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紅の豚肉

「き、き……『禁じられた(つるぎ)』~」


 なんだその秘密道具出すみたいな感じは……! というか禁じられた剣って何だ⁈ かっこよさそう⁈


 ゴトンッ———————


 ————————ゲンブの手元に、鎖で巻かれた剣と思しき物が現れる。

 如何にも危険だと思わせられる風貌だ。


「隠しアイテムみたいだな」

「強そうだね」

「ねえセイリュウ、それとあたしの約束された鳳凰の剣(ネクスファイバー)で勝負「しない」」


 この武器がどんなスキルを持っているのかも不明なのに、戦うなんて無茶だろ。負け確じゃん。

 ていうかそもそも、禁じられてんだから使っちゃ駄目だろ。


「でも、剣を持ってるセイリュウ君ってかっこいいよ?」

「かっこよさでする、しないの問題じゃないんだよ?」


 きっとビャッコの頭の中では、武器を手に取り、勇者か騎士の衣装で僕が舞台に立っているのだろうな……。

 観客は全員ビャッコ……うわぁ気持ち悪っ。飛びついてきそうで普通に怖いわ……。


 鳥肌が立ち、身震いを起こす僕の体。


「とりあえずこれは~……ぽいっ!」


 おい、こいつ捨てたぞ……⁈ 訳アリの武器を平気でポイ捨てしたぞ……⁈


「捨てちゃって平気なの?」

「ん~? いいんじゃな~い?」

「いや良くないだろ⁈」

「そうよ! そんなのでも列記とした武器なのよ!」

「捨てるならちゃんとごみ箱に捨てろぉ!」

「そういう問題じゃないでしょ⁈」


 ちゃんと分別もしろ! 不燃ごみだろ、それ! とエコに気を使いながら、鉄くずと化した剣を台所にある不燃ごみ専用のボックスに(無理矢理)入れる。


「これで……よし!」

「良くないわよ!」


 なんかピヨピヨうるさいが、気にしないでおこう。

 さて、ようやく二周目か。


 僕は適当に何か言って、難を逃れることにする。


「『ギアナ』」


 すると———————


「……あれ?」


 誰よりも先にビャッコが異変に気づく。


「ねえ、あたし達……え?」

「セイリュウ君、これどうなってるの……?」


 一瞬の出来事で僕も理解が追い付かない。


 だがこれだけは言える。


「まさかとは思うが、()()も……」

「そだよ~」


 なるほど。理解した。どおりで()()が変わった訳だ。


 先程まで僕たちは、確かにリビングダイニングにいた。

 しかし今僕たちがいる場所には、シンクも、冷蔵庫も、不燃ごみ専用ボックスも無く、周りにあるのは雲と崖、そして滝。

 断崖絶壁とも言える崖の麓には、自然が広がっており、流れ落ちる滝と相まって迫力がある。


「ここはギアナ高地というわけか。まさか、しりとりしながら来られるとはな……」

「ぎ、ぎ、ギアナ高地? ナニソレ? おいしいの?」

「ギアナ高地はね~、確か面積が約三万平方キロメートルくらいあって、中心はどこかの国の国立公園になってる絶景スポットの一つだよ~(諸説あり)」


 「へえー」と話を理解するビャッコと、「わかんないけどすごいとこなのね!」と全く理解してないスザク。


「しかもその国を含む、六つの国々にまたがっていて、形状から“テーブルマウンテン”と言われて、その数は100を超えているらしい」

「山がそんなにあるんだ……」

「まあ~、詳しくはディキペディアで見た方が分かりやすいよ~」


 こいつ説明めんどくさいからって丸投げしやがった……!

 しかしこれ以上説明したらスザクの頭が熱暴走する恐れがあるからな。あと多分、聴いたとしても「へえー」という感想で終わるだろうし……。


「でも、どうして私たちこんなすごいところにいるの?」

「考えられるとしたら、()()しかないだろうな。そうなんだろう? ゲンブ」

「勘のいいやつは嫌いだよ~(言ってみたかった)」


 お分かりいただけたであろうか? 原因は全てこのワーディングの仕業である。


「セーリューが、『ギアナ』って言ったでしょ~? それを認識したワーディングが自己分析を行って、この場所を再現したってことだよ~」

「さっきのりんご飴を出したみたいに、景色や風景に関連した言葉を聴いて、周りに実現させたってこと?」

「なんでビャッコそんなに理解できてるの?」


 さすがハイスペックな変態だ……。理解が疾風のように速い。


「……?」


 スザクは一体どこを見ているんだろう……。魂、抜けてる? 生きてる?


 彼女はコケー、と何も無い空間を見つめている。


「スザクちゃん? おーい、スザクちゃーん?」

「……え、あっ! ごめん……! ついボーっとしちゃって」

「こいつはもう……死んでいる」

「生きてるわよ! 返事したでしょ!」


 すごい無気力な表情から、いつものスザクに戻った。

 できればあのくらいの静寂さを常日頃から持ってくれればありがたいんだが———————


「もう! 勝手に人を殺さないでくれる⁈」


 ————————無理な話だろうな……。というか僕ら“人”じゃなくて“神(獣神)”だし。


「次ビャッコだぞ?」

「聞きなさいよ!」

「な……『ナイーブ』」


 気のせいかな? さっきからビャッコ、心理学的な単語で返答しているが気のせいかな?


『ピンポーン。ナイー「あ、もうスルーしていいよ~」』


 えぇー……なんかかわいそう……。実際、僕もちょっと飽きてきちゃったけど。


「無視していいの?」

「別にいいよ~。どの道、カットするから」


 カットって言うな。


「じゃあ『豚の焼肉』」


 お前それ絶対自分が食べたいだけだろ。

 いつの間に食いしん坊キャラにランクアップしたんだ?


 ジュワァ、と肉汁が蒸発する音と共に、豚の焼肉定食がスザクの目の前に登場。


 こいつ、晩ご飯食えるのか? と今日のスザクの分の晩ご飯を抜きにするかどうか検討しながら、僕たちは彼女が完食するのを待った。

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