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第六五話 楽しい火魔法講座 一

 上と下から水分を放出するラトカは無視し、最重要人物であるメイソンに話し掛ける。


「ティム君は魔法勝負と言っていた。魔法勝負と銘打ち、四人がかりで私を袋叩きにしようと起案したのはお前だな?」

「ち、違う! それは断じて違うぞ!!」


 メイソンは大粒の汗を浮かべ、力一杯否定している。表情はいくらでも演技できるにせよ、この発汗量は信憑性が高い。


「おいおい、ラトカが怖がっている。取り敢えず魔法を消して杖を下ろそっか。な?」

「トリップしている向精神薬乱用者(ユーザー)をあやす趣味は無い。気になるならビリー君。君が彼女をあちら側に連れて行ってもらえるか。ああ、私はとても怖がりでね。動作はゆっくりと頼む。私の魔法(ファイアーボール)は既に構築完了している。君が少しでも攻撃姿勢を見せたら、その瞬間に魔法を放つことを付け加えておこう」


 ビリーを促すと、ビリーはティムと目配せした後、ラトカのそばに歩み寄る。彼は泣き崩れる彼女に肩を貸し、演習場の片隅へと連れて行った。


「さあ、トリップしている危険人物はビリー君が介抱してくれている。話の続きといこう。二人はどんな魔法勝負を希望している。ファイアーボールをお互いに打ち合うか?」

「違う。俺が防御魔法を使うから、君はそこに魔法を打ち込んでくれればいい。それだけだ」


 超攻撃的な外見をしたメイソンは防御魔法の使い手だった。


 火魔法講座の秘書が防御魔法……。学生や教員ではなく秘書なのだ。逆にアリかもしれない。攻撃魔法の練習時に防御魔法は重宝する。


 納得する私とは裏腹に、ティムは困惑の表情を浮かべている。メイソンの提案は、事前に準備していた台本(シナリオ)とは違うとみえる。


「メイソン君は防御魔法に自信があるんだ。それが打ち砕かれたとき、どんな凄惨な結末に至っても責任は取れないよ」

「アルバート君と本気の戦闘になるよりよっぽどマシだ」


 腹を括ったメイソンの態度。これも演技には見えない。


 彼らが私の敵としてここに現れたのではない、と私は結論を出している。


 しかし、それとは別に魔法比べには興味がある。防御魔法は徴兵で教わっておらず、「前」からの引き継ぎもない。防御魔法とは実際にどれほどのものなのか見てみたい。


 幸いにも彼らは私のことを、『新入生代表挨拶どおりの独善的かつ攻撃的な危険人物(サベージ)』と考えている。彼らのイメージを壊さぬように振る舞えばいい。


「ティム君も防御魔法を使うのかい?」

「いやいやいやいやいや。俺は防御魔法を使えない」


 ティムは全力で両手を左右に振り、魔法勝負参加を拒否する。


「では、危険が及ばないように、ラトカ君とビリー君のところまで下がっていてくれるかな」


 ティムはメイソンに目配せして互いに頷き合う。それはまるで死を覚悟した戦友が最後の挨拶を交わしているかのようだ。


 お互いの幸運を祈りあった後、ティムは演習場の隅に下がっていった。


 メイソン以外の三人が演習場の端で一塊になったのを確認し、私も細心の注意を払いながら演習場内へ足を踏み入れる。


「よし。じゃあメイソン君、もう私は魔法を放っていいのかな」

「ああ、いつでも大丈夫だ」


 メイソンはそう言って両手を前方に突き出すと、自分の周りに防御魔法を展開した。


 徴兵の時に教官が数回だけ使っていたスモールシールドではない。メイソンの身体全体を防御魔法が球状に覆っている。


 魔力の流量を見るに、闘衣よりは魔力消費が少なそうである。燃費が良さそうなことが分かったところで、肝腎の防御力は如何程のものか。


 取り敢えずファイアボルトで試してみよう。威力をかなり抑えたファイアボルトを作り出し、メイソンに向かって放つ。


 メイソンは表情ひとつ変えず、黙って私のファイアボルトの軌道を眺めている。


 ファイアボルトは防御魔法に触れると、弱い光を周囲に放ち、一瞬で掻き消えてしまった。


 防御魔法は何事も無かったかのように、静謐かつ無機質な防御障壁をメイソンの周りに広げている。


「どんどんいくよ」


 少しずつ威力を上げながらファイアボルトを一発一発防御魔法に向けて放つ。全ての弾をできる限り防御魔法の同じ部分へ着弾させる。


 私とメイソンくらいの距離であれば、人間の頭部大の的に百発百中で当てられる。思えばこの程度の魔法照準(コントロール)は最初からできていた。エヴァは『精密照準(コマンド)』とすら称賛していた。


 コマンドは魔法の技量を示す確かな指標のひとつであり、「前」の時点で魔法使いとしてそれなりに高い評価を得ていてよいようなものである。それなのに「前」にコマンドを褒められた記憶は一切存在しない。


 私の中には、命中率の低さに苦労したわずかな記憶と、命中率には全く苦労していない記憶が混在している。そしてなぜかその中間が無い。セリカではない「前」の魔法使いの誰かが、魔法を初めて使った時から天才的な命中率を誇っていたのだろうか?


