迷子の迷子の私さん!一体どこへ行ってしまったのですか?
続いてます。
小説を読んでくださってありがとうございます!
「昨日から何も食べてないんでしょー?」
「はい……お恥ずかしながら…」
私は何故かお腹空きません……お腹、無かったですものね…。
頭で考えるのに行き詰まった私達はリリーさんの提案で街の朝市というものに来ていました。(若干一名おんぶされてる形ですが…)
しかし…私達2人は本当に異世界に来てしまったのだとしみじみと痛感します。
二足歩行している方々は皆様人間であることには変わりはないのですが、髪の毛の色が緑であったり赤であったり、瞳の色が宝石のように色とりどりで。
私達が住んでいる地球の人よりもからーばりえーしょんが豊かです。
朝市はとても賑わっており活気に溢れています。…何やらよく分からない物が売っていたりしますが…
「おっちゃん!朝の特別ブレンドパン4つ頼んますわー!」
とアイルさんが元気よく何やらジュージュー鉄板で焼いているおじさんに話しかけるとおじさんは「あいよっ」とこれまた威勢のいいお返事をして、手元から眩く光ったかと思うとその手に美味しそうなパンが4つ握られていました。
「ええと、今のは…?」
「これもアルスの力…というものなのですか?」
ありがとーとにこやかに受け取りながらリリーさんは「そうだよー」と答えました。
「あのおじさんのアルスは天板なの。美味しいパンを焼くことが出来るんだよー!」
まあ、手元の速さはアルス使ってなくてあの速さなんだけど…とリリーさんはパンにかじりつきながら答えました。
そのパンは私たちの世界でいうところのホットドッグによく似ていまして、中にはウィンナーのようなものにちょっと不思議な色のレタスのようなもの、そしてブルーベリーのような形の緑色の粒々が挟んであって上からカーキ色のソースがかけてあります。
美味しいよーと沢城さんは手渡されておずおずと口にして、一口食べた後
「おいしいっ!」
と目をキラキラさせてあっという間に平らげてしまいました。
本当に美味しそうです…。
「あかり…はええと、。あなたの分もあるけれど…」
「現状、それは叶わなさそうです…」
残念ながら今の私では無理だと思います…。と言うと、リリーさんは うーんお腹は空いてない?…空くお腹がどっか行っちゃったんだっけ? と首を傾げたのちもう一ついるー?とパンを沢城さんに渡していました。
「現状…このままってわけにもいかないよなぁ…」
とパンをむしゃむしゃと食べながらアイルさんはまたもや頭を捻らせています。(口に物を入れたまま喋らないの!とリリーさんにお腹パンチされてましたが大丈夫でしょうか…)
「既にあんたがたが朝市に夢中になっている間、結構な数の店の人に黒髪でそこのお嬢ちゃんと似たような服を着ている子を見なかったかって聞いてみたんだが誰1人として見てないって言っていた。」
私たちがきょろきょろしている間に!と驚いたのもつかの間、やはり…とがっかりする気持ちの方が多い私達です。
「でも全員ってわけじゃないんでしょー?まだ聞いていない人もいるわけだし、もっとたくさんの人に聞いてみるべきだよー!」
とリリーさんが言うと「そうだな」とアイルさんが頷き、
「じゃあ手分けして探すとするか。お前さんたち3人は街の人に、俺はジフソフィア討伐関係の知り合いにあたってみるよ。」
と前髪をかきわけ、シャツの裾を引っ張って整えつつ言いました。
「なんでジフソフィア討伐隊の皆さんの名前が出るの?」
「もしかしたら…と言う可能性がないわけではないし、あいつら意外と情報網は広いからな!」
ということらしいです。
そういうわけで爽やかな朝の空気に包まれている異世界の街の中をリリーさん、沢城さん、私たちは3人で私の行方を聞いて回ることとなったのです。
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結論から言いましょう。
太陽が真上に来る頃になってもそれらしい情報は何一つ得られませんでした。
街の人たちは皆優しくて親身になって質問に答えてくれたのですが誰一人として私のことを見かけた人は居ませんでした。
今の私の存在は伏せて沢城さんと同じ服を着ている黒髪の少女を見かけなかったかと聞いて回ったのですが、皆さま口を揃えて「見たことないなぁ…」おっしゃるばかりで…
「お嬢ちゃんみたいな服ここいらじゃ珍しいから気がつくと思うんだが…」
「私はここで朝からずっと果物を売っていたけれどそんな子通らなかったよ」
などなど。
どうやら私の体はこの広い異世界の中で忽然と霧のように消えてしまったようです…
「「はぁ…」」
と私がため息をつくとどうやら同じタイミングで沢城さんもそうしていたようで。
ふっ…と軽く息を吐き出すと沢城さんは背中の私のことを振り返って眺め、困った顔のまま笑いながらその綺麗な指先で柄を突いて「あーもう、一体何がなんだか…」と空を仰ぎました。
「一旦、休憩にしようか。」
とはにかみながらリリーさんが言ったのに対して私たちも「はい」と疲れた声でお返事したのでした。
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リリーさんが何か飲み物を買って来ると言うので近くのベンチに座って待っている私達2人組です。
何を話したら良いものでしょうか…
親切な方々のおかげで2人きりというわけではないのですが、この孤独で2人ぼっちな感覚というのはどうも私の心の中に居座って離れなくて。
そして2人ぼっちだというのに2人の間には見えない壁があるのです。
物質的な違いと、心の距離。
前者も後者も仕方がないことだと思うんです。
否応無しに2人は一括りにされてしまっていますがもともと2人は同じものに属しながらも違うもの、例えるなら同じ森の中にある池の浮き草と水草のようなものなのです。
同じ水で生活している仲なのに決して2つが出会うことはないのです。
そんなことを私が考えていると2人をそよそよと優しい風が包み込むように吹き、私達2人がぼーっと空を仰いでリリーさんの帰りを待っていると1人の茶髪の頬がこけた男性が駆け寄ってきて声をかけました。
「そこのお姉さん!あなたと同じ服を着た少年を探しているんだって?
いたよ!さっき裏の通りを町役場の方に走っていくのを見たんだ!」
「本当!?」
「ああ!こっちだ!ついてきてくれ!」
沢城さんの体温が上がるのを感じます。
男性もどうやら走って知らせてくれたようで随分と息を切らしています。
そんな男性に何を確かめるわけでもなく沢城さんは喜びと焦りが混ざった面持ちで額に汗を浮かばせながら走って男性の後を追いました。
男性は慣れた足どりで街の裏路地をかけて行きます。
それに置いてかれまいと少し17歳の少女には重い鉄の剣を背負って必死に沢城さんは追いかけて行きます。
かくいう私はと言いますとアイルさんとリリーさんの「喋るアルスなんて見たことが無い。ここいらは治安が良いとはいえ万が一のことないとは言い切れないから用心することが無い」とのお言付けで喋ることが出来ず、沢城さんと共に心拍数を上げながら彼女の背中から男性の後を目で追っていました。
その時は私たち2人とも、大きな希望の前に小さな不可解で危険な点を見ないようにしていたのです。
戦闘シーンってどうやって書くんでしょーね!!