじゃ少なすぎるだろ」
大体、三人か四人でやるゲームだろ。
「じゃ~、七並「つまらん」」
なぜ二人以上じゃないと楽しくないゲームをチョイスする?
僕がそう即答すると、ゲンブが眉間にしわを寄せている。
しわを寄せたいのはこちらの方なんだが……。
というか、別にトランプじゃなくてもいいだろ。オセロとかでもいいじゃん!
「なあゲンブ。別にトランプじゃなくてもいいんじゃないか?」
「他にあるの~?」
「オセロとか、将棋やチェスに……スマブラ」
一応説明しておくが、スマブラというのは『大激闘 スマートブラスターズ』の略で、子供も大人も夢中になれる有名なゲームのこと。
ミンテンドーのテレビゲーム用ソフトで、いくつもの人気ゲームのキャラクター達が夢のコラボを果たした対戦型アクションゲーム。
もちろん僕もプレイしている。何せ、ゲーマーなら誰でも知っているくらい知名度が高いのだからな。
「スマブラかい~? そっちの方が楽しそーだね~」
「じゃあ、決まりだな」