 ()()()を理解してなお綺麗な説明が付けづらい記憶の矛盾だ。


「大丈夫? 疲れてないかい、メイソン君?」

「まだまだ余裕だ」


 私が放った十発以上のファイアボルトを防ぐためにメイソンが消費した魔力量は、彼の魔力総量からすると僅かなものである。


 私の魔力消費量のほうがずっと多い。やはり防御魔法というものは、闘衣や攻撃魔法よりも燃費がいいものらしい。


 私も少し楽しくなってきた。


 ティムたち三人にこちらを邪魔しようとする様子は無く、固唾を飲んで私とメイソンを見守っている。


 そのまま大人しくしていてくれれば、全員が無事なままで話を終わらせられる。


「では更に威力を上げる」


 全力の五割ほどまで威力を上げたファイアボルトを構築する。最近ではこれくらい魔力を込めると、自分を守ることも考える必要がある。以前はファイアーボールを使うときだけ考えればいいことであった。


 火魔法は、ただそこにあるだけで周囲に熱を放つ。何も考えずに威力だけ上げていくと、自分の魔法が自分の身体を焦がすことになる。


 二種類の魔法を同時に放てるようになった少し後に、闘衣で自分の身体を守る方法があることに気付いた。


 闘衣は広い意味で魔法の一種である。片や火魔法を作りながら、片や闘衣で自分の身体を守る。二つの魔法を同時に扱えるならば、魔法と闘衣も同時に扱うことができるはず。そんな単純な着想から辿り着いた技術である。


 だが、ただでさえ燃費の悪い闘衣をこのような使い方をすると、一連の魔力消費量は跳ね上がる。そんなときに役に立つのが魔法杖だ。


 杖があるだけで、魔法が形作られる位置を身体から離すことができる。そして、杖に魔力を流すと一定の比率で魔力を使用者の防御に配分して小さな防御魔法を展開してくれるため、面倒なことを考えずに済む。


 杖が展開する防御は、闘衣よりもずっと魔力消費対効果に優れる。メイソンの防御魔法も、闘衣より遥かに消費対効果に優れているのは実見したとおり明らかだ。


 魔法は魔法杖が無くても使えるが、あると効率が格段に上昇する。私の中で、最近買ってよかった物の上位に列する逸品である。


 それにしてもメイソンの防御魔法は頑強だ。五割のファイアボルトも容易く防ぎきり、綻びを見せる気配すらない。


 ファイアボルトは、また更に威力を上げて七割ほどの力をこめて撃っているが、このまま威力を上げていってもおそらくあの防御魔法は突破できまい。


 一旦ファイアボルトを撃つ手を止める。


「ふう……」

「疲れたんなら休んでもいいぞ」


 メイソンは先の私の言葉を引用して余裕を見せつける。


「防御魔法というのは疲れないのかい?」

「時間的な耐久性も求められる能力だ」


 ともすれば嫌味のようにも聞こえるが、私には、『経験者が長年感じている本音』のように思える。


 魔力消費は別にして、腕を前に突き出した姿勢を続けるだけでも肩が疲れそうなものである。メイソンはこの姿勢に慣れているのだろう。


 彼は潤沢な魔力を持つだけではなく、肉体も鍛え上げられている。ティムたち三人とは身体つきからして一目瞭然に異なる。


 ハンターではないならば……もしや、彼は退役軍人ではなかろうか。軍人が大学に再就職するのは珍しくもなんともない。


 推理が当たっているとして、なぜ秘書なのだろう。他に適当な役職が空いていなかった、ということだろうか。


 メイソンは自身の所属を防御魔法講座ではなく火魔法講座と言っていた。だからこそ、教員枠では大学から採用承認が下りなかったのかもしれない。技術職員枠が埋まっていればやむをえない話。


 メイソンの肩書は、偽りのものにしては不自然。嘘をつくならばもっと誰にでも理解しやすい設定を拵える。そう考えると彼らの言っていることは辻褄が合う。


 一層無闇に怪我を負わせられない。怪我をさせない範囲で私の好奇心を満たさせてもらうとしよう。


「ではここからは少しステップアップして、ファイアーボールを使ってみようか」

「続けてくれ」


 上位攻撃魔法の使用を宣告されてもメイソンは余裕を崩さない。


 絶対無欠の防御魔法など存在しない。それが、メイソンは私のファイアーボールを見る前から、問題無い、と確信している。実力ではない、何か別の理由がメイソンを楽観させている。


