えっ私が家出…ですか?ちょっとわけがわからないです
続いてます
ぼちぼちです
私の異世界で迎える初めての朝は沢城さんの自分を探す声で始まりました。
「あかり…!あかり!」
寝起きのまま、その長くて綺麗に整えられた艶やかな髪の毛を振り回しながら彼女は私を探していた。
ぼーっと意識が覚醒するまで時間がかかってしまったが、はっと思いついたように私は声をあげた。
「沢城さん…!私ならここにいます!」
声をあげると彼女は一瞬面食らったような顔をして動作を止め、
「そういえばあかりは剣になったんだっけ…?」
と呟いて
「なら何も問題はない…?」
と言った後に
「いやいやいや問題あるし」
とさながら四コマ漫画のようなリアクションをとった。
「一体全体どうしたのですか?」
「居ないのよ!あなたの体が!」
…へ?
今度は私が面食らう番だったようです。
依然として彼女は取り乱しており、どうしようどうしようとブツブツ呟きながら部屋の中をウロウロしていました。
「どうしたんだ?なんだ、朝から騒がしいなぁ」
「元気になりましたかー?」
あ、おはようございます…なんか…私の体が居なくなっちゃったみたいで…と朗らかにドアを開けて朝の挨拶をしてきたお二人方に軽く事情を説明するとお二人方も私と同じく
「「は?」」
とこちらは兄弟そっくりなお顔で。
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「とりあえず落ち着こう。状況を確認しないと始まらないからな。」
と未だに取り乱し気味な沢城さんの髪の毛をリリーが櫛で梳かしながらなだめています。
「キョウカが朝起きたらもうアカリの体は無かったと…。」
「はい…。」
しっかしおかしな話だなぁ…とアイルさんは腕を組んで眉間にしわ寄せて言いました。
そうです。奇妙な話なのです。
昨日の会話によると今の私の体はもぬけの殻。単なる入れ物です。
そして魂の分離…移動というものはできません。
なので勝手にどこか行ってしまうということはあり得ないのです。
「しかし…俺たちだって宿屋の経営してるんだ、一階の正門からは夜誰1人として通してないぞ…?」
そうなのです。この方達の警備はともかく(このアイルさんというお方、結構ガタイはいい方で中々に腕っぷしは強そうです)少女を抱えて宿屋の中を行き来しようものなら誰かが気がつくはず。
「でも…今聞いてきたけれど誰もそんな人は見てないって…。」
「そしてこの部屋は二階。窓の外は大通り。つたってこれるような所もない。一体どうしたって言うんだ…。」
ウンウンと悩み始める2人。確かに、不可解です。
しかしここは"アルス"魔法道具というものが存在する世界。
「その…アルスというものを使ったのではないでしょうか?空間を行き来する…みたいな」
私がそう言うと兄弟は双方困ったような顔をして
「もしかしてアルス使ってる所を見たことがない?」
「もしかしなくても、そうでしょ、」
と言いました。
え、私何かおかしなことでも…と沢城さんの方を見ると沢城さんは頭に手を当てながら
「あの魔法道具を使う時、大きな光が発生するのよね?
あんなものを同じ部屋で使われたらいくら私でも気がつくと思うのだけれど。」
と困ったような顔をしながら言いました。
「そう、そっちの嬢ちゃんの言う通りアルスを使う時、周りにも結構なエネルギーが発生する。
どんなアルスだろうが部屋の中で使われて気がつかないというのはまず無いだろうな…。
それに複数のアルスを使えば出来なくは無いのかもしれないがこの部屋に何人も来てアルスを使っていたら他の部屋の俺たちでも気づくはず。」
ほんとどうしたものか…と一同は止まってしまいました。
…と沈黙の中。
「グゥーーーー」
と誰かのお腹の虫が。
「ちょっとーお兄ちゃん!?」
「いやいや俺じゃないって…」
兄弟がお互いをどついてる中、沢城さんが少し赤くなりながら小さな声で
「私です……」
と言いました。
なろう系小説って自分の憧れが詰まっているんですよね(と聞いています)…分かります、私だって自身の趣味詰め込んでますもん…