 理由は、私を陥れる罠の類ではないように思う。それが何なのかは撃ってみれば分かることだ。


 小さめのファイアーボールを作り出す。小さくとも上位攻撃魔法。ファイアボルトよりも消費魔力は多く、その分威力も高い。


 人間相手にファイアーボールを放つのは二年ぶり。人間の肉が焦げる匂いを思い出す。金属を身に着けていなければ、その匂いは魔物とさして変わらない。


 私の魔法杖の前方に形を成す火球を見てもメイソンは動じない。


 ファイアーボールは炸裂するのが長所であり短所でもある。周囲に被害が及ばないか、今一度思案する。メイソンの位置にファイアーボールを撃っても、子弾が私やティムたちに届くことはない。大丈夫だ。


 安心してメイソンと防御魔法の行末だけを見ていられる。


 不安が無くなった私は、メイソンに向かってファイアーボールを放つ。


 メイソンは姿勢だけそのままに、防御魔法に流す魔力を数段増大させて防御魔法を強化する。


 ファイアーボールはメイソンの防御魔法にぶつかって重い衝突音を立てるとともに炸裂し、子弾を散らす。


 主席の火弾は、そこに耐熱耐衝撃のガラスでもあるかのように防御魔法にべったりと貼り付いている。


 涼し気なメイソンの視線に打守られながら主席火弾は焔を上げる。その本体が掻き消えるまでには、ファイアボルトよりも幾分の時間がかかった。


 私のファイアーボールを防ぎきってなお、防御魔法は健在だ。メイソンの防御魔法から離れた場所に飛散した子弾は地面に残り、主席が消えた後も燃え盛っている。




 ファイアボルトであればともかく、ファイアーボールの威力を徐々に増していくのは私の魔力消費の重さからして困難だ。そんなことをすると、私の限界を彼らに晒すことになる。


 彼らは必ずしも私の敵対者ではないにせよ、弱みは見せられない。機会は有限。試したいことは早めに済ませておこう。


 二発目のファイアーボールは七割ほどまで威力を高めて構築する。魔力を溜めながらメイソンの表情を窺う。今度のファイアーボールの殺傷力は生半可ではない。火球の大きさを見るだけでも、誰だって危険を察する。


 メイソンは、これも防ぐ自信があるのだ。ならば私がやることは決まりだ。


 緊張が鼓動を早める。


 高鳴る鼓動の中、魔法杖を持った右手を前方に突き出しファイアーボールを放つ。


 一発目の御用聞きのファイアーボールではない、暴力役として恥ずかしくないファイアーボールだ。猛々しく焔を上げる火球は眩い光を放ちながら猛然とメイソンへ迫っていく。


 火勢を見てメイソンは防御魔法をまた一段強化する。メイソンの身体から流れる魔力が一層激しいものなった。


 防御魔法に激突した火球は爆炎と爆音を上げて弾け飛ぶ。多方向に好き勝手に広がる子弾の隙間からメイソンを垣間見ると、焦った様子こそないものの表情は真剣そのものである。


 内在する魔力が少しずつ減っていくのが見てとれることから、さしものメイソンであっても低出力の防御魔法では高威力の攻撃魔法を防げないと分かる。


 主席火弾は防御魔法の前面に粘性をもって(ひろ)がり、勢い激しく燃え上がる。


 さて、そこにこれはどうだ。


 左手で練り上げておいたアイススピアーを放つ。


 私の水属性の習得速度はあまり速いとは言えない。それでもイオスに師事することでようやく上位攻撃魔法を身に着けた。メイソンはこれをどう防ぐ?


 私はここまでファイアボルトもファイアーボールも全て同じ箇所を目掛けて撃ってきた。このアイススピアーだけは弾着点を変えてあり、軌道も右曲がりにしてある。


 その意図はファイアーボールの主席火弾を避けるためであり、特別な他意は無い。しかし、同じ場所に魔法が命中し続けたメイソンには違う意味をもたらす。


 火勢の衰えない主席火弾に意識を奪われていたメイソンが、炎の隙間から迫りくるアイススピアーを見つける。私が今まで見せてこなかった奇手に、メイソンは遂に慌てる素振りを見せた。


 身体の向きを急速に転換し、右手をアイススピアーの弾着予測点へ伸ばす。これまでとは比較にならないほど濃密な魔力を防御魔法に流した刹那の後に、アイススピアーは防御魔法に激突した。




 分厚い陶器が割れたかのような破砕音を演習場内に轟かせて、魔法がバラバラと砕け散っていく。


 成しえなかったのは私のアイススピアーであり、メイソンの防御魔法は魔力の明滅が見られるものの、その幾何学的な外形を一切崩すことなく術者を守り続けていた。


 防ぎ切ったはずのメイソンは口を半分開いて(あえ)ぎ呼吸をしている。


 ファイアーボールが放つ熱は防御魔法が防いでいるだろうに、額からは一瞬で玉のように汗が吹き出している。大量の汗と歪んだまま固まった顔は、メイソンの焦りと恐怖を如実に物語っている。




 私が今撃ったアイススピアーは手加減抜きの全力だったが、ファイアーボールと比べたらはっきり言って大した威力はない。約二年前、ルドスクシュが多数同時に放ったアイススピアーの一発にすら及ばない。


 それがメイソンに冷や汗を欠かせたのは驚きだ。


 メイソンは低威力のアイススピアーを防ぐために、高威力のファイアーボールを防ぐため以上の大量の魔力を費した。


 火魔法と水魔法を同時に防ぐのは難しいのだろうか。


 防御魔法は時として戦場で中隊規模、あるいはそれ以上の兵を守るために行使される。もちろんそういう場合、魔法行使者はひとりではなく大人数によって斉唱される。


 戦場で放たれる魔法が一属性だけ、などということは考えにくい。今私が試したような火と水の組み合わせは、相性の悪さ故に一般的には同時に用いないとしても、火、土、風など多属性が同時に降り注いできても耐えられるようでなければ、戦場で兵を守る防御魔法としては信頼が置けないだろう。


 斉唱ではなく個人の用いる防御魔法が多属性の攻撃魔法を防げるものだろうか、という好奇心に動かされ、ファイアーボールとアイススピアーを組み合わせて攻撃した。


 結果を見るに、防御魔法で多属性を防ぐことはできる。過程を見るに、それは簡単でも低燃費でもない、とでも言ったところだ。


 メイソンが焦ったのはファイアーボールを見た時ではなく、アイススピアーを見た時だ。いきなり別属性の攻撃魔法が飛んできたことに焦ったのか、それともアイススピアーの物理的な刺突穿孔能力を恐れたのか。


 闘衣では斬撃を防ぐ以上に刺突を防ぐのが難しい。防御魔法も闘衣と同様に刺突を防ぐのが難しいのかもしれない。メイソンの魔力消費量が跳ね上がったのはその辺りに理由があるように思う。


 検証のためにもう一発アイススピアーかクレイスパイクを放ってみたいところだが、メイソンは大丈夫なのだろうか。


 彼の魔力残量は、枯渇には程遠い。まだまだ頑張れそうである。不安要素は防御魔法の性能と精神状態だ。うっかり防御魔法を完全破壊してしまったり、彼が恐慌状態に陥って防御魔法が消えてしまったりすると、まだ防御魔法の上で燃え続けているファイアーボールによってメイソンが大ダメージを負いかねない。


「大丈夫? まだ続ける?」


 防御魔法の識見はメイソンに聞くのが一番だ。


 問われたメイソンは目をいからして口を真一文字に結んでいる。形式の上では、私は彼を気遣う発言をしている。しかも、この勝負はメイソン側が持ち掛けてきた話。


 こんな目を向けられるような非行を私ははたらいていない。


「その目ならまだまだや――」

「このくらいにしておこう」


 メイソンが重々しく絞り出した言葉は、私の勝負続行の提案を拒否するものだった。


 闘争心がへし折れての決着ではなく、闘争心を抱いたままでの終了。彼はまだ余力や、なんらかの奥の手を持っていて、それは隠したまま切り上げたいのだろう。退役軍人ならば、対外秘の技術のひとつや二つがあって当然。


 仮に不完全燃焼であっても、秘密は秘密のままで勝負を終える。厳つい見た目と険しい表情の割に冷静だ。


 私は魔法杖を下ろし、ファイアーボールの炎が消えるのを待った。




 演習棟に忍び寄る者がいないことを今一度確認した上で、メイソンに少しだけ歩み寄る。


「お疲れ。それで、なんでまたこんな時間を選んだんだい?」


 大学生御用達の挨拶、『お疲れ』は万能である。疲労の有無など関係なく、『お疲れ』は、話の切り出しから切り上げまで何にでも使える。一勝負終えた後でもあり、“身内感”も演出できる。


「おう、お疲れ。……!?」


 私に引っ張られ、メイソンも反射的に『お疲れ』と返事をする。これは身体に刷り込まれた反射のようなものである。よほど意識しないことには抗えない。


「選んだというより成り行きでこうなっただけだよ」


 魔法の言葉『お疲れ』によって警戒が少しだけ解けたティムたちがこちらに歩きながらメイソンに代わって答える。ティムの横ではビリーが全力で頷いている。


 メイソンと違い、ティムたちは少し距離が近くなっただけで、強くアルコールの臭いがする。


 私の疑念は確信に変わる。


 ラトカの狂い様は荒れ狂う銀閃の飲み会の泥酔者と変わらない。それが、よく知らない人間にいきなりやられると、真っ先に非合法嗜好性向精神薬(イリーガルドラッグ)を連想してしまう。




 敵意がないことを示すため、なるだけ友好的に話を聞く。


 何でも彼らは今年度の学生相手のゼミが全て終了した、ということで、防御魔法と火魔法の講座で合同の打ち上げをしていたらしい。


 宴の中、二回生で一番目立っている私にちょっかいをかける話が持ち上がり、飲み会の空気がそれを瞬く間に決定事項とした。


 主犯格、こと、言い出しっぺの教授若干名は、打ち上げ会場である研究室のソファーで多分今も寝ている。


 私が演習棟に入ってきた時にティム以外の三人が隠れたのは台本ではなく、なんとなく驚かせたくなってラトカとビリーが悪乗りしただけ。素面(しらふ)のメイソンは空気を読み、唐突に隠れたラトカとビリーに合わせただけ。


 あらかじめ創作しておいたにしては実に下らない台本だ。下らなさ過ぎて逆に真実味がある。プラグナスであればもうちょっと玄人好みの話を作りあげそうなものだ。


 計画性の低い突発的な犯行であったにせよ、主犯格のひとりがプラグナスであることは当たっていた。ここは事実確認の名目で、今後の私の立場を守る手札を入手しておくのも一案である。


「取り敢えず君たちが汚した演習場、片付けてもらえる? 今の時間は私の名前で利用申請してあるから、あとで私が責任を問われてしまう」


 ティムたち四人は私がここに姿を見せるまで、酒と飲み物、つまみを持ち込んで宴会の続きを行っていた。彼らには持ち場を決めて汚した演習場を清掃させる。演習場は飲食禁止だというのに、飲酒者をはじめとした嗜好性向精神薬(ドラッグ)乱用者(ユーザー)というのは倫理観が無い。


 清掃の間、棟外でひとりずつ代わる代わる私と面談をしてもらう。面談中、彼らは相互に矛盾した内容を話すことはなかった。


 ラトカが濡れた衣服で居心地悪そうにしていたのが私の嗜虐心をこの上なく刺激したが、他の三人に増して過剰に追及しないように努めた。




 掃除が終わったところで演習棟に施錠し、私が借りた鍵を警備室に返却して火魔法講座の研究室へ向かう。


 研究室の一画にある談話室に入ると、そこにはソファーに横たわって眠る教授二名他、数名の姿があった。


「俺たちが演習棟に抜けてからもメンバー全員が残って酒盛りを続け、寝入ってしまったようだ」


 メイソンはそう言うと、空になって倒れた酒瓶や食い散らかされた皿を片付け始めた。


「いつものことだよなあ……」


 ティムもメイソンに続いて片付けを始める。


「君たち、どうしてそんなに落ち着いてるの?」

「どうしてって……」


 彼らは、私が何を言いたいのか分からない、というように顔を見合わせ始めた。


「だってブレア先生は全裸だし、プラグナス先生は失禁してるし、普通何かしら反応があるんじゃない?」

「あっ、そうですね」


 ラトカは木棚からブランケットを引っ張り出すと、火魔法講座教授のブレアの体の上に優しくかけてあげた。風邪をひかないように、という気遣いだ。私の期待した反応とは全く合致していない。


「あの、すみません」


 ラトカがおずおずと話し掛けてきた。


「着替えてきてもいいですか?」

「ご自由にどうぞ」


 濡れた衣服を替えるため、ラトカは談話室から出ていった。ビリーは空き瓶を片付ける傍ら、瓶底に残った酒を飲んでいる。


 荒れ狂う銀閃の飲み会といい、おかしいのは私なのだろうか。いや、断じて私はおかしくない。私だけが真面(まとも)なのだ。


 寝転ぶプラグナスをじっと見ていると、ティムが説明をしてくれる。


「プラグナス先生、前もそこのソファーで漏らしたんだよね。だから、それ以来プラグナス先生しかそのソファーに座らない」


 プラグナスの失禁劇は初犯ですらなかった。


「ブレア先生は何で裸なの?」

「ブレア先生は無類の酒好きなんだ。そんで、こういう内輪の飲みだと、一杯飲んだだけですぐに脱ぎ出す。誰よりも先に飲み会の場所にいて、一番先に飲んで、『暑いなあ! 気分がいいなあ!』って即、脱ぐんだ。俺なんかは、飲み会に参加するのが途中からのほうが多いんだけど、俺より先に来ているブレア先生が全裸じゃないと、『あれ、今日はどうしてまだ服着てるんだろう?』って逆に違和感があるくらいさ」


 講座と研究室の頂点である教授が率先して何をやっている……。大学生ではないんだぞ。馬鹿者め。


 うら若く見目麗しい女性ならともかく、年を重ねて体型の崩れた女が裸体を晒したところで視覚攻撃にしかならない。


「内輪以外だとどうなる? 要人と酒席を設ける機会だってあるだろう」

「何言ってるの? 普通、そういう場面で上着以外は脱がないよ」


 ティムは私を、常識知らず、という目で見ている。


 本当の普通はどういう酒席でも着衣のままだ!


 見た目は常識人でも、やはりティムは火魔法講座の人間であり、広く言えば大学関係者。一般的な話が通じない。


 異国の人間と話をしていると思ったほうがいい。そう思わないことには精神的な疲労を無駄に重ねることになる。


「この光景、気持ち悪くないの?」

「プラグナス先生のお漏らしは、ソファーに染み込んで後々臭うし汚いから勘弁してほしいけど、ブレア先生は別に。ほとんど毎晩のことだし」


 ブレアの痴態は年に数度の失態ではなく、彼らの日常だった。毎日見ることによって感覚は麻痺し、彼らはこれが非常識な光景であるとすら思っていない。


 家の中で家族が裸で歩いているようなもの。家庭によっては、そういうのを全く気にしない。


「そう……分かったよ。片付けが終わったら、教授二人だけでいいから起こしてもらえない?」


 戻ってきたラトカがプラグナスを、メイソンがブレアをそれぞれ起こす。


 メイソンが軽く肩を叩いただけでブレアはすぐに目を覚ましたが、プラグナスは悶えるばかりでなかなか目を覚まさない。


「おおー、噂のアル……アル……生意気な学生じゃないか。どうしてここにいるんだ? やっぱり来年うちの講座で専門を学びたくなったのか? いいぞ、大歓迎だ」


 ソファーの上で上半身を起こしたブレアは、眠そうにしたのは最初だけで、かなり滑らかな語り口調で話し始めた。


 吐息からはアルコールの臭いがしない。この部屋全体にアルコール臭が漂っている影響はあるにせよ、ブレアは酒にかなり強いと見える。


「お話の前に、服を着てもらえますか」

「あぁ? 私の城に足を踏み入れて何を言ってるんだ、お前は。今日の所は客人ということで許してやるが……」


 ブレアは特別対応を強調し、ラトカにかけられたばかりのブランケットをどかして脱ぎ捨てた服を回収し始めた。


 ブレアには恥じる様子も隠す素振りもない。


 一方、ラトカに身体を揺すられ続けてようやく目を覚ましたプラグナスは、ラトカに用意された着替えを手にフラフラと別室に歩いて行った。


 男のプラグナスが人目を避けて別室で着替え、女のブレアは目の前で堂々と服を着る。大学内では間違い探しに事欠かない。




 プラグナスが戻ってきたところで話を切り出す。


「それで、お二人はどういうつもりだったんですか?」

「ただ飲んでただけじゃないか。何を怒ってる」

「私に彼らをけしかけたことですよ」

「ああ、その話か。で、どうなったんだ。魔法比べをしたんだろ」

「メイソンの防御魔法は一級品だからねー。アルバート君でも破れなかったでしょ?」


 二人は悪びれるどころか、楽しんでいる。その顔はまるで賭け事の結果発表の瞬間を心待ちにしているかのようだ。こういうことに罪悪感を抱くような繊細な人間では、教授になることも椅子に居座り続けることもできないか。


「お察しのとおり、私の魔法はメイソン君の防御魔法を破れませんでした。それで、私に対して謝罪の言葉は頂けるんでしょうね」

「謝る理由など何もないじゃないか。ただの魔法比べ。しかも私たちは学生君に防御魔法の凄さと自身の魔法の未熟さを分からせてあげたんだ。謝るどころか感謝されるべきだ。楽しかったろう、悔しかったろう。学生君の火魔法はこれからいくらだって上手くなるぞ。私の下でな」

「防御魔法の奥深さに気付いてもらえたんなら、僕の講座がおすすめだよ。変性魔法なんて講座、わざわざいかなくてもさ。変性魔法はウチの講座でも扱ってるし」


 ブレアとプラグナスは好き勝手に能弁を垂れる。彼らがやりたかったのは私の魔法練習の妨害ではなく、講座ひいては研究室への勧誘だったのだ。


 私は防御魔法を変性魔法の一種に分類していたが、この大学では分け方が違う。防御魔法は変性魔法から独立した講座として予算と研究、教育の裁量を与えられている。


 国や軍からの介入によってそうなったのか、プラグナスの政治力か、あるいはマディオフだと最初からそういう分類をされているのか。軍の介入だとしても、軍学連携とかいう当たり障りない言葉が振られていることであろう。


「彼らを遣わした理由は理解しました。気に留めていただいてありがとうございます。ですが、残りの二年はティヴィアス先生の下で勉強させてもらうと決めています。規約違反までして、こういう一本釣りみたいなことはやめてください」

「ティヴィアスがなんぼの者だっていうんだ」


 これから私が入ろうとしている変性魔法講座の教授ティヴィアスをブレアは一笑に付す。ティヴィアスは攻撃魔法畑の人間ではないのだから別に強くはない。


 ブレアはティヴィアスどころか、火魔法以外の全分野の人間を見下していそうだ。火魔法の得意な人間に多く見られる傾向である。


 強い弱いを言い出すと、プラグナスだって攻撃力はないはずなのに、こうやって仲良く飲み会をやっているのが忌々しい。これは人間的な相性というよりも、実習や実験に必要な協力関係の延長なのだろう。


「規約違反って何の話?」


 プラグナスは私の指摘にしらを切り始めた。


「演習棟は揉め事の宝庫ですから、利用規約は厳しく取り決められています。知らないとは言わせませんよ。鍵の複製までして」

「鍵の複製なんて、どこの講座でもやってるじゃないか。一本しかなかったら不便極まりない。第一、失くすと演習棟を使えないぞ」


 複製すればするほど紛失の危険性は上がる。この様子だと、こいつらは既に何本か鍵を紛失している。


 はあ……。


 あの演習棟は、安全に使える場所ではないようだ。想定よりも不測の事態が生じる危険性の高い場所だ。


 二回生になってからの一年、今の今まで面倒事に巻き込まれなかったのは(ひとえ)に運が良かっただけだ。


「規則を守るのは偉いけどさ。ここは大学なんだから少しは融通を利かせなきゃ。それに僕らを脅すような言い回しはよくないよ」


 反省するどころか、プラグナスは私に非があるような物言いだ。罪悪感を一切持たない二人の厚顔な態度が私を激しく苛立たせる。


「脅す? 脅すんなら軍事関連機密技術の不正流出の件を引き合いに出しますよ。私はただ、もうこういうことはやめてほしい、と言っているだけです」


 喋るつもりのなかった彼ら二人の罪状を苛立ち任せに口に出すと、ブレアとプラグナスの顔色が豹変した。


 教授二人だけでなく、片付けを終えて横で黙って話を聞いていたメイソンも激しく動揺している。


 反応を窺うに、ラトカとビリーは何のことか分かっていないようだ。ティムは少しだけ心当たりがあるかもしれない。


「一体何の話だ」


 ブレアは突き刺すような視線で私を見据える。話の重大さが分かっても、どちらが優位に立っているかは分かっていない。


「私も今日知っただけですし、詳しくは知りませんよ。別に学外の人間にペラペラ喋ったり、告発したりするつもりは毛頭ありません。私にはそんなことどうだっていいんです」


 ブレアの身体に魔力が激しく燃え盛り、行き場を求めてうねり狂っている。


 ブレアの視線は私に固定されているが、かなりメイソンのことを気にしている。メイソンが私に秘密を漏らしたと思っているのだ。


 どうせなら、ビリーやラトカも不正の事実を知ってくれていたら猜疑心の渦が一層大きくなって良かったのだが、情報漏洩の容疑者がメイソンとティムの二人の複数にまたがってくれただけでも幸いだ。メイソンたち四人が全員不正の事実を一切知らなかった日には、少しだけ私の都合が悪くなる。


 技術流出なんてこの一、二年に始まった話ではあるまいし、その気になれば相当深くまで掘り下げられる話だろう。


「まあまあブレア先生。二回生の子が言うことですから。アルバート君も魔法の練習の邪魔をされて腹が立っただけだよね」


 プラグナスはこの中で誰よりも腹芸が上手い。こういうときでも即座に普段の笑顔を作れる。普段から常に演技をしているだけある。


「今どうこうというだけでなく、今後も安心して研鑽に励むことができる環境を私は求めているんです」


 大きい組織に属すると、こういう私利私欲に溺れた連中と際限なく渡り合わなくてはいけない。


 イオスはそこのところを本当に分かっているのだろうか。魔法の研究と教育に専念できる場所だと勘違いしているのではないだろうか?


 そういう「没頭できる環境」というものは、別の誰かが権力争いや勢力争い、罪の擦り付け合いの前面に立ってくれなければ確立できないポジションだ。


 プラグナスのように政治力と手腕に長けた教授は、『業績を全部教授に渡す代わりに研究に本当に専念できる環境が与えられた駒』というのをいくつか持っている。


 研究さえできれば幸せ、という研究者は確かにいるから、そういう駒と騎手にとっては良好な共存共栄の関係と言えなくもない。


 後ろ盾の無いイオスは、何から何まで全部自分でやらないといけない。結果、金にも業績にもならない雑務を教授陣どころか事務にすら押し付けられてあのざまだ。


「それは当然だよー。大学が集中して学問や研究に打ち込める場所を学生に提供するなんて当たり前じゃないか」


 その当然を今まさにお前たちが壊している。プラグナスは、言うことだけはご立派だ。


 こいつら二人の汚れた腹に手を突っ込んでも得るものはない。ブレアとプラグナスには、私に手を出しても火傷するだけ、と学習させるのが一番だ。


 今ここで私が二人の余罪を過剰に追及しても、恨まれて後に意趣返しをされるだけ。それに、二人の怒りの矛先が私ではなくイオスに向いてしまうと、イオスは大学内でますます苦しい立場に置かれることになる。


 私が来年からの専門を変性魔法にした理由の一割くらいはそこにある。いわば私は、イオスを人質に取られているようなものである。


「その言葉を違えずにいただけることを願います。ブレア先生のところのメイソン君も、さすが火魔法講座に所属しているだけあって、ハンターでもないのにお強いですが、力技でどうこうしないでくださいね」


 メイソンは昔からのブレアの腹心ではない。入職してまだ日が浅い。


 採用前にメイソン側がブレアに提出した身上書、ブレア側が調べたメイソンの能力詳細報告書。両者がまだブレアの教授室に置きっぱなしだ。


 軍人ではないブレアは、こういう重要な情報の処分を徹底できていない。守るべき情報は研究内容だけではないのだ。


 身上書と報告書は、たった今、隅から隅まで読ませてもらった。


 メイソンの能力は既に丸裸だ。今後どんな絡まれ方をしても、如何様にも対応できる。


「お二人とも、謝罪はしていただけないようですね。もういいです。今後迷惑さえかけないでもらえれば」

「僕は謝るよ。ごめんね、アルバート君」


 プラグナスはニコニコと形だけの謝罪をした。本当に必要なのは形式的な謝罪ではなく、今後無用の干渉を行わないという確約だ。それをこの場で無理矢理要求しても話が拗れるだけだろう。


「覚えていろよ、学生」


 ブレアは怒り骨髄のようだ。


「覚える? 覚えておいた方がいいですか、今日のこと。私としては早めに忘れたいのですが。もし思うところがあるのでしたら、後日と言わず、今、ぶつけてもらえませんかね」

「ハンターとして、のし上がっているからっていい気になるなよ。上には上がいる、ということを分からせてやる」


 ブレアは腕を組んだまま、すっと立ち上がった。


「どうやってですか」

「私と勝負してもらう」


 ブレアは(まなじり)を裂き、私に指を突き立てた。


 決闘。極めて古典的な方式だ。ブレアなら十中八九決闘を申し込んでくると思っていた。こいつは常習犯だからだ。


 後から搦手を使ってこられるよりも、決闘を申し込まれたほうが、よほど話は早くて簡単だ。


「その横っ面を引っぱたいてやりたいところだが、お前みたいに口先ばかりの奴は規約だのなんだの引っ張り出して糾弾してきそうだからな。正当な勝負の場所を整えてこてんぱんにしてやる」


 私は自分が受けた被害の謝罪を求めただけ。それなのに二人がしらばっくれるものだから、余罪をほんの少し口にしただけ。


 ブレアの言い(ぐさ)だと、まるで私から積極的にブレアに非礼をはたらいたかのようではないか。


 典型的な火魔法使いだ。自分が相手を攻めるのは正当で、相手が自分を攻めるのは不当攻撃だと思っている。


「先生たちは知りませんけど、私は長期休暇で学園都市を離れるので、相手をできる時間は限られますよ」

「ふんっ!! 尻尾を巻いて逃げるつもりか」

「やるなら今日にしてくれ、と言っているんです」


 別日に行うとなると、相手に要らぬ策を準備する時間を与えることになるうえ、こちらはハント出発に支障をきたす。


「今日だと?」

「幸いにして今は年度末。演習棟の使用予定は埋まっていません。今なら思う存分使えますよ」

「時間など大してかからん。増長した若造の鼻柱を叩き折るだけだからな」


 ブレアは簡単に私の挑発に乗った。